中国人入国禁止が政争の対象になったのは全面的に文在寅(ムン・ジェイン)政権の責任だ。防疫の実効性を問いただそうというのではない。韓国の運命をかけた無謀なベッティングをしたからだ。文大統領は韓国と中国が「運命共同体」と言った。むやみに口に出す言葉ではない。「中国人の痛みは我々の痛み」までは外交的修辞になるかもしれない。しかし運命共同体はそうではない。運命共同体とは何か。「中国が滅びれば韓国も滅びて、中国が栄えれば韓国も栄える」という意味と私は理解した。その場合、追求する価値とシステムも同じでなければいけない。全体主義独裁国家中国と自由大韓民国がどうして価値を共有し、運命を共にしなければいけないのか。国民の誰が同意したのか。国民に尋ねたのか。私はその言葉が大統領の口から出た時にぞっとした。彼はこの国をどこに向かわせようとしているのか。中国に自ら手懐けられようとしているのか。
振り返ってみると、この政権の初期からその兆候は表れていた。THAAD(高高度防衛ミサイル)国内配備に対する中国の報復に沈黙した。2017年に世界貿易機関(WTO)に提訴する準備を終えながらも結局はしなかった。当時、実務陣は「勝算は90%以上」と話していた。なぜ提訴しなかったのか、説明もまともにしなかった。そして翌年、米国がセーフガードを発動すると、直ちにWTOに提訴した。文大統領が自ら「堂々と対応すべき」と注文した。「通商と安保は別」として米国にあえて対抗した。「反米奉中」という批判が出たが、大統領は意に介さなかった。中国に「3不」を約束して安保主権を放棄し、「一人飯」という批判も甘受した。中国の夢を持ち上げて小中華を自任した。大統領がこれだから、当時の盧英敏(ノ・ヨンミン)中国大使も2017年10月に芳名録に「万折必東(=黄河の流れは1万回曲がっても必ず東に流れる)」と記し、「中国に忠誠を誓った」という非難を浴びた。6カ月前の同年4月、トランプ米大統領が「習近平国家主席は『韓国は中国の一部だった』と発言した」と述べたが、この政権の初代駐中大使は抗議どころかリップサービスをしたのだ。韓国国民は突然「芯がない国民」になった。日本の安倍首相がそのようにしていれば大変なことになっていたはずだ。
大統領の下で大韓民国ではすでに「屈身」の陰が色濃くなっている。脱原発の恩恵は中国の太陽光企業が独占した。韓国の太陽光企業は次々と廃業中だ。韓国電力は国内電線事業で資格も備わっていない中国企業の入札を考慮中だ。中国企業にエネルギー主権を奪われたフィリピンの事例は反面教師にもなっていない。脱原発公約は国民の反対にもかかわらず強行し、「中国発粒子状物質解決」公約はいつになるのか、中国にろくに抗議もできない。国民は中国の天気と工場の稼働に合わせてマスクを準備する状況になっている。
中国の前に立てば限りなく小さくなる文在寅政権のため、この3年間、国民の自尊感は傷つくだけ傷ついた。そこに油を注いだのが中国人入国禁止をためらった件だ。中国には逆に「外交より防疫だ」という言葉を返され、現地韓国人の住宅が角材で封鎖されたが、福祉長官は「中国から来た韓国人が原因」と話す国。韓国国民が92カ国から入国制限されて屈辱を感じていても、外交長官が「国民の安全が優先だが他の懸案も考慮する点がある」と話す国。このような国の国民に何の自尊感が残っているだろうか。
韓国国民の自尊感が傷つくほど反射利益を得た人物もいる。習近平主席だ。習近平主席は韓国で新型コロナ感染が広がると、政治的責任を免れる可能性が高まった。すでに「韓国より中国はうまく対処した」と自画自賛中だ。「中国ではなく韓国を入国禁止にすべき」という主張も出ている。そこに新天地イエス教会という餌食も出てきた。習近平主席は中国内の新天地教徒に対する一斉調査を指示した。ウイルスの震源地で韓国を犠牲にするという見方が出ている。「屈身」の代償にしては残酷だ。こういうものが文在寅大統領が話した運命共同体であるのなら、私は断固拒否する。
イ・ジョンジェ/中央日報コラムニスト
振り返ってみると、この政権の初期からその兆候は表れていた。THAAD(高高度防衛ミサイル)国内配備に対する中国の報復に沈黙した。2017年に世界貿易機関(WTO)に提訴する準備を終えながらも結局はしなかった。当時、実務陣は「勝算は90%以上」と話していた。なぜ提訴しなかったのか、説明もまともにしなかった。そして翌年、米国がセーフガードを発動すると、直ちにWTOに提訴した。文大統領が自ら「堂々と対応すべき」と注文した。「通商と安保は別」として米国にあえて対抗した。「反米奉中」という批判が出たが、大統領は意に介さなかった。中国に「3不」を約束して安保主権を放棄し、「一人飯」という批判も甘受した。中国の夢を持ち上げて小中華を自任した。大統領がこれだから、当時の盧英敏(ノ・ヨンミン)中国大使も2017年10月に芳名録に「万折必東(=黄河の流れは1万回曲がっても必ず東に流れる)」と記し、「中国に忠誠を誓った」という非難を浴びた。6カ月前の同年4月、トランプ米大統領が「習近平国家主席は『韓国は中国の一部だった』と発言した」と述べたが、この政権の初代駐中大使は抗議どころかリップサービスをしたのだ。韓国国民は突然「芯がない国民」になった。日本の安倍首相がそのようにしていれば大変なことになっていたはずだ。
大統領の下で大韓民国ではすでに「屈身」の陰が色濃くなっている。脱原発の恩恵は中国の太陽光企業が独占した。韓国の太陽光企業は次々と廃業中だ。韓国電力は国内電線事業で資格も備わっていない中国企業の入札を考慮中だ。中国企業にエネルギー主権を奪われたフィリピンの事例は反面教師にもなっていない。脱原発公約は国民の反対にもかかわらず強行し、「中国発粒子状物質解決」公約はいつになるのか、中国にろくに抗議もできない。国民は中国の天気と工場の稼働に合わせてマスクを準備する状況になっている。
中国の前に立てば限りなく小さくなる文在寅政権のため、この3年間、国民の自尊感は傷つくだけ傷ついた。そこに油を注いだのが中国人入国禁止をためらった件だ。中国には逆に「外交より防疫だ」という言葉を返され、現地韓国人の住宅が角材で封鎖されたが、福祉長官は「中国から来た韓国人が原因」と話す国。韓国国民が92カ国から入国制限されて屈辱を感じていても、外交長官が「国民の安全が優先だが他の懸案も考慮する点がある」と話す国。このような国の国民に何の自尊感が残っているだろうか。
韓国国民の自尊感が傷つくほど反射利益を得た人物もいる。習近平主席だ。習近平主席は韓国で新型コロナ感染が広がると、政治的責任を免れる可能性が高まった。すでに「韓国より中国はうまく対処した」と自画自賛中だ。「中国ではなく韓国を入国禁止にすべき」という主張も出ている。そこに新天地イエス教会という餌食も出てきた。習近平主席は中国内の新天地教徒に対する一斉調査を指示した。ウイルスの震源地で韓国を犠牲にするという見方が出ている。「屈身」の代償にしては残酷だ。こういうものが文在寅大統領が話した運命共同体であるのなら、私は断固拒否する。
イ・ジョンジェ/中央日報コラムニスト
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