「アベノマスク(着用もしくは持参 )を忘れた生徒は少人数教室に残る」。
先月末、埼玉県のある公立中学校が保護者に配付したプリントにはこのように書かれていた。安倍晋三首相が配布した布マスクの着用を義務づけるという指針が日本全国に波紋を呼んだ。
日本政府は260億円を投入して各世帯に2枚ずつ布マスクを配布した。経済政策「アベノミクス」にちなんで「アベノマスク(安倍のマスク)」と呼ばれるが、「アベノミクスで始まり、 アベノマスクで終わった」という声が出るほど反応はよくない。
「あまりにも小さくて口と鼻を同時に覆うことができない」という不満があり、感染予防効果が小さいため閣僚さえも使用しないというこのマスクを、学校はなぜ生徒に強要しようとしたのか。
日本野党は長期政権が呼んだ日本社会内の「忖度」文化の影響だと批判した。もともと忖度は人の心情を推し量って配慮するという良い意味として使われた。しかし森友・加計学園や「桜を見る会」の問題で政権にへつらう官僚の態度が明るみに出て否定的な意味が強まった。
これが教育界と一線の学校にまで広がり、安倍首相だけでなくアベノマスクまでが忖度の対象になったということだ。担当省庁の文部科学省と埼玉県教育委員会が「全く知らない」という主張を続け、今回の騒ぎは一線学校の教師の単純な逸脱として片づけられる雰囲気だ。しかし8年近い記録的な長期執権が植え付けた「忖度」という名のウイルスは、このように日本社会のあちこちに傷を残している。
韓日関係もこれを避けられずにいる。日本政府内の事情に詳しい東京の情報筋は「韓日外交の最前線に立つ日本外務省の存在感が消えたのも忖度の影響」と話した。この情報筋は「韓国に対する安倍首相と首相官邸の強硬気流を意識した茂木敏充外相が韓日関係に全く意欲がない」とし「安倍内閣で外相を務めた前任者2人と比較すると、韓国に対する理解度が非常に低く、韓国に関心もない」と話した。
前任者は違った。「非常に慎重で優柔不断なのが弱点」と言われた岸田文雄元外相(2012年12月-17年8月)さえも決定的な瞬間には自分の主張をした。2015年の慰安婦合意妥結直前、保守派の反発を心配してためらう安倍首相を訪ねて「あなたが決断しなければいけない」と促したのが代表的な場面だ。
バトンを受け継いだ「変わり者」河野太郎外相(2017年8月-19年9月)はさらに積極的だった。徴用問題の出口が見えない中、「両国の政府・企業が経済協力名目の基金を設立しよう」というアイデアを首相官邸にも知らせず康京和(カン・ギョンファ)外交部長官に提案した。2018年末には、当時国会議員でもなかった共に民主党の金民錫(キム・ミンソク)民主研究院院長と2人きりで東京で昼食をしながら韓日関係の突破口を模索した。
しかし現在の茂木外相は「首相官邸からオーダーが出る前には少しも動く考えがない」(匿名を求めた日本政府筋)という。実際、茂木外相の就任から9カ月間、韓日関係に関する進展した立場表明やアイデアが注目を引いたことはない。こうした状況では外務省内のエース級として知られる「金杉憲治外務審議官-滝崎成樹アジア大洋州局長-長尾成敏北東アジア第一課長」などの韓国ラインは力を発揮しにくいという分析が出ている。
日本で「忖度」が問題なら、韓国では政権とコードを合わせようとする官僚社会がよく俎上に載せられる。現政権の南北関係重視・対日強硬基調を意識し、「南北統一に寄与するために外交官になった」と自らを広報したり、あたかも「抗日闘士」のように行動する類型の官僚のことだ。
日本の韓日関係専門家の中には「一部の韓国外交官は公私を分けず、誰に会っても最初から最後まで一方的に自己主張ばかりする」「外交官というよりも政治家のように振る舞う」という不満を吐露する人が少なくない。
さらに自分が韓日関係に直接・間接的に関与しているにもかかわらず、韓日関係改善の必要性を強調するメディアの企画報道について「政府を批判しようという不純な意図がある」と話すこともあるという。こうした姿勢では韓日関係に突破口が開かれるはずがない。
昨年11月の韓国政府の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了猶予、ようやく実現した12月の首脳会談などでしばらく小康状態だった韓日葛藤の時計が最近、時限爆弾のようにまた動き始めた。韓国政府は2日、日本の輸出規制措置に対してWTO(世界貿易機関)提訴手続き再開を宣言した。「韓日関係の火薬庫」という徴用関連の日本企業差し押さえ資産の現金化手続きも韓国裁判所の公示送達でまた速度を出している。
青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と首相官邸ばかりを眺める「コード外交」と「忖度」では韓日関係に垂れ込める恐ろしい暗雲を防ぐことはできない。
ソ・スンウク/東京特派員
先月末、埼玉県のある公立中学校が保護者に配付したプリントにはこのように書かれていた。安倍晋三首相が配布した布マスクの着用を義務づけるという指針が日本全国に波紋を呼んだ。
日本政府は260億円を投入して各世帯に2枚ずつ布マスクを配布した。経済政策「アベノミクス」にちなんで「アベノマスク(安倍のマスク)」と呼ばれるが、「アベノミクスで始まり、 アベノマスクで終わった」という声が出るほど反応はよくない。
「あまりにも小さくて口と鼻を同時に覆うことができない」という不満があり、感染予防効果が小さいため閣僚さえも使用しないというこのマスクを、学校はなぜ生徒に強要しようとしたのか。
日本野党は長期政権が呼んだ日本社会内の「忖度」文化の影響だと批判した。もともと忖度は人の心情を推し量って配慮するという良い意味として使われた。しかし森友・加計学園や「桜を見る会」の問題で政権にへつらう官僚の態度が明るみに出て否定的な意味が強まった。
これが教育界と一線の学校にまで広がり、安倍首相だけでなくアベノマスクまでが忖度の対象になったということだ。担当省庁の文部科学省と埼玉県教育委員会が「全く知らない」という主張を続け、今回の騒ぎは一線学校の教師の単純な逸脱として片づけられる雰囲気だ。しかし8年近い記録的な長期執権が植え付けた「忖度」という名のウイルスは、このように日本社会のあちこちに傷を残している。
韓日関係もこれを避けられずにいる。日本政府内の事情に詳しい東京の情報筋は「韓日外交の最前線に立つ日本外務省の存在感が消えたのも忖度の影響」と話した。この情報筋は「韓国に対する安倍首相と首相官邸の強硬気流を意識した茂木敏充外相が韓日関係に全く意欲がない」とし「安倍内閣で外相を務めた前任者2人と比較すると、韓国に対する理解度が非常に低く、韓国に関心もない」と話した。
前任者は違った。「非常に慎重で優柔不断なのが弱点」と言われた岸田文雄元外相(2012年12月-17年8月)さえも決定的な瞬間には自分の主張をした。2015年の慰安婦合意妥結直前、保守派の反発を心配してためらう安倍首相を訪ねて「あなたが決断しなければいけない」と促したのが代表的な場面だ。
バトンを受け継いだ「変わり者」河野太郎外相(2017年8月-19年9月)はさらに積極的だった。徴用問題の出口が見えない中、「両国の政府・企業が経済協力名目の基金を設立しよう」というアイデアを首相官邸にも知らせず康京和(カン・ギョンファ)外交部長官に提案した。2018年末には、当時国会議員でもなかった共に民主党の金民錫(キム・ミンソク)民主研究院院長と2人きりで東京で昼食をしながら韓日関係の突破口を模索した。
しかし現在の茂木外相は「首相官邸からオーダーが出る前には少しも動く考えがない」(匿名を求めた日本政府筋)という。実際、茂木外相の就任から9カ月間、韓日関係に関する進展した立場表明やアイデアが注目を引いたことはない。こうした状況では外務省内のエース級として知られる「金杉憲治外務審議官-滝崎成樹アジア大洋州局長-長尾成敏北東アジア第一課長」などの韓国ラインは力を発揮しにくいという分析が出ている。
日本で「忖度」が問題なら、韓国では政権とコードを合わせようとする官僚社会がよく俎上に載せられる。現政権の南北関係重視・対日強硬基調を意識し、「南北統一に寄与するために外交官になった」と自らを広報したり、あたかも「抗日闘士」のように行動する類型の官僚のことだ。
日本の韓日関係専門家の中には「一部の韓国外交官は公私を分けず、誰に会っても最初から最後まで一方的に自己主張ばかりする」「外交官というよりも政治家のように振る舞う」という不満を吐露する人が少なくない。
さらに自分が韓日関係に直接・間接的に関与しているにもかかわらず、韓日関係改善の必要性を強調するメディアの企画報道について「政府を批判しようという不純な意図がある」と話すこともあるという。こうした姿勢では韓日関係に突破口が開かれるはずがない。
昨年11月の韓国政府の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了猶予、ようやく実現した12月の首脳会談などでしばらく小康状態だった韓日葛藤の時計が最近、時限爆弾のようにまた動き始めた。韓国政府は2日、日本の輸出規制措置に対してWTO(世界貿易機関)提訴手続き再開を宣言した。「韓日関係の火薬庫」という徴用関連の日本企業差し押さえ資産の現金化手続きも韓国裁判所の公示送達でまた速度を出している。
青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と首相官邸ばかりを眺める「コード外交」と「忖度」では韓日関係に垂れ込める恐ろしい暗雲を防ぐことはできない。
ソ・スンウク/東京特派員
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