米国とロシアが8月2日に中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄し、その背景と波紋に関心が集中している。地上発射中距離ミサイルの生産と配備を禁止したINF条約は31年間、核軍備統制と冷戦解体の象徴として定着してきた。そのようなINFが失効し、いま米国とロシアの間には新START条約だけ残っている。それも2021年5月が期限だ。今後、核兵器競争の新冷戦時代が開かれるのだろうか。
INF条約が破棄され、米国は中距離ミサイルを生産して東アジアなどに配備する計画を明らかにしている。エスパー米国防長官は豪州訪問中の3日、アジア配備に言及したが、韓国と日本を訪問中は言葉を変えた。しかしすでにロシアは相当な中距離戦力を保有している。特にINF条約の当事者でなかった中国は相当な中距離核戦争力を確保している。これがINF条約破棄の要因になったという指摘も少なくない。
なら、INF条約の破棄で今後、北東アジア地域で地上発射中距離核ミサイル配備競争が起こるのだろうか。米国がアジアに中距離ミサイルを配備する場合、どこが最も可能性が高いのか。また、INF条約破棄以降の米国の思惑は何か。今後、米国・ロシア・中国が参加する新しい核軍縮交渉が行われるのか。こうした状況で北朝鮮の核の地位はどう変わるのか。北朝鮮はINF条約が破棄された状況をどう活用するのか。核兵器競争の新冷戦状況で韓国はどう対応すべきか。国内の専門家4人に質問した。
◆ホン・キュドク淑明女子大教授(元国防改革室長)
--INF廃棄条約が消えた原因をどこで探すべきなのか。
「INF条約破棄の原因から根本的に見なければいけない。中国が保有する射程距離2150-3000キロの東風-21(DF-21)や射程距離を4000キロまで増やした東風-26(DF-26)中距離弾道ミサイルは沖縄はもちろん、さらに遠い米国領グアムの米軍基地まで狙うことができる。中国が米国と同盟国の軍事基地を打撃する能力が日々高まっているという点が大きな原因を提供した。INF条約は基本的に冷戦時代に米国がソ連と締結し、ロシアがこれを継承してきた。こうした次元で米国は中国に対する本格的な対応策を考えないわけにはいかない立場だった」
--中国がINF条約破棄の決定的な原因ということか。
「結局、米国とロシアのINF脱退は中国の軍事的力量の成長と野心のためだ。米国がトランプ政権に入って中国を牽制し、中国の技術が米国に脅かす状況を遮断することを目標にしたと考える。米国としても今はオバマ政権時代とは違い、この部分に注目しないわけにはいかない」
--INF条約を破棄した米国は今後どう動くだろうか。
「米国は中国がさらに大きな脅威となるのを遮断するため、INF条約を破棄した後、地上発射中距離ミサイルを配備し、戦略核兵器を量産すると見る。2018年2月に出した核関連報告書にそのような部分が含まれている。2019年4月に米国防総省は核現代化計画を発表し、これを進行中だ。なぜこうした危険な政策を展開するかを考える必要がある。『核なき時代』を話したオバマ政権当時と比較すると、トランプ政権の核政策は危険で攻勢的だと非難されるかもしれない。しかしトランプ大統領の立場では、中国が新型大国論を展開し、もはや統制できる対象ではないと判断するため、こうした政策を展開せざるを得ない」
--米国は今後もずっと中国に攻勢的な態度を続けると思うか。
「米国はまず中国の経済的成長が軍事力に転換する過程を防ぐために貿易戦争をし、為替操作国に指定するなど、全方向で対処していると評価できる。もう一つは中国の軍事技術が米国に追いつけないよう格差を維持する側面がある。2016年末に米国で出た報告書にそのような傾向が見える。中国が非常に速いペースで米国を追撃している。米国は中国に追いつかれることはないとしても、南シナ海や米国が重要と考える領域で中国に対して圧倒的な優位を占めるのは事実上難しいと米国が自ら認めている。攻勢的にこれを遮断するというのが今の政策だ」
--米国が追求する韓日米協力も結局はそのような意図か。
「米国は中国牽制のために日本と積極的な協力を追求すると見ることができる。米国は中国と北朝鮮の弾道ミサイルも日本と共に対処する案を準備している。しかし韓国との協力は進まない状態だ。問題は、韓国が韓日米協力の弱い部分として映り、中国が韓国に強い圧力を加えている点だ。中国国営メディアの環球時報は最近、想像できないほど激しい言葉を韓国に向けて使っている」
--こうした状況で韓国はどう対処すべきか。
「米国と積極的に協力を強化することが最も重要だ。エスパー米国防長官も言及したが、韓国は米国が主導するミサイル防衛(MD)協力や共同対処案の摸索が難しい状況だ。問題は深刻だ。仮にINF条約を脱退した米国が東アジアで日本を中心に中国に反撃体制を構築し、中国の脅威に積極的に対処すれば、韓国政府はどうすべきかをめぐり選択の岐路に立つ」
--韓国が韓米協力を強化すれば、北朝鮮はどう出てくるだろうか。
「韓国がMDの部分を強化すれば、それがたとえ中国を対象にしたものであっても北朝鮮は自らに対する威嚇的要素と主張するだろう。最近7回の飛翔体試験をした北朝鮮は、日本の後方基地をミサイルで十分に攻撃することができる。射程距離4000キロのムスダン(北朝鮮の名称は火星10号)ならグアムまで攻撃できる。1300キロの距離の沖縄なら十分に攻撃できる。北朝鮮が最近試験発射したミサイルは低高度で最長630キロほど飛行したが、これを楕円形に発射すれば日本の後方基地まで射程距離に置くだろう。日本の立場で、非核化の解決が北朝鮮のミサイル能力や技術に触れない状態で進行すれば不安になるしかない。この場合、日本は誰の手を借りるだろうか。韓国政府もこれについて問題を提起していない状態だ。こうしたレベルで日本は米国との協力を強化し、自国を自ら防御するという立場だ。この場合、北朝鮮の立場では攻勢的なミサイル力量で恐怖心を与える余地が減ると考えるだろう。このように東アジアで米国の影響力が拡大することに対して北朝鮮は焦りを感じるかもしれない」
--韓国はどう対応すべきか。
「韓国がこのような事態にどこまで介入して米国と協力するかがカギとなる。エスパー米国防長官も韓日米の協力の重要性を強調した。韓国に警告性のメッセージを投じたわけだが、間違った行動をするなという趣旨と理解できる」
--北朝鮮の相次ぐミサイル試験発射はどう見るべきか。
「北朝鮮は最近、科学者103人を選定して昇進させ、称号も与えた。北朝鮮は厳しい状況の中でもミサイルに集中している。戦略的脆弱性を克服するためと考えられる。発射した7発のミサイルのうちイスカンデルMのように迎撃回避のために終末段階で再推進してプルアップするものもある。我々は弾道ミサイルと観測したが、北朝鮮が大口径操縦放射砲と発表した飛翔体も実際は弾道ミサイルを超える新しい放射砲だ。弾頭に子弾を搭載して一発で広い地域を攻撃できる地対地ミサイルも最後に見せた。北朝鮮ミサイルは技術革新を続けるが、我々は依然として3軸体制ばかり話している。北朝鮮ミサイルはクォンタムジャンプ、すなわち飛躍的な成長をするが、我々は予測可能な対応ばかりしているのではないかと懸念される。情報通信技術(ICT)の実質的な活用を通じて我々の抑止力を構築したり、北朝鮮の変化に対処する能力を同盟を通じて見せたりする必要がある。北朝鮮にスキを与えてはいけない。韓国は技術力でも経済的にも大きな国だ。『平和』を前に出して良い結果が出ることばかり望むのではなく、十分な抑止力で国民の生命と財産を保護できる土台を作る必要がある。このようなことが政府の優先順位にならなければいけない」
--北朝鮮に対してはさまざまオプションが求められるのでは。
「今すぐではなくても、すべてのオプションを開いて対策を立てなければいけない。あえて釘を刺さなくても戦術核を配備する案もある。米国防大の研究論文では米国と韓国の共同核開発の話も出ている。核共有の話もある。もし北朝鮮の核とミサイルが中間で迎撃できないほど危険なら、我々が技術を確保するまではすべてのオプションを開いておき、北朝鮮の挑発に対応して国民を十分に安心させられるよう措置を取るのが外交安保チームの基本的な任務であり責任だと考える」
--ミサイル能力を拡大する北朝鮮に対応する基本原則をどう考えているのか。
「安全保障上の脅威に対処して国民を保護するという強い意志がなければいけないが、先日も政府は北朝鮮の暴言に対して『こういうことはただ言っているだけで…真意が込められているとは考えられず…うまくいくことを望む気持ち』と話した。外交安保担当者はこのように話してはいけない。信頼(Credibility)と能力(Capability)は常に別に持っていてこそ国民を守ることができる。信頼は実際に能力を持ってこそ生じる。抑止力を確保するには、北朝鮮が我々の力量に対して大変なことになるという確信を与えなければいけない。北朝鮮の人々が韓国をむやみに攻撃または挑発すれば深刻な報復を受けるかもしれず、政権の安全と危機に決定的な打撃を受けるという確信を与えることが必要だ。もちろん大統領は平和局面を作るために努力しなければいけない。このために外交で努力するのもよいが、挑発にも備えて十分に対処できる力を持たなければいけない」
◆パク・ウォンゴン韓東大国際地域学科教授
--INF条約が破棄された原因をどう見ているのか。
「米国とロシアが中距離核戦争力(INF)廃棄条約を破棄したのは中国のためだと考える。米国が表面上主張しているのはロシアのINF違反だが、間違った話ではない。ロシアが開発したイスカンデルM地上発射中距離ミサイルは実際に1000キロ飛行するが、INFのために500キロと話している。名分はこうだが、実質的には中国が破棄の原因になったと見ている。ボルトン米大統領補佐官は2011年8月15日のウォールストリート(WSJ)への寄稿で、冷戦時代の条約(INF)が米国にマイナスとなっていて、米国に対する戦略的な脅威はINFの当事者ではなく中国・イラン・北朝鮮によるものだとし、このように公言した。ハリス駐韓米国大使も太平洋軍司令官時代の昨年2月、米議員に対し、もし中国がINFに縛られていれば保有する地上発射ミサイルの90%以上が禁止対象になると話した」
--東アジアで中距離ミサイルの価値は。
「米国がINF条約を破棄して射程距離500-5500キロの中距離ミサイルを開発するのは、アジア地域に対する掌握力を確保し、米国に対する中国の軍事的対応態勢を弱めるのが目的だ。米国と違って大洋艦隊が整っていない中国は地上に対艦ミサイルを配備する接近阻止・領域拒否(Anti Access/Area Denial=A2/AD)という西太平洋領域支配戦略を駆使してきた。米国は空母を活用して中国のA2/AD戦略を崩そうとしてきた。しかし中国がミサイル拡充を続け、核弾頭搭載が可能な中距離ミサイル東風-21(DF-21)まで配備し、米国は軍事的優位に立つことができなくなった。米国は一日でINF脱退を決めたのでなく、相当な期間にわたり中国の軍事力拡張を眺め、もうこれ以上はいけないと判断したと見ればよい」
--米国が中距離ミサイルを新しく開発するには時間がかかるのでは。
「INF条約を破棄して米国が中距離ミサイルをまた開発するという声が多いが、我々が知っておくべきことはINFは『地上型中距離核ミサイル』だけを防ぐものだ。米国が潜水艦、空母、巡洋艦、駆逐艦から発射するトマホーク巡航ミサイルはINFに該当しない。これを地上型にするのは難しいことではない。ただ、どこに配備するか、そしていつ配備するかが核心事案となる。INFは『中距離核戦争力』という意味で、もともと核ミサイルを意味した。今は通常兵器として話している。しかし米国が話す通常兵器の弾頭はいつでも核弾頭に変えることができる。カギはいつどこに配備するか、そして核弾頭を実際に配備するかどうかだが、私はこの懸案が依然として疑問視している」
--米国が地上発射中距離ミサイルを東アジアに配備する場合、どこになるだろうか。
「米国領のグアムを除いて挙げられるのが韓国・日本・豪州だが、韓国と日本は軍事的にそれほど必要でない。トマホークや空中・海上発射ミサイルがあり、あえて韓国と日本に配備する理由はない。必要性はむしろフィリピンなど東南アジア地域だ。それでも米国が韓国と日本を話すのは、両国は中国との距離が近くて大きな脅威となる可能性のためであり、象徴的な意味で話している。韓国と日本に配備した場合の軍事的効用性についてはもう一度考える必要がある」
--軍事的効用性とは別に政治的に東アジア配備は可能だろうか。
「我々がまた考えなければいけないのは、韓国・日本・豪州のすべてが結局これを受け入れることができないという点だ。仮に配備する場合、少し誇張して言えば中国は韓国との断交まで宣言するだろう。この問題はTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備問題とは次元が異なる。中国の国家アイデンティティーを変えない限り無理だろう。中国はヘゲモニー(覇権)国家を目指すが、これをあきらめない限り米国の中距離ミサイル配備を黙過しないだろう」
--米国が中国と核軍備統制交渉をするのは可能だろうか。
「米国が地上発射の中距離ミサイルを配備する場合、米国領、例えばグアムに配備するだけでもすべてカバーできる。米国がずっと強く話すのは、刀を抜いたからには何かしなければいけないからだろう。米国はまず一次的に中国と交渉する考えがあるようだ。中国を含む新しいINF廃棄条約を通じて新しく核軍備統制をする形で交渉の余地があると考える。しかし中国がこの提案を受ける可能性はないようだ。それで米国が最後の手段としてこれを東アジアに配備することは可能だ。しかし果たして韓国・日本・豪州までいくかは疑問だ」
--INF条約破棄は北朝鮮の核とどのような関連があるのか。
「北朝鮮の核とも緊密な関連がある。もし北朝鮮が交渉を蹴ってトランプ大統領が設定したレッドラインを越える場合、米国はこれを東アジアに配備する名分にできる。戦術核を搬入しなくても、抑止手段として中距離ミサイルを配備し、北核を抑止しようとする可能性がある。もちろん東アジアが簡単には受け入れないだろうが、米朝交渉が破綻した場合、米国は中距離を東アジアに配備しようとする可能性が高い。この問題を議論する時に注意すべきことは、配備は簡単な問題でないとの事実だ。エスパー米国防長官が8月初めに豪州でこれを話したが、後に言葉を少し変えた。実際に配備する可能性があると話す人もいるが、簡単な問題ではない。THAAD問題とは次元が異なるという点を強調する必要がある。またINF条約は地上発射型ミサイルだけを制限するが、中距離ミサイル全体を含めるように見えて誤って認識されるケースが多い」
--配備に対する政治的な反対もかなり強い。
「知っておくべき事例として、INF条約締結前に欧州でも似たことあった。1976年にソ連がSS20中距離核ミサイルを開発して東欧14カ所の発射場に実戦配備すると、米国が対応手段として1979年にパーシング2中距離弾道核ミサイルを開発してドイツに配備した。当時、西欧国家でも反対が激しかった。『反戦』『平和』を叫びながら西欧5カ国で反対の声が非常に強まった。その結果、配備まで5年かかった。SS20という実際の脅威があるにもかかわらず5年かかったが、我々はさらに難しいだろう」
--結局、INF条約につながったのでは。
「当時INF条約が可能だったのは、米国とソ連が戦略核兵器で互いに均衡状態だったからだ。お互い本土攻撃能力が似ていた。それで欧州に限定されて配備された中距離核戦争力の廃棄協定が可能だった。もちろんソ連にゴルバチョフという人物が現れたから可能だったという点もある。いま米国と中国は核戦争力で均衡状態ではない。核弾頭が中国は290個であるのに対し、米国は1600個だ。それで中国の立場では中距離核ミサイルを放棄することができない。現実的にそれを受け入れにくい構造的な問題だ」
「米ミサイル韓国配備ならTHAAD報復以上に…中国は断交も辞さない」(2)
INF条約が破棄され、米国は中距離ミサイルを生産して東アジアなどに配備する計画を明らかにしている。エスパー米国防長官は豪州訪問中の3日、アジア配備に言及したが、韓国と日本を訪問中は言葉を変えた。しかしすでにロシアは相当な中距離戦力を保有している。特にINF条約の当事者でなかった中国は相当な中距離核戦争力を確保している。これがINF条約破棄の要因になったという指摘も少なくない。
なら、INF条約の破棄で今後、北東アジア地域で地上発射中距離核ミサイル配備競争が起こるのだろうか。米国がアジアに中距離ミサイルを配備する場合、どこが最も可能性が高いのか。また、INF条約破棄以降の米国の思惑は何か。今後、米国・ロシア・中国が参加する新しい核軍縮交渉が行われるのか。こうした状況で北朝鮮の核の地位はどう変わるのか。北朝鮮はINF条約が破棄された状況をどう活用するのか。核兵器競争の新冷戦状況で韓国はどう対応すべきか。国内の専門家4人に質問した。
◆ホン・キュドク淑明女子大教授(元国防改革室長)
--INF廃棄条約が消えた原因をどこで探すべきなのか。
「INF条約破棄の原因から根本的に見なければいけない。中国が保有する射程距離2150-3000キロの東風-21(DF-21)や射程距離を4000キロまで増やした東風-26(DF-26)中距離弾道ミサイルは沖縄はもちろん、さらに遠い米国領グアムの米軍基地まで狙うことができる。中国が米国と同盟国の軍事基地を打撃する能力が日々高まっているという点が大きな原因を提供した。INF条約は基本的に冷戦時代に米国がソ連と締結し、ロシアがこれを継承してきた。こうした次元で米国は中国に対する本格的な対応策を考えないわけにはいかない立場だった」
--中国がINF条約破棄の決定的な原因ということか。
「結局、米国とロシアのINF脱退は中国の軍事的力量の成長と野心のためだ。米国がトランプ政権に入って中国を牽制し、中国の技術が米国に脅かす状況を遮断することを目標にしたと考える。米国としても今はオバマ政権時代とは違い、この部分に注目しないわけにはいかない」
--INF条約を破棄した米国は今後どう動くだろうか。
「米国は中国がさらに大きな脅威となるのを遮断するため、INF条約を破棄した後、地上発射中距離ミサイルを配備し、戦略核兵器を量産すると見る。2018年2月に出した核関連報告書にそのような部分が含まれている。2019年4月に米国防総省は核現代化計画を発表し、これを進行中だ。なぜこうした危険な政策を展開するかを考える必要がある。『核なき時代』を話したオバマ政権当時と比較すると、トランプ政権の核政策は危険で攻勢的だと非難されるかもしれない。しかしトランプ大統領の立場では、中国が新型大国論を展開し、もはや統制できる対象ではないと判断するため、こうした政策を展開せざるを得ない」
--米国は今後もずっと中国に攻勢的な態度を続けると思うか。
「米国はまず中国の経済的成長が軍事力に転換する過程を防ぐために貿易戦争をし、為替操作国に指定するなど、全方向で対処していると評価できる。もう一つは中国の軍事技術が米国に追いつけないよう格差を維持する側面がある。2016年末に米国で出た報告書にそのような傾向が見える。中国が非常に速いペースで米国を追撃している。米国は中国に追いつかれることはないとしても、南シナ海や米国が重要と考える領域で中国に対して圧倒的な優位を占めるのは事実上難しいと米国が自ら認めている。攻勢的にこれを遮断するというのが今の政策だ」
--米国が追求する韓日米協力も結局はそのような意図か。
「米国は中国牽制のために日本と積極的な協力を追求すると見ることができる。米国は中国と北朝鮮の弾道ミサイルも日本と共に対処する案を準備している。しかし韓国との協力は進まない状態だ。問題は、韓国が韓日米協力の弱い部分として映り、中国が韓国に強い圧力を加えている点だ。中国国営メディアの環球時報は最近、想像できないほど激しい言葉を韓国に向けて使っている」
--こうした状況で韓国はどう対処すべきか。
「米国と積極的に協力を強化することが最も重要だ。エスパー米国防長官も言及したが、韓国は米国が主導するミサイル防衛(MD)協力や共同対処案の摸索が難しい状況だ。問題は深刻だ。仮にINF条約を脱退した米国が東アジアで日本を中心に中国に反撃体制を構築し、中国の脅威に積極的に対処すれば、韓国政府はどうすべきかをめぐり選択の岐路に立つ」
--韓国が韓米協力を強化すれば、北朝鮮はどう出てくるだろうか。
「韓国がMDの部分を強化すれば、それがたとえ中国を対象にしたものであっても北朝鮮は自らに対する威嚇的要素と主張するだろう。最近7回の飛翔体試験をした北朝鮮は、日本の後方基地をミサイルで十分に攻撃することができる。射程距離4000キロのムスダン(北朝鮮の名称は火星10号)ならグアムまで攻撃できる。1300キロの距離の沖縄なら十分に攻撃できる。北朝鮮が最近試験発射したミサイルは低高度で最長630キロほど飛行したが、これを楕円形に発射すれば日本の後方基地まで射程距離に置くだろう。日本の立場で、非核化の解決が北朝鮮のミサイル能力や技術に触れない状態で進行すれば不安になるしかない。この場合、日本は誰の手を借りるだろうか。韓国政府もこれについて問題を提起していない状態だ。こうしたレベルで日本は米国との協力を強化し、自国を自ら防御するという立場だ。この場合、北朝鮮の立場では攻勢的なミサイル力量で恐怖心を与える余地が減ると考えるだろう。このように東アジアで米国の影響力が拡大することに対して北朝鮮は焦りを感じるかもしれない」
--韓国はどう対応すべきか。
「韓国がこのような事態にどこまで介入して米国と協力するかがカギとなる。エスパー米国防長官も韓日米の協力の重要性を強調した。韓国に警告性のメッセージを投じたわけだが、間違った行動をするなという趣旨と理解できる」
--北朝鮮の相次ぐミサイル試験発射はどう見るべきか。
「北朝鮮は最近、科学者103人を選定して昇進させ、称号も与えた。北朝鮮は厳しい状況の中でもミサイルに集中している。戦略的脆弱性を克服するためと考えられる。発射した7発のミサイルのうちイスカンデルMのように迎撃回避のために終末段階で再推進してプルアップするものもある。我々は弾道ミサイルと観測したが、北朝鮮が大口径操縦放射砲と発表した飛翔体も実際は弾道ミサイルを超える新しい放射砲だ。弾頭に子弾を搭載して一発で広い地域を攻撃できる地対地ミサイルも最後に見せた。北朝鮮ミサイルは技術革新を続けるが、我々は依然として3軸体制ばかり話している。北朝鮮ミサイルはクォンタムジャンプ、すなわち飛躍的な成長をするが、我々は予測可能な対応ばかりしているのではないかと懸念される。情報通信技術(ICT)の実質的な活用を通じて我々の抑止力を構築したり、北朝鮮の変化に対処する能力を同盟を通じて見せたりする必要がある。北朝鮮にスキを与えてはいけない。韓国は技術力でも経済的にも大きな国だ。『平和』を前に出して良い結果が出ることばかり望むのではなく、十分な抑止力で国民の生命と財産を保護できる土台を作る必要がある。このようなことが政府の優先順位にならなければいけない」
--北朝鮮に対してはさまざまオプションが求められるのでは。
「今すぐではなくても、すべてのオプションを開いて対策を立てなければいけない。あえて釘を刺さなくても戦術核を配備する案もある。米国防大の研究論文では米国と韓国の共同核開発の話も出ている。核共有の話もある。もし北朝鮮の核とミサイルが中間で迎撃できないほど危険なら、我々が技術を確保するまではすべてのオプションを開いておき、北朝鮮の挑発に対応して国民を十分に安心させられるよう措置を取るのが外交安保チームの基本的な任務であり責任だと考える」
--ミサイル能力を拡大する北朝鮮に対応する基本原則をどう考えているのか。
「安全保障上の脅威に対処して国民を保護するという強い意志がなければいけないが、先日も政府は北朝鮮の暴言に対して『こういうことはただ言っているだけで…真意が込められているとは考えられず…うまくいくことを望む気持ち』と話した。外交安保担当者はこのように話してはいけない。信頼(Credibility)と能力(Capability)は常に別に持っていてこそ国民を守ることができる。信頼は実際に能力を持ってこそ生じる。抑止力を確保するには、北朝鮮が我々の力量に対して大変なことになるという確信を与えなければいけない。北朝鮮の人々が韓国をむやみに攻撃または挑発すれば深刻な報復を受けるかもしれず、政権の安全と危機に決定的な打撃を受けるという確信を与えることが必要だ。もちろん大統領は平和局面を作るために努力しなければいけない。このために外交で努力するのもよいが、挑発にも備えて十分に対処できる力を持たなければいけない」
◆パク・ウォンゴン韓東大国際地域学科教授
--INF条約が破棄された原因をどう見ているのか。
「米国とロシアが中距離核戦争力(INF)廃棄条約を破棄したのは中国のためだと考える。米国が表面上主張しているのはロシアのINF違反だが、間違った話ではない。ロシアが開発したイスカンデルM地上発射中距離ミサイルは実際に1000キロ飛行するが、INFのために500キロと話している。名分はこうだが、実質的には中国が破棄の原因になったと見ている。ボルトン米大統領補佐官は2011年8月15日のウォールストリート(WSJ)への寄稿で、冷戦時代の条約(INF)が米国にマイナスとなっていて、米国に対する戦略的な脅威はINFの当事者ではなく中国・イラン・北朝鮮によるものだとし、このように公言した。ハリス駐韓米国大使も太平洋軍司令官時代の昨年2月、米議員に対し、もし中国がINFに縛られていれば保有する地上発射ミサイルの90%以上が禁止対象になると話した」
--東アジアで中距離ミサイルの価値は。
「米国がINF条約を破棄して射程距離500-5500キロの中距離ミサイルを開発するのは、アジア地域に対する掌握力を確保し、米国に対する中国の軍事的対応態勢を弱めるのが目的だ。米国と違って大洋艦隊が整っていない中国は地上に対艦ミサイルを配備する接近阻止・領域拒否(Anti Access/Area Denial=A2/AD)という西太平洋領域支配戦略を駆使してきた。米国は空母を活用して中国のA2/AD戦略を崩そうとしてきた。しかし中国がミサイル拡充を続け、核弾頭搭載が可能な中距離ミサイル東風-21(DF-21)まで配備し、米国は軍事的優位に立つことができなくなった。米国は一日でINF脱退を決めたのでなく、相当な期間にわたり中国の軍事力拡張を眺め、もうこれ以上はいけないと判断したと見ればよい」
--米国が中距離ミサイルを新しく開発するには時間がかかるのでは。
「INF条約を破棄して米国が中距離ミサイルをまた開発するという声が多いが、我々が知っておくべきことはINFは『地上型中距離核ミサイル』だけを防ぐものだ。米国が潜水艦、空母、巡洋艦、駆逐艦から発射するトマホーク巡航ミサイルはINFに該当しない。これを地上型にするのは難しいことではない。ただ、どこに配備するか、そしていつ配備するかが核心事案となる。INFは『中距離核戦争力』という意味で、もともと核ミサイルを意味した。今は通常兵器として話している。しかし米国が話す通常兵器の弾頭はいつでも核弾頭に変えることができる。カギはいつどこに配備するか、そして核弾頭を実際に配備するかどうかだが、私はこの懸案が依然として疑問視している」
--米国が地上発射中距離ミサイルを東アジアに配備する場合、どこになるだろうか。
「米国領のグアムを除いて挙げられるのが韓国・日本・豪州だが、韓国と日本は軍事的にそれほど必要でない。トマホークや空中・海上発射ミサイルがあり、あえて韓国と日本に配備する理由はない。必要性はむしろフィリピンなど東南アジア地域だ。それでも米国が韓国と日本を話すのは、両国は中国との距離が近くて大きな脅威となる可能性のためであり、象徴的な意味で話している。韓国と日本に配備した場合の軍事的効用性についてはもう一度考える必要がある」
--軍事的効用性とは別に政治的に東アジア配備は可能だろうか。
「我々がまた考えなければいけないのは、韓国・日本・豪州のすべてが結局これを受け入れることができないという点だ。仮に配備する場合、少し誇張して言えば中国は韓国との断交まで宣言するだろう。この問題はTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備問題とは次元が異なる。中国の国家アイデンティティーを変えない限り無理だろう。中国はヘゲモニー(覇権)国家を目指すが、これをあきらめない限り米国の中距離ミサイル配備を黙過しないだろう」
--米国が中国と核軍備統制交渉をするのは可能だろうか。
「米国が地上発射の中距離ミサイルを配備する場合、米国領、例えばグアムに配備するだけでもすべてカバーできる。米国がずっと強く話すのは、刀を抜いたからには何かしなければいけないからだろう。米国はまず一次的に中国と交渉する考えがあるようだ。中国を含む新しいINF廃棄条約を通じて新しく核軍備統制をする形で交渉の余地があると考える。しかし中国がこの提案を受ける可能性はないようだ。それで米国が最後の手段としてこれを東アジアに配備することは可能だ。しかし果たして韓国・日本・豪州までいくかは疑問だ」
--INF条約破棄は北朝鮮の核とどのような関連があるのか。
「北朝鮮の核とも緊密な関連がある。もし北朝鮮が交渉を蹴ってトランプ大統領が設定したレッドラインを越える場合、米国はこれを東アジアに配備する名分にできる。戦術核を搬入しなくても、抑止手段として中距離ミサイルを配備し、北核を抑止しようとする可能性がある。もちろん東アジアが簡単には受け入れないだろうが、米朝交渉が破綻した場合、米国は中距離を東アジアに配備しようとする可能性が高い。この問題を議論する時に注意すべきことは、配備は簡単な問題でないとの事実だ。エスパー米国防長官が8月初めに豪州でこれを話したが、後に言葉を少し変えた。実際に配備する可能性があると話す人もいるが、簡単な問題ではない。THAAD問題とは次元が異なるという点を強調する必要がある。またINF条約は地上発射型ミサイルだけを制限するが、中距離ミサイル全体を含めるように見えて誤って認識されるケースが多い」
--配備に対する政治的な反対もかなり強い。
「知っておくべき事例として、INF条約締結前に欧州でも似たことあった。1976年にソ連がSS20中距離核ミサイルを開発して東欧14カ所の発射場に実戦配備すると、米国が対応手段として1979年にパーシング2中距離弾道核ミサイルを開発してドイツに配備した。当時、西欧国家でも反対が激しかった。『反戦』『平和』を叫びながら西欧5カ国で反対の声が非常に強まった。その結果、配備まで5年かかった。SS20という実際の脅威があるにもかかわらず5年かかったが、我々はさらに難しいだろう」
--結局、INF条約につながったのでは。
「当時INF条約が可能だったのは、米国とソ連が戦略核兵器で互いに均衡状態だったからだ。お互い本土攻撃能力が似ていた。それで欧州に限定されて配備された中距離核戦争力の廃棄協定が可能だった。もちろんソ連にゴルバチョフという人物が現れたから可能だったという点もある。いま米国と中国は核戦争力で均衡状態ではない。核弾頭が中国は290個であるのに対し、米国は1600個だ。それで中国の立場では中距離核ミサイルを放棄することができない。現実的にそれを受け入れにくい構造的な問題だ」
「米ミサイル韓国配備ならTHAAD報復以上に…中国は断交も辞さない」(2)
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