世界経済が新型コロナウイルス感染症という津波に緊張している。防波堤となる600億ドル規模の韓米通貨スワップが締結されたは幸いだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は非常経済対策会議を開き、「いかなる制約も乗り越えなければいけない。あらゆる資源と手段を総動員すべき」と述べた。発言が現実になることを望む。
そのためには2008年の米国発グローバル金融危機を乗り越えた李明博(イ・ミョンバク)政権を研究する必要がある。米リーマンブラザースが破綻すると、李明博元大統領は「危機の時は現金が最も重要」として韓米通貨スワップの推進を指示した。正義と倫理という抽象的な価値を重視する文大統領は相対的にこうした経済現実感覚が落ちる。これを認めてこそ解決策が出てくる。
李明博政権も当初は米国側から「通貨スワップが何か知っているのか」という声を聞いた。驚いた姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官がニューヨークに飛んでシティバンク顧問のルービン元財務長官とローズ副会長に会った。河永求(ハ・ヨング)韓国シティバンク銀行長が取り持った席だった。姜万洙長官は「米国が起こした危機のため我々が苦痛を受けるのはおかしい。韓国が危機管理のために保有中の米財務省の債券を売れば米国の通貨政策を阻害する逆流効果があるはず」と述べた。堂々と通貨スワップを説得して圧力を加えた。
ルービン元長官の心が動いた。ローズ副会長は決定的な権限を持つガイトナー・ニューヨーク連邦準備銀行総裁と会って姜万洙長官とルービン元長官の考えを伝えた。ガイトナー総裁は「100%可能だ」と語った。10月30日に300億ドルの韓米通貨スワップが発表された。基軸通貨の米ドルと韓国ウォンが締結した最初の経済同盟だった。強いドルが招く世界経済破産ドミノが米国に及ぼす衝撃を予防するために急いで9カ国と締結した今回の通貨スワップとは次元が違う。
中国・日本ともそれぞれ300億ドルの通貨スワップを結んだ。姜万洙長官は中国の謝旭人財政相に会って「韓中通貨スワップは人民元が基軸通貨に進む第一歩」と説得した。消極的だった日本は韓中合意を聞いて方針を変えた。危機の韓国が3つの強大国を友軍にした過程は現在の政府が必ず振り返る必要がある。
李明博政権の非常経済対策会議は2009年1月8日から2012年12月まで計145回も開かれた。大統領が自ら開いた。政策が上程されれば大統領は長官、青瓦台(チョンワデ、大統領府)参謀と激しく討論し、調整した後に執行した。当時の尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)企画財政部長官は「『大統領だからといって何でも知っているわけではない』と声を高めると笑いながら受け入れた。李明博大統領は度量が大きかった」と話した。
文在寅政権の危機対応政策の執行速度は遅い。1カ月間の新型コロナ政策資金執行率は10%にもならない。民生現場がどのような状況かを知らないからだ。李明博政権では現場で62回も会議を開いた。貸金業者から借りた100万ウォンが増えて毎月600万ウォンの元利金を返済する飲食店の経営者が「銀行から融資を受けたい」と訴えると、すぐに解決した。さらに庶民向け金融活性化対策を用意した。李明博大統領は金滉植(キム・ファンシク)監査院長に指示し、努力する公務員の失敗を問題にしない積極行政免責制度も設けた。
李明博大統領は新年初めから3月まで行われてきた大統領業務報告を2008年には12月に終えた。2009年の予算は1月から執行され、64.8%の予算が上半期に執行された。このように2009年の危機を克服し、2010年に経済協力開発機構(OECD)平均の2.8%を大きく上回る6.1%の経済成長率を達成した。「韓国経済は沈没するのか」と報道していたフィナンシャルタイムズ(FT)は「韓国が危機統制で満点を受けた」と絶賛した。
危機には最高の人材を抜てきしなければいけない。李明博大統領は姜万洙、尹増鉉、金錫東(キム・ソクドン)、朴炳元(パク・ビョンウォン)、崔重卿(チェ・ジュンギョン)を起用して市場の信頼を確保した。米国でも通用する一流経済学者に青瓦台と政府の要職を任せた。1997年の通貨危機直後の金大中(キム・デジュン)政権も東橋洞(トンギョドン)系を排除し、金龍煥(キム・ヨンファン)、李揆成(イ・ギュソン)、李憲宰(イ ・ホンジェ)、陳念(チン・ニョム)、康奉均(カン・ボンギュン)、鄭徳亀(チョン・ドック)を重用した。文大統領は金錫東、朴炳元とグローバル金融の実力者の河永求(ハ・ヨング)を含む経済ドリームチームを構成する必要がある。
文大統領の最終成績表は前代未聞の経済危機を克服したかどうかにかかっている。脆弱階層支援に隙があってはならない。米国やEUのように破産危機の基幹産業への支援を積極的にしなければいけない。無理な最低賃金引き上げ、週52時間勤務制は速度調節が求められる。第4次産業時代の先頭走者になるための規制改革にも拍車を加えなければいけない。世界一の原発強国の地位を放棄して斗山重工業を殺す脱原発政策は見直すべきだろう。
危機には逆説的に失敗した政策の軌道を果敢に修正する機会が与えられる。「あらゆる資源と手段を総動員すべき」という大統領の発言に注目する。李明博元大統領は論争を招いた人物だが、彼のグローバル金融危機克服ノウハウは活用されなければいけない。厳しい「コロナ戦争」で生き残る道だ。全世界が迎えている今の危機にうまく対応すれば、今世紀に韓国は世界経済を主導できる。
李夏慶(イ・ハギョン)/主筆
そのためには2008年の米国発グローバル金融危機を乗り越えた李明博(イ・ミョンバク)政権を研究する必要がある。米リーマンブラザースが破綻すると、李明博元大統領は「危機の時は現金が最も重要」として韓米通貨スワップの推進を指示した。正義と倫理という抽象的な価値を重視する文大統領は相対的にこうした経済現実感覚が落ちる。これを認めてこそ解決策が出てくる。
李明博政権も当初は米国側から「通貨スワップが何か知っているのか」という声を聞いた。驚いた姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官がニューヨークに飛んでシティバンク顧問のルービン元財務長官とローズ副会長に会った。河永求(ハ・ヨング)韓国シティバンク銀行長が取り持った席だった。姜万洙長官は「米国が起こした危機のため我々が苦痛を受けるのはおかしい。韓国が危機管理のために保有中の米財務省の債券を売れば米国の通貨政策を阻害する逆流効果があるはず」と述べた。堂々と通貨スワップを説得して圧力を加えた。
ルービン元長官の心が動いた。ローズ副会長は決定的な権限を持つガイトナー・ニューヨーク連邦準備銀行総裁と会って姜万洙長官とルービン元長官の考えを伝えた。ガイトナー総裁は「100%可能だ」と語った。10月30日に300億ドルの韓米通貨スワップが発表された。基軸通貨の米ドルと韓国ウォンが締結した最初の経済同盟だった。強いドルが招く世界経済破産ドミノが米国に及ぼす衝撃を予防するために急いで9カ国と締結した今回の通貨スワップとは次元が違う。
中国・日本ともそれぞれ300億ドルの通貨スワップを結んだ。姜万洙長官は中国の謝旭人財政相に会って「韓中通貨スワップは人民元が基軸通貨に進む第一歩」と説得した。消極的だった日本は韓中合意を聞いて方針を変えた。危機の韓国が3つの強大国を友軍にした過程は現在の政府が必ず振り返る必要がある。
李明博政権の非常経済対策会議は2009年1月8日から2012年12月まで計145回も開かれた。大統領が自ら開いた。政策が上程されれば大統領は長官、青瓦台(チョンワデ、大統領府)参謀と激しく討論し、調整した後に執行した。当時の尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)企画財政部長官は「『大統領だからといって何でも知っているわけではない』と声を高めると笑いながら受け入れた。李明博大統領は度量が大きかった」と話した。
文在寅政権の危機対応政策の執行速度は遅い。1カ月間の新型コロナ政策資金執行率は10%にもならない。民生現場がどのような状況かを知らないからだ。李明博政権では現場で62回も会議を開いた。貸金業者から借りた100万ウォンが増えて毎月600万ウォンの元利金を返済する飲食店の経営者が「銀行から融資を受けたい」と訴えると、すぐに解決した。さらに庶民向け金融活性化対策を用意した。李明博大統領は金滉植(キム・ファンシク)監査院長に指示し、努力する公務員の失敗を問題にしない積極行政免責制度も設けた。
李明博大統領は新年初めから3月まで行われてきた大統領業務報告を2008年には12月に終えた。2009年の予算は1月から執行され、64.8%の予算が上半期に執行された。このように2009年の危機を克服し、2010年に経済協力開発機構(OECD)平均の2.8%を大きく上回る6.1%の経済成長率を達成した。「韓国経済は沈没するのか」と報道していたフィナンシャルタイムズ(FT)は「韓国が危機統制で満点を受けた」と絶賛した。
危機には最高の人材を抜てきしなければいけない。李明博大統領は姜万洙、尹増鉉、金錫東(キム・ソクドン)、朴炳元(パク・ビョンウォン)、崔重卿(チェ・ジュンギョン)を起用して市場の信頼を確保した。米国でも通用する一流経済学者に青瓦台と政府の要職を任せた。1997年の通貨危機直後の金大中(キム・デジュン)政権も東橋洞(トンギョドン)系を排除し、金龍煥(キム・ヨンファン)、李揆成(イ・ギュソン)、李憲宰(イ ・ホンジェ)、陳念(チン・ニョム)、康奉均(カン・ボンギュン)、鄭徳亀(チョン・ドック)を重用した。文大統領は金錫東、朴炳元とグローバル金融の実力者の河永求(ハ・ヨング)を含む経済ドリームチームを構成する必要がある。
文大統領の最終成績表は前代未聞の経済危機を克服したかどうかにかかっている。脆弱階層支援に隙があってはならない。米国やEUのように破産危機の基幹産業への支援を積極的にしなければいけない。無理な最低賃金引き上げ、週52時間勤務制は速度調節が求められる。第4次産業時代の先頭走者になるための規制改革にも拍車を加えなければいけない。世界一の原発強国の地位を放棄して斗山重工業を殺す脱原発政策は見直すべきだろう。
危機には逆説的に失敗した政策の軌道を果敢に修正する機会が与えられる。「あらゆる資源と手段を総動員すべき」という大統領の発言に注目する。李明博元大統領は論争を招いた人物だが、彼のグローバル金融危機克服ノウハウは活用されなければいけない。厳しい「コロナ戦争」で生き残る道だ。全世界が迎えている今の危機にうまく対応すれば、今世紀に韓国は世界経済を主導できる。
李夏慶(イ・ハギョン)/主筆
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