新型コロナがもたらす経済的な衝撃はどの程度だろうか。米連邦準備制度理事会(FRB)の議長を務めたベン・バーナンキ氏はV字回復、すなわち景気が急速に冷え込んだ後すぐに強く反騰すると予想する。沈滞後に一定期間が過ぎてから回復が始まるU字型を予測する専門家も多い。一部では急速下降した景気が底で長期間低迷してから成長するL字型を予想する。
歴史的な経験は危機の原因と結果について非常に有用な見方を提供する。過去100年余りに世界経済が大きな危機を経験したことが何度かあった。1918-20年のスペイン風邪、1929-39年の世界大恐慌、1970-80代の2度の石油危機、そして2008年の金融危機が代表的な例だ。こうしたグローバル衝撃だけでなく、特定地域中心の大型危機もあった。1990年代初めの社会主義圏の体制移行による沈滞、そして1997-8年に複数のアジア国家が経験した通貨危機がこれに属する。
L字型は確率が最も低いシナリオと考えられる。国民所得がこうした推移を見せるには、経済制度に重要な欠陥が存在し、さらに深刻な政策の失敗が重ならなければいけない。大恐慌が代表的な例だ。経済沈滞に対応して米国政府は総需要を増やさなければならなかったが、むしろ金利を上げて危機を悪化させた。また、金本位制のため他国も拡張的通貨政策を使えなかった。結局、ジョン・ケインズの有効需要理論に立脚して政策を修正し、金本位制という硬直した制度をなくすことで、危機から抜け出すことができた。当然、時間がかかるしかなかった。ロシアの体制移行も同じだ。社会主義から資本主義への制度の転換だけでなく、右往左往した移行政策が重なった結果、1990年から8年間、ロシアの国民所得は40%も減少した。
新型コロナの災難は経済制度の欠陥とは関係がない。経済専門家はすでにどのような種類の政策が衝撃を緩和するかを知っている。したがって今回の災難で世界経済が4年連続でマイナス成長率を記録し、その規模が15%以上も減少するL字型の推移は起こる可能性が薄い。
V字型は最善のシナリオだ。バーナンキ氏は防疫のために政府が人為的に経済活動を中止させたことで衝撃が生じたと判断する。簡単に言えば、火災の発生を懸念して電流を意図的に遮断したケースであるため、危険が消えて電気供給が再開されればすぐに正常に戻るという見方だ。スペイン風邪の致死率と経済成長率の関係を分析したハーバード大のロバート・バロー教授の研究結果もこれを支持する。これによると、スペイン風邪は世界の平均成長率を6%ポイント引き下げた。死者数を全体の人口で割って計算したスペイン風邪の致死率は2%だが、新型コロナはこれほど致命的ではない。すなわち今回の災難で成長率が6%ポイント以上も下落することはないと、バロー教授は判断する。
U字型は、深刻な金融衝撃が発生したり産業構造の適応が必要な場合に主に表れる。金融危機やアジア通貨危機がこれに該当する。サブプライムモーゲージを利用して派生商品を作って販売した金融界、そして外債主導成長を追求した企業および金融部門の問題を解決するためには一定の期間が必要だった。石油危機当時はエネルギーを削減する方向への産業構造調整が必要だったため、その衝撃が比較的長く続いた。これは、今回の事態が実物を超えて金融にも大きな影響を及ぼせば、U字型のシナリオに進む確率が高いということだ。
V字型とU字型を分ける最も重要な要因は新型コロナの防疫の結果となるだろう。もし欧州主要国と米国の企業の大半が今後3-4カ月以内に稼働を再開できれば、V字型のシナリオとなる確率が高い。この程度の期間には政府の支援などで大多数の企業と金融機関が持ちこたえるという前提でだ。しかしシャットダウン期間がさらに長くなる場合、政府の力量が消耗するおそれもある。実物部門の崩壊が信用リスクを触発し、これがまた実物部門の危機を増幅させる場合はU字型となる。電気を再び供給しても回路が壊れて電気が流れない状態ということだ。
韓国政府は企業と家計の保全を目標に迅速、果敢な政策を進めなければいけない。同時にU字型シナリオにも備える必要がある。この場合には公共部門の力量だけでは対応できない衝撃がくることもある。したがって民間部門の可用財源を最大限に動員し、追加の支柱を確保することが求められる。地下経済に隠れている資金を含む市中資金が資本市場に流入するようインセンティブを付与する案、「共生・連帯基金」を設立し、50%の税額控除の恩恵を与えて民間の寄付を募る案などがその例になる可能性がある。同時に社会的距離を強化して感染者数を大幅に減らさなければいけない。そうしてこそ早期に日常に戻ることができ、内需が回復して経済が持ちこたえる体力を高めることができる。今は防疫が経済政策であり、社会的距離を維持することが隣人愛であり経済を回復させる道だ。
キム・ビョンヨン/ソウル大経済学部教授
歴史的な経験は危機の原因と結果について非常に有用な見方を提供する。過去100年余りに世界経済が大きな危機を経験したことが何度かあった。1918-20年のスペイン風邪、1929-39年の世界大恐慌、1970-80代の2度の石油危機、そして2008年の金融危機が代表的な例だ。こうしたグローバル衝撃だけでなく、特定地域中心の大型危機もあった。1990年代初めの社会主義圏の体制移行による沈滞、そして1997-8年に複数のアジア国家が経験した通貨危機がこれに属する。
L字型は確率が最も低いシナリオと考えられる。国民所得がこうした推移を見せるには、経済制度に重要な欠陥が存在し、さらに深刻な政策の失敗が重ならなければいけない。大恐慌が代表的な例だ。経済沈滞に対応して米国政府は総需要を増やさなければならなかったが、むしろ金利を上げて危機を悪化させた。また、金本位制のため他国も拡張的通貨政策を使えなかった。結局、ジョン・ケインズの有効需要理論に立脚して政策を修正し、金本位制という硬直した制度をなくすことで、危機から抜け出すことができた。当然、時間がかかるしかなかった。ロシアの体制移行も同じだ。社会主義から資本主義への制度の転換だけでなく、右往左往した移行政策が重なった結果、1990年から8年間、ロシアの国民所得は40%も減少した。
新型コロナの災難は経済制度の欠陥とは関係がない。経済専門家はすでにどのような種類の政策が衝撃を緩和するかを知っている。したがって今回の災難で世界経済が4年連続でマイナス成長率を記録し、その規模が15%以上も減少するL字型の推移は起こる可能性が薄い。
V字型は最善のシナリオだ。バーナンキ氏は防疫のために政府が人為的に経済活動を中止させたことで衝撃が生じたと判断する。簡単に言えば、火災の発生を懸念して電流を意図的に遮断したケースであるため、危険が消えて電気供給が再開されればすぐに正常に戻るという見方だ。スペイン風邪の致死率と経済成長率の関係を分析したハーバード大のロバート・バロー教授の研究結果もこれを支持する。これによると、スペイン風邪は世界の平均成長率を6%ポイント引き下げた。死者数を全体の人口で割って計算したスペイン風邪の致死率は2%だが、新型コロナはこれほど致命的ではない。すなわち今回の災難で成長率が6%ポイント以上も下落することはないと、バロー教授は判断する。
U字型は、深刻な金融衝撃が発生したり産業構造の適応が必要な場合に主に表れる。金融危機やアジア通貨危機がこれに該当する。サブプライムモーゲージを利用して派生商品を作って販売した金融界、そして外債主導成長を追求した企業および金融部門の問題を解決するためには一定の期間が必要だった。石油危機当時はエネルギーを削減する方向への産業構造調整が必要だったため、その衝撃が比較的長く続いた。これは、今回の事態が実物を超えて金融にも大きな影響を及ぼせば、U字型のシナリオに進む確率が高いということだ。
V字型とU字型を分ける最も重要な要因は新型コロナの防疫の結果となるだろう。もし欧州主要国と米国の企業の大半が今後3-4カ月以内に稼働を再開できれば、V字型のシナリオとなる確率が高い。この程度の期間には政府の支援などで大多数の企業と金融機関が持ちこたえるという前提でだ。しかしシャットダウン期間がさらに長くなる場合、政府の力量が消耗するおそれもある。実物部門の崩壊が信用リスクを触発し、これがまた実物部門の危機を増幅させる場合はU字型となる。電気を再び供給しても回路が壊れて電気が流れない状態ということだ。
韓国政府は企業と家計の保全を目標に迅速、果敢な政策を進めなければいけない。同時にU字型シナリオにも備える必要がある。この場合には公共部門の力量だけでは対応できない衝撃がくることもある。したがって民間部門の可用財源を最大限に動員し、追加の支柱を確保することが求められる。地下経済に隠れている資金を含む市中資金が資本市場に流入するようインセンティブを付与する案、「共生・連帯基金」を設立し、50%の税額控除の恩恵を与えて民間の寄付を募る案などがその例になる可能性がある。同時に社会的距離を強化して感染者数を大幅に減らさなければいけない。そうしてこそ早期に日常に戻ることができ、内需が回復して経済が持ちこたえる体力を高めることができる。今は防疫が経済政策であり、社会的距離を維持することが隣人愛であり経済を回復させる道だ。
キム・ビョンヨン/ソウル大経済学部教授
この記事を読んで…