サムスン電子李在鎔（イ・ジェヨン）副会長（５２）の逮捕状が棄却された。李副会長は２０１７年２月朴槿恵（パク・クネ）前大統領に賄賂を渡した容疑で拘束されて以降３年４カ月が過ぎて再び拘束される危機に置かれたが、裁判所は拘束の必要性を認めなかった。

ソウル中央地裁のウォン・ジョンスク（４６・研修院第３０期）逮捕状専門担当部長判事は、資本市場法（不正取り引きおよび相場操縦行為）、外部監査法違反の容疑で検察が請求した李副会長の逮捕状を棄却したと９日、明らかにした。

ウォン部長判事は「基本的な事実関係は釈明され、検察はこれまでの捜査を通じてすでに相当程度の証拠を確保したとみられる」とし、「しかし、不拘束裁判の原則に反して被疑者を拘束する必要性および相当性に関しては釈明が不足する」と棄却理由を明らかにした。


また「この事件の重要性から被疑者の責任有無とその程度は裁判過程で十分な攻防と審理を経て決めることが妥当だ」と説明した。

李副会長とともに審査を受けたサムスングループのチェ・ジソン元未来戦略室長（副会長）とキム・ジョンジュン元未来戦略室戦略チーム長（社長）の逮捕状も棄却された。

李副会長は２０１５年サムスン物産と第一毛織の合併過程での違法行為と第一毛織の子会社だったサムスンバイオロジクスの不正会計行為に関与した容疑で逮捕状が請求されていた。１年８カ月以上進めてきた検察の捜査にはサムスン経営陣３０人余りが１００回以上召喚された。

前日午前１０時３０分ごろ始まった李副会長に対する逮捕状実質審査は計８時間３０分にわたって行われ午後７時ごろ先に終わった。午後９時１０分ごろにはチェ元副会長とキム元社長に対する審査も終わった。李副会長はかたい表情で裁判所を出て護送バスに乗って京畿儀旺市（キョンギ・ウィワンシ）のソウル拘置所に移動した。

ソウル拘置所に待機していた李副会長はこの日午前２時ごろ、逮捕状棄却決定が下されて４３分後に車に乗って帰宅した。ウォン部長判事が１５時間３０分という長時間にわたって検討したあげく下された結論だった。帰宅する李副会長に記者が「一言お願いする」「違法合併の報告を受けた事実があるか」と尋ねると「遅くまでご苦労さまでした」という回答にとどまった。

裁判所の今回の決定で検察は李副会長の防御権を無力化するために無理に逮捕状を請求したという批判に直面するものとみられる。李副会長などは２日、外部専門家で構成される検察捜査審議委を招集して「起訴など司法処理の適正性を判断してほしい」と要請した。だが、検察は２日後である４日、李副会長などに対して電撃的に逮捕状を請求した。李副会長に友好的な世論を活用して起訴を避けようと選択した勝負の賭けを無力化しようとする狙いがあったという見方もある。

検察はこの日、李副会長の拘束前被疑者審問（令状実質審査）で「事案の重大性」を強調したことが分かった。検察は「２０１５年サムスン物産と第一毛織の合併過程で起きたサムスン側の不正取り引きと相場操縦で李副会長が数兆ウォン規模の不当利得を得た過去最大の金融犯罪」と主張したと伝えられる。捜査チームは経営権継承の過程で作成されたサムスンの非公開プロジェクト、いわゆる「プロジェクトＧ」について李副会長が関連内容の報告を受けて確認した情況が入った資料を提示したとも知らされた。捜査チームは確保した物証と周辺人の供述で李副会長の介入情況を明らかにすることに自信を示したが、結果的に逮捕状審査の段階で李副会長が直接介入したという疑いを釈明することに失敗した。

中央地検は李副会長など３人の逮捕状がすべて棄却された直後「本事案の重大性、今まで確保された証拠資料などからみて裁判所の棄却決定を残念に受け入れる」という立場を出した。また「ただし、逮捕状裁判の結果を問わず法と原則により今後の捜査に万全を期する予定」と説明した。

李副会長の弁護団も棄却決定直後「裁判所の棄却理由は『基本的な事実関係以外に被疑者の責任有無など犯罪疑惑が釈明されておらず、拘束の必要性もない』という趣旨」として「今後検察の捜査審議手続きで厳正な審議を経て捜査の継続と起訴の是非が決定されるよう期待する」と明らかにした。

逮捕状は棄却されたが、李副会長などは今後の裁判でもう一度容疑と関係がないということを釈明する必要があると予想される。１１日、中央地検は検察市民委員会を開いて李副会長が申請した検察捜査審議委員会を開催するかどうか決定する。開催が決定されれば検察は捜査審議委の勧告を聞いて最終起訴の是非を判断する。ただし、法曹界では検察が逮捕状を請求したため、起訴の可能性が大きいだろうと予想している。検察が逮捕状を再請求する可能性もある。