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【コラム】口ひげと朝鮮総督府では得られない共感=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
李氏朝鮮後期の風俗画家、恵園(ヘウォン)申潤福(シン・ユンボク)が描いた18世紀末と19世紀初頭の女性は加髢(カチェ)と呼ばれるものを入れて高く結い上げたヘアスタイルをしている。大きく高いほど美しいと感じていたためだ。非常に重く、ある金持ちの家の13歳になる嫁は、部屋に入ってきた姑にジョル(韓国の伝統的なお辞儀)をしようと立ち上がったところ脛骨が折れて死んだほどだった〔『新・近園随筆』、金ヨン俊(キム・ヨンジュン)〕。加髢費用の捻出のために田畑と家の一部分を売るなど行き過ぎる行為が横行すると、英祖(ヨンジョ)35年には加髢を禁じる令を下した。それでも守られないため、30余年が過ぎた正祖(チョンジョ)12年に禁止公文書が再び下された。王朝時代の国王の命令が無視されるほどだから、人間が自ら選んだ容貌を通じて自身を表現したい属性は天賦人権の水準であることを物語っているといえる。

『高麗史』によると、武臣の鄭仲夫(チョン・ジュンブ)は「あなたのひげは関羽のようだ。本当に隊長にふさわしい容貌だ」と国王の仁宗(インジョ)が称賛したひげを文臣たちがろうそくの火で焼くと、これを侮辱と感じて反乱を起こした。文臣を殺戮して形だけの国王を擁立して、ほぼ90年間、高麗を統治した。ひげが門閥貴族社会である高麗を根底から揺るがしたのだ。

2003年、米軍は地下穴の奥に隠れていたイラク大統領サダム・フセインを捕らえた後、真っ先に彼のひげを切った。アラブ国家で、成人男性の口ひげは生活規範の一部だ。米国の侵攻とフセインの独裁問題を離れて、ひげを削る行為はアラブ文化の自尊心と価値を否定する行為として批判を受けた。ひげには言葉がないが、人間の容貌を構成する要因はそれ自体が文化で強力な疎通の意味と力を持つことを示している。


先月、駐韓米国大使ハリス氏の口ひげがやり玉にあがった。韓国政府が推進する北朝鮮個別観光が(国連と国際社会の北朝鮮制裁の効力を維持し、北朝鮮の非核化方案を議論するために作られた協議体である)韓米ワーキンググループで議論する必要があるという大使の言及が不適切な内政干渉を越え、朝鮮総督府のデジャヴュとした与党の猛烈な非難の余波だった。大使館の近くで開かれたデモパフォーマンスで、ハリス氏の口ひげは抜かれて斬首された。観点の違いによって相手を批判して自身の立場を主張するのは、一党独裁の無誤謬国家体制では不可能な、自由民主主義体制の強みであるから奨励されるべきだ。しかし、その内容と表現は合理的な論争によって進められなければならない。外国の有力新聞と放送が「おかしな行為」だとして報じたように、大使の母親が日本人であるという血統まで引っ張りだすことは、論争どころか相手を見下す攻撃行為だ。

論争はイシューに対して相手の主張や立場に反論し、自身の立場や主張を擁護することだ。相手のアイデンティティと自尊心を攻撃して傷つけ、相手を無条件で否定したりそこにいない存在として追いやることではない。韓国人にとって「朝鮮総督府」は同じ空の下で息をしたくない存在だ。姓氏を変えて、拷問と殺傷を日常的に行い、武器製造のために祭事用の真鍮の器まで収奪し、韓民族の精神と文化抹殺を企てで指揮した人面獣心の怪物だ。したがって朝鮮総督府を持ち出すことは感情的扇動は可能でも、主張と説得を通した共感の過程は不可能にする。そのような表現は日本の悪名高い極右団体(在日特権を許さない市民の会)が在日同胞を攻撃する「朝鮮に帰れ」「税金泥棒」「ゴキブリ、ウジ朝鮮人」「在日朝鮮・韓国人をこの世から抹殺しよう」などといった憎悪の嫌悪表現と違うところがない。

ハリス氏の言及が不適切なら、「悪い植民統治者日本」に比喩や換喩をせずに、論理的に個別観光の正当性と必要性に対して擁護して説得しなければならない。個別観光が大韓民国憲法が志向する価値とともに絶対的な北朝鮮の非核化原則、南北の協力と平和共存、未来の統一にどのように寄与することができるかについて、何十回、何百回と説明して協調を求めなければならない。また、観光は信念よりもコンテンツが重要だ。持続可能な南北平和に役立てるどころか、困難をもたらしかねないコンテンツは避ける知恵が必要だ。

金鼎基(キム・ジョンギ)/漢陽(ハンヤン)大学校新聞放送学科教授



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