金正恩委員長のお気に入りのタバコとされる「建設」。韓国戦争直後の復興時期を意味する。
金正恩委員長は執権直後からタバコに格別の愛情を見せた。チェーンスモーキングを日常的に楽しみ、学校・幼稚園や病院でまでタバコを吸った。韓国メディアがこの問題を指摘すると労働党の宣伝・扇動パートは金正恩の喫煙シーンの写真からタバコを消してしまった。しかし、ゆらゆらと立ち上るタバコの煙は削除できず、露呈した。金正恩は10代の頃、スイスに早期留学してタバコを覚えたものと知られている。金正日の専属料理人を務めたことで知られている日本人の藤本健二は自身が発行した本『金正日の料理人』で「金正恩王子は10代半ばに酒とタバコを始めた。私のタバコをもらって吸うこともあった」と証言している。
金正恩が年配の労働党と軍部の幹部の前でタバコを吸うことについてカン・ドンワン教授は「若いリーダーの権威を高めるためのイメージ政治」と分析した。執権当時、28歳の青年指導者としてリーダーシップに対する疑問が内外で提起されると幹部の掌握を視覚的に見せようとする意図から喫煙シーンを演出したという話だ。今年2月、ハノイ米朝首脳会談のために列車で移動した金正恩は中国・南寧駅のプラットフォームに立ったままタバコを吸った。妹の金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長が当時灰皿を持って隣に立っている姿が確認され、話題になった。
カン・ドンワン教授の著書『北朝鮮のタバコ-プロパガンダとブランドの変奏曲』は過去7年間、中朝辺境地域などで収集した北朝鮮のタバコ200種を写真と一緒に紹介している。金正恩委員長が一時好んで吸っていたというタバコ「7.27」についてカン教授は「北朝鮮で7月27日は伝承節(1953年の休戦協定締結)を記念する日」とし「実際、タバコの箱に『1950~1953』と戦争期間が記入されている」と説明している。金正恩は最近になって「建設」という商標のタバコを吸う姿が確認されているが「1950年代の戦後復興建設のハンマーの音を象徴するブランド」とカン教授は分析した。
北朝鮮のタバコは特に体制の特性に関連付けられた名前が多い。「赤い星」というタバコは北朝鮮の国章に刻まれた星形に由来するが、いわゆる主体革命を象徴する。「衛星」は北朝鮮の長距離ミサイル開発を、「白頭山」と「天地」は北朝鮮政権樹立の根幹を意味する。「ひとつ」は北朝鮮中心の南北統一を強調したスローガンと歌に由来し、「故郷」は金日成(キム・イルソン)の生家である平壌・万景台(マンギョンデ)の故郷の家と金日成が故郷の家を思い歌ったという「思郷歌」を連想させるとカン教授は分析している。カン教授は「消費者の欲求が強調される資本主義とは異なり、北朝鮮のブランドは国家が注入しようとする政治思想が内包されるほかない」と指摘した。タバコをはじめとする商品のブランドが北朝鮮の体制を窺い知るひとつの窓になることができるという話だ。
イ・ヨンジョン/統一北朝鮮専門記者兼統一文化研究所長
「独自の生産タバコのブランドだけで数百種類」…北朝鮮は喫煙天国(1)
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