サッカーのために戦争をした国もあるが、南北サッカー試合がこのように政治的にも国際的にも大きな議論と波紋を呼んだことがあっただろうか。
15日、北朝鮮平壌(ピョンヤン)の金日成(キム・イルソン)競技場で行われた2022カタールワールドカップ(W杯) アジア地域予選H組第3戦のことだ。奇異な「3無(無中継・無観客・無得点)」という記録を残したその日の試合はサッカーでなく「戦闘」だったという。サッカーをスポーツでなく政治に転落させた「サッカーの政治化」が嘆かわしい。
気になって大韓サッカー協会が17日午後にホームページに載せたハイライト映像を見た。前・後半3分ずつ計6分の映像だった。誰もいない観客席のためか、選手とコーチ陣の叫ぶ声が競技場に響いた。重要な場面を見ると北側の奇襲シュートで危ない場面もあった。
サッカー協会担当記者にだけ公開された90分間の全体映像を見た中央日報のピ・ジュヨン・サッカー担当記者の評価は冷静だった。ピ記者は「当初サッカー協会は試合内容について五分五分だと記者に伝えたが、試合の外的要素を除いて試合だけを見ると、韓国が北朝鮮に4対6ほどで押されていた」と分析した。9月基準で国際サッカー連盟(FIFA)ランキングが113位の北朝鮮が37位の韓国を相手に善戦したということだ。
では、勝ち点3を得られなかった状況で、サッカー協会が北側の異常な行動を誇張したと見るべきだろうか。激しい競り合いと執拗な心理戦が予想されていた状況で、徹底的に対応できなかった韓国代表チームの準備不足を批判すべきだろうか。それよりもサッカーをサッカーとして尊重しなかった北朝鮮側の非理性と異常行動に重く見るのが常識的な反応であるようだ。
主将の孫興民(ソン・フンミン)選手は「けがをせず帰ってきただけでも幸い」と悪夢のような経験を伝えた。太永浩(テ・ヨンホ)元北朝鮮公使は「引き分けで数人が助かった。もし韓国が勝っていたとすれば孫興民の足が折れていただろう」と話した。
平壌指導部が演出した「政治サッカー」のために失望と傷も大きかったが、いくつかの真実と真相を確認する成果もあった。
1つ目、北朝鮮政権の非正常と猟奇的な姿を国民が改めて確認した。選手団が持ち込んだ食材3箱を没収した。ホテルに選手を事実上監禁した。競技場には突然、軍人を配置して険しい雰囲気を作った。サッカー協会のチェ・ヨンイル副会長は「無観客試合をはじめ、あきれる状況が続いたが、北側の説明は全くなかった」と伝えた。
2つ目、こうした異常な北朝鮮政権に振り回される文在寅(ムン・ジェイン)政権の屈辱的な態度をサッカーファンが実際に確認した。国際スポーツルールを破った北朝鮮の態度に抗議、批判するのが当然だが、金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官は北朝鮮側をかばうような発言して怒りを買った。無観客試合について「(南側)応援団を受け入れなかった状況で公正性の措置を取ったという解釈もある」と述べたのはあきれる。市民の怒りにもかかわらず、大統領は18日、北朝鮮と2032年南北共同オリンピック(五輪)を招致するという立場を繰り返し明らかにした。
こうした中、赤字状態のKBS(韓国放送公社)が数億ウォンの中継権料契約金を支払わされる危機にあるが、録画中継を突然中止して疑惑を招いている。表面的には画質が悪くて中継が難しいと理由を挙げた。KBSの録画中継取り消しで、ファンは29年ぶりに行われた南北サッカー対戦の場面を見られなくなり、不満が出ている。
KBSに対する国政監査である議員は北朝鮮に対する世論悪化を懸念してKBSが放送を中止にしたのではと問いただした。北朝鮮の反応を気にした政府が圧力を加えたという疑惑も提起された。サッカー協会の関係者は「(録画中継をするなという)政府の圧力はなかったと聞いている」と釈明した。
ファンの非難が続くと、サッカー協会は北朝鮮サッカー協会に責任を転嫁した。協会は17日、アジアサッカー連盟(AFC)に遺憾を表明する公文書を発送した。FIFA倫理綱領第14条(中立義務条項)とAFC競技運営マニュアル(差別なく訪問チーム支援)を根拠に北朝鮮サッカー協会の今回の処置は懲戒事案という意を伝えた。ただ、懲戒があるか、北側が謝罪するかは未知数だ。
ホーム試合は来年6月にソウルで開催される。興奮したサッカーファンは平壌でやられたことをそのままやり返せと話している。北朝鮮選手に頬を叩かれた黄仁範(ファン・インボム)は「ホーム試合でリベンジする」と誓った。
サッカーを政治で汚した者を痛快に懲らしめる方法がある。「政治サッカー」に対抗してスポーツマンシップと実力を遺憾なく発揮し、「本当のサッカー」で勝ち点3を獲得することだ。
チャン・セジョン論説委員
15日、北朝鮮平壌(ピョンヤン)の金日成(キム・イルソン)競技場で行われた2022カタールワールドカップ(W杯) アジア地域予選H組第3戦のことだ。奇異な「3無(無中継・無観客・無得点)」という記録を残したその日の試合はサッカーでなく「戦闘」だったという。サッカーをスポーツでなく政治に転落させた「サッカーの政治化」が嘆かわしい。
気になって大韓サッカー協会が17日午後にホームページに載せたハイライト映像を見た。前・後半3分ずつ計6分の映像だった。誰もいない観客席のためか、選手とコーチ陣の叫ぶ声が競技場に響いた。重要な場面を見ると北側の奇襲シュートで危ない場面もあった。
サッカー協会担当記者にだけ公開された90分間の全体映像を見た中央日報のピ・ジュヨン・サッカー担当記者の評価は冷静だった。ピ記者は「当初サッカー協会は試合内容について五分五分だと記者に伝えたが、試合の外的要素を除いて試合だけを見ると、韓国が北朝鮮に4対6ほどで押されていた」と分析した。9月基準で国際サッカー連盟(FIFA)ランキングが113位の北朝鮮が37位の韓国を相手に善戦したということだ。
では、勝ち点3を得られなかった状況で、サッカー協会が北側の異常な行動を誇張したと見るべきだろうか。激しい競り合いと執拗な心理戦が予想されていた状況で、徹底的に対応できなかった韓国代表チームの準備不足を批判すべきだろうか。それよりもサッカーをサッカーとして尊重しなかった北朝鮮側の非理性と異常行動に重く見るのが常識的な反応であるようだ。
主将の孫興民(ソン・フンミン)選手は「けがをせず帰ってきただけでも幸い」と悪夢のような経験を伝えた。太永浩(テ・ヨンホ)元北朝鮮公使は「引き分けで数人が助かった。もし韓国が勝っていたとすれば孫興民の足が折れていただろう」と話した。
平壌指導部が演出した「政治サッカー」のために失望と傷も大きかったが、いくつかの真実と真相を確認する成果もあった。
1つ目、北朝鮮政権の非正常と猟奇的な姿を国民が改めて確認した。選手団が持ち込んだ食材3箱を没収した。ホテルに選手を事実上監禁した。競技場には突然、軍人を配置して険しい雰囲気を作った。サッカー協会のチェ・ヨンイル副会長は「無観客試合をはじめ、あきれる状況が続いたが、北側の説明は全くなかった」と伝えた。
2つ目、こうした異常な北朝鮮政権に振り回される文在寅(ムン・ジェイン)政権の屈辱的な態度をサッカーファンが実際に確認した。国際スポーツルールを破った北朝鮮の態度に抗議、批判するのが当然だが、金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一部長官は北朝鮮側をかばうような発言して怒りを買った。無観客試合について「(南側)応援団を受け入れなかった状況で公正性の措置を取ったという解釈もある」と述べたのはあきれる。市民の怒りにもかかわらず、大統領は18日、北朝鮮と2032年南北共同オリンピック(五輪)を招致するという立場を繰り返し明らかにした。
こうした中、赤字状態のKBS(韓国放送公社)が数億ウォンの中継権料契約金を支払わされる危機にあるが、録画中継を突然中止して疑惑を招いている。表面的には画質が悪くて中継が難しいと理由を挙げた。KBSの録画中継取り消しで、ファンは29年ぶりに行われた南北サッカー対戦の場面を見られなくなり、不満が出ている。
KBSに対する国政監査である議員は北朝鮮に対する世論悪化を懸念してKBSが放送を中止にしたのではと問いただした。北朝鮮の反応を気にした政府が圧力を加えたという疑惑も提起された。サッカー協会の関係者は「(録画中継をするなという)政府の圧力はなかったと聞いている」と釈明した。
ファンの非難が続くと、サッカー協会は北朝鮮サッカー協会に責任を転嫁した。協会は17日、アジアサッカー連盟(AFC)に遺憾を表明する公文書を発送した。FIFA倫理綱領第14条(中立義務条項)とAFC競技運営マニュアル(差別なく訪問チーム支援)を根拠に北朝鮮サッカー協会の今回の処置は懲戒事案という意を伝えた。ただ、懲戒があるか、北側が謝罪するかは未知数だ。
ホーム試合は来年6月にソウルで開催される。興奮したサッカーファンは平壌でやられたことをそのままやり返せと話している。北朝鮮選手に頬を叩かれた黄仁範(ファン・インボム)は「ホーム試合でリベンジする」と誓った。
サッカーを政治で汚した者を痛快に懲らしめる方法がある。「政治サッカー」に対抗してスポーツマンシップと実力を遺憾なく発揮し、「本当のサッカー」で勝ち点3を獲得することだ。
チャン・セジョン論説委員
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