「まず就職してから実務型の教育をするスイス職業学校のモデルが、韓国の青年就職難の解決法になる可能性がある」。
昨年ノーベル経済学賞を受賞したハーバード大経済学部のマイケル・クレーマー教授(56)は韓国の過去の成長と未来の革新の秘訣は教育にあるという見方を示した。高い教育熱で学歴と職場の不一致が生じる副作用さえも、教育システムの改善を通じて解決すべきという助言だ。最も緊急な韓国社会の課題には少子化を挙げた。クレーマー教授は「韓国は人材育成で成長した経済であり、少子化で新しい人材が流入しなければ、韓国経済に最も大きな脅威となるおそれがある」と強調した。
中央日報の取材陣はノーベル経済学賞発表から1カ月ほど過ぎた2019年11月末、米ケンブリッジのハーバード大キャンパスを訪れてクレーマー教授に会った。忙しい日程のため約束は2回も延期された。しかしクレーマー教授はノーベル賞発表後に会う最初の韓国メディアだとし、中央日報とのインタビューの約束を守ろうとした。クレーマー教授はインタビュー中、記者よりも多くの質問をして韓国の開発政策を心配した。
--ノーベル賞の受賞は予想していたのか。
「全くしていなかった。受賞の発表があった日の朝、ロンドン政治経済大学(LSE)に自転車で移動していた。スカイプにスウェーデンからの緊急(urgently)と書かれたメッセージが表示されたが、ボイスフィッシングだと思って開かなかった。校内の情報技術部署からフィッシングに注意すべきという話を聞いていたからだ。その後、同僚に会うたびにおめでというという言葉を聞いて分かった」
--マイクロソフト(MS)創業者ビル・ゲイツの後援を受けるゲイツ教授(Gates professor)だが、受賞の喜びを分かち合ったのか。
「まだ直接連絡はしていないが、ゲイツも喜んだと聞いている」
クレーマー教授の研究室は経済学部の建物の2階の端にあった。研究室の前には教授とミーティングの約束をするために待つ学生3、4人がいた。約束時間に合わせて登場したクレーマー教授とともに事務室に入ると、各種書籍・書類が床に置かれていて歩けないほどだった。上着まで底に落ちていた。
--ひょっとして研究室の引っ越しを準備中か。
「そうではない(笑)。1カ月間ほど非常に忙しく、周囲を整理する余力がなかった。もともと整理整頓には全く素質がない」
--開発経済学は経済学界の非主流と見なされてきたが、学界の主流のハーバード大教授が貧困撲滅を研究することになった理由は。
「その間、経済学界では国内総生産(GDP)、通貨量など一般国民とやや距離があるテーマに関する研究が多かった。人類の福祉増進のためには開発途上国の貧困自体を減らすための実証的方法を研究すべきだと考えた」
ノーベル委員会は昨年10月の発表当時、クレーマー教授の受賞の背景について「過去20年間の実験的アプローチで開発経済学界を変えた」と説明した。
--実験的研究のために1990年代からアフリカのケニアに長期滞在したと聞いた。
「そうだ。アフリカの開発途上国が経済的に成長できない最も大きな原因は低い教育レベルのためだ。それでどのように生徒の出席率を高めるかを悩んだ。当時まで国際援助機関は生徒に無料教科書を提供したが、学習力は全く向上しなかった。当時、ある同僚の助言を聞いて生徒に駆虫薬を支援してみた。すると欠席率は25%減少した。生徒が学校に出てこなかったのは腸内の寄生虫感染のために体調が良くなかったからだ。駆虫薬を服用した生徒は成績が良くなり、結果的に成人になってからの所得が多い。5ドル程度の薬を提供しただけだが、国家経済がより速く成長(2018年、6.3%)することになった」
--貧困研究で韓国はどのような意味を持つのか。
「韓国は効果的な経済政策と教育への投資で早期に貧困から抜け出した代表的な国だ。機会があれば韓国の事例を深く研究して他の開発途上国に適用したい」
--韓国経済の高成長の秘訣は何か。
「教育だ。60年前まで韓国はアフリカのガーナと同じくらい貧しかった。今では立派な経済協力開発機構(OECD)加盟国だ。その背景には低所得層の生徒も十分に大学に進学できるようにした公教育システムがある。成長の秘訣には高い教育熱とこれを後押しした国家政策があったと考える」
--貧困を抜け出すには個人の努力がさらに重要ではないのか。
「そうではない。政府の役割が大きく、絶対的だ。1950年代の韓国人は今より怠けていて努力をしなかったため貧しかったのだろうか。そうではない。今の北朝鮮の人たちは貧困から抜け出そうという熱望が弱くて貧しいだろうか。これも違う。私を含めてほとんどすべての経済学者は国家の富は国民個人の性向ではなく政策で決まると考えている。これを後押しする最も確実な証拠は韓国と北朝鮮の所得の差だ」
<世界経済碩学診断>「少子化は韓国経済の最大の脅威…未来を率いる人材減る」(2)
昨年ノーベル経済学賞を受賞したハーバード大経済学部のマイケル・クレーマー教授(56)は韓国の過去の成長と未来の革新の秘訣は教育にあるという見方を示した。高い教育熱で学歴と職場の不一致が生じる副作用さえも、教育システムの改善を通じて解決すべきという助言だ。最も緊急な韓国社会の課題には少子化を挙げた。クレーマー教授は「韓国は人材育成で成長した経済であり、少子化で新しい人材が流入しなければ、韓国経済に最も大きな脅威となるおそれがある」と強調した。
中央日報の取材陣はノーベル経済学賞発表から1カ月ほど過ぎた2019年11月末、米ケンブリッジのハーバード大キャンパスを訪れてクレーマー教授に会った。忙しい日程のため約束は2回も延期された。しかしクレーマー教授はノーベル賞発表後に会う最初の韓国メディアだとし、中央日報とのインタビューの約束を守ろうとした。クレーマー教授はインタビュー中、記者よりも多くの質問をして韓国の開発政策を心配した。
--ノーベル賞の受賞は予想していたのか。
「全くしていなかった。受賞の発表があった日の朝、ロンドン政治経済大学(LSE)に自転車で移動していた。スカイプにスウェーデンからの緊急(urgently)と書かれたメッセージが表示されたが、ボイスフィッシングだと思って開かなかった。校内の情報技術部署からフィッシングに注意すべきという話を聞いていたからだ。その後、同僚に会うたびにおめでというという言葉を聞いて分かった」
--マイクロソフト(MS)創業者ビル・ゲイツの後援を受けるゲイツ教授(Gates professor)だが、受賞の喜びを分かち合ったのか。
「まだ直接連絡はしていないが、ゲイツも喜んだと聞いている」
クレーマー教授の研究室は経済学部の建物の2階の端にあった。研究室の前には教授とミーティングの約束をするために待つ学生3、4人がいた。約束時間に合わせて登場したクレーマー教授とともに事務室に入ると、各種書籍・書類が床に置かれていて歩けないほどだった。上着まで底に落ちていた。
--ひょっとして研究室の引っ越しを準備中か。
「そうではない(笑)。1カ月間ほど非常に忙しく、周囲を整理する余力がなかった。もともと整理整頓には全く素質がない」
--開発経済学は経済学界の非主流と見なされてきたが、学界の主流のハーバード大教授が貧困撲滅を研究することになった理由は。
「その間、経済学界では国内総生産(GDP)、通貨量など一般国民とやや距離があるテーマに関する研究が多かった。人類の福祉増進のためには開発途上国の貧困自体を減らすための実証的方法を研究すべきだと考えた」
ノーベル委員会は昨年10月の発表当時、クレーマー教授の受賞の背景について「過去20年間の実験的アプローチで開発経済学界を変えた」と説明した。
--実験的研究のために1990年代からアフリカのケニアに長期滞在したと聞いた。
「そうだ。アフリカの開発途上国が経済的に成長できない最も大きな原因は低い教育レベルのためだ。それでどのように生徒の出席率を高めるかを悩んだ。当時まで国際援助機関は生徒に無料教科書を提供したが、学習力は全く向上しなかった。当時、ある同僚の助言を聞いて生徒に駆虫薬を支援してみた。すると欠席率は25%減少した。生徒が学校に出てこなかったのは腸内の寄生虫感染のために体調が良くなかったからだ。駆虫薬を服用した生徒は成績が良くなり、結果的に成人になってからの所得が多い。5ドル程度の薬を提供しただけだが、国家経済がより速く成長(2018年、6.3%)することになった」
--貧困研究で韓国はどのような意味を持つのか。
「韓国は効果的な経済政策と教育への投資で早期に貧困から抜け出した代表的な国だ。機会があれば韓国の事例を深く研究して他の開発途上国に適用したい」
--韓国経済の高成長の秘訣は何か。
「教育だ。60年前まで韓国はアフリカのガーナと同じくらい貧しかった。今では立派な経済協力開発機構(OECD)加盟国だ。その背景には低所得層の生徒も十分に大学に進学できるようにした公教育システムがある。成長の秘訣には高い教育熱とこれを後押しした国家政策があったと考える」
--貧困を抜け出すには個人の努力がさらに重要ではないのか。
「そうではない。政府の役割が大きく、絶対的だ。1950年代の韓国人は今より怠けていて努力をしなかったため貧しかったのだろうか。そうではない。今の北朝鮮の人たちは貧困から抜け出そうという熱望が弱くて貧しいだろうか。これも違う。私を含めてほとんどすべての経済学者は国家の富は国民個人の性向ではなく政策で決まると考えている。これを後押しする最も確実な証拠は韓国と北朝鮮の所得の差だ」
<世界経済碩学診断>「少子化は韓国経済の最大の脅威…未来を率いる人材減る」(2)
この記事を読んで…