◆ライフジャケットを着て授業
生存水泳授業中の相当部分はライフジャケットを着て浮くか、移動することを学んで終わる。もちろん必要な勉強だ。ライフジャケットの正しい着用方法を知り、水に飛び込んだときにジャケットが脱げないようにする方法も身につけなければならない。だが、そこで終わることはできない。ライフジャケットがない場合を考えなければならない。
今月14日、ソウル蚕室(チャムシル)の漢江(ハンガン)プール前の漢江で行われた生存水泳教育の現場に行ってみた。プールではなく川で実際の緊急状況を仮定して行う教育だ。5月20日からスタートして9月27日まで続くこの教育に、ソウル市教育庁の予算5億ウォン(約4600万円)が策定された。ソウル市の小学校・中学校の申請を受けて教育を行う。昨年は4400人が授業を受け、今年は6000人程度が参加するものと予想される。
この日午前にはS小学校5年生44人が参加した。児童はライフジャケットを着て入水すること、数人がライフジャケット来て浮かんだ状態で丸い円を作ること(救助隊の目につきやすくするため)等の生存術を学んだ。緊急状況を迎えたときに役立つ教育内容だった。だが、ライフジャケットを着なかった状態での教育はただの1秒も実施されなかった。「チョ・ヒヨン教育長の公約によって導入された、実際の状況に備えた教育」というソウル市教育庁の説明は「半分」だけが正しいものだった。その上、ソウル市の児童がプールではない、川や海で正式な授業として生存方法を学べる場所はここが唯一だ。6000人はソウル市全体の小・中学生の1%にも満たない。
44人の児童のうち7人はこの日の授業に参加しなかった。水に入るのが怖い(ライフジャケットを着ていた)、体の調子が良くないなどが不参加の理由だった。ある児童は「そのまま沈みそう」と話した。これら児童は教育長の隣に座って他の児童が教育を受ける様子を見学した。
◆でたらめ教育プログラム
教育部が市・道教育庁に提供した「水泳教育マニュアル」に生存水泳教育内容も記載されている。小学校3・4年生の標準プログラムは計6段階で構成されている。これによれば、仰向けになって浮くことができ、5メートルを移動して、構造物をつかむことができたら教育目標が達成する。ライフジャケットを着た状況とそうでない状況は区分されていない。ふだん着姿で水に落ちた時、どのように対処すべきかも教育内容に含まれていない。明知(ミョンジ)大学のユ・ドンギュン教授(スポーツレジャー教育専攻)は「韓国の生存水泳教育は何をどのように教えるべきかに対する研究や準備が全く整っていない状態で始まった。そのため授業を行う講師によって内容と方法がまちまちだ。専門家の意見を集約して具体的な教育内容と方法を提供する標準プログラムを作ろうと教育当局者に何回も掛け合ったが耳を傾けてくれない」と話した。韓国海洋安全協会教育委員長であるユ教授は「海外ではこのようにはしない。私たちはそのまま表面をまねするだけ」と指摘した。
◆外国ではどのように行っているか
3年前、韓国EBS(韓国教育放送公社)が作った映像「生存水泳をご存知ですか?」は「オランダ・ドイツ・フランス・日本など多くの国々の子どもたちは普段着ている服と靴を履いて水泳を学ぶ」と説明する。この映像はYouTube(ユーチューブ)でも閲覧できる。ユ・ドンギュン教授は「日本では生存水泳という用語の代わりに着衣泳(普段着を着たまま泳ぐ)という単語を使う。突然の災難・災害状況に備えるためだ。遭難時に靴と衣服は浮力を得る道具として使うことができる」と説明した。
最近、韓国でも生存水泳授業の時に服を着た状態で水に入るようにする場合が増えている。ところが学校では普段着ではなく撥水力に優れた「ラッシュガード」を準備するように指導する。
授業時間にも大きな違いがある。英国・ドイツ・日本などでは小学校の時に2年以上毎週または隔週で水泳教育を受けている。韓国では小学校3・4年生の時に年に10時間(そのうち4時間は生存水泳)が教育過程で決まった授業時間だ。ソウル市教育庁の担当奨学士(教育専門公務員)は「韓国の水泳教育がまともに行われているとは言い難い。水泳施設や予算不足などの環境が整っていないため仕方ない面がある」と説明した。趙慶泰(チョ・ギョンテ)議員(自由韓国党)は昨年の国政監査の時に「我が国の小学校プール普及率は1%台だが、日本は90%を超える。国民に生存水泳を学ばせるためにはまずプールを増やさなければならない」と主張した。
社会的問題が発生する→他の国ではどのようにするのか調べてみる→同じような制度を作る→準備もせずに施行してみたところ表面は似ているが中身が違う→「まねだけしている」という批判が提起されれば「環境のせい」にする→国民は「ないよりはましではないか」と言い訳をする。おなじみのパターンではないか。
セウォル号惨事の後、水難で人命が犠牲になれば全国が「パニック」状態になる。外交部長官が外国の現場に飛んで行って、大統領が救助隊の急派を指示する。ところがもともと私たちがやろうと誓った「安全を守る」ことは十分に行われていない。韓国の悲しい現実だ。
イ・サンオン/論説委員
【コラム】韓国は今も「生存のための水泳」を教えていない(1)
生存水泳授業中の相当部分はライフジャケットを着て浮くか、移動することを学んで終わる。もちろん必要な勉強だ。ライフジャケットの正しい着用方法を知り、水に飛び込んだときにジャケットが脱げないようにする方法も身につけなければならない。だが、そこで終わることはできない。ライフジャケットがない場合を考えなければならない。
今月14日、ソウル蚕室(チャムシル)の漢江(ハンガン)プール前の漢江で行われた生存水泳教育の現場に行ってみた。プールではなく川で実際の緊急状況を仮定して行う教育だ。5月20日からスタートして9月27日まで続くこの教育に、ソウル市教育庁の予算5億ウォン(約4600万円)が策定された。ソウル市の小学校・中学校の申請を受けて教育を行う。昨年は4400人が授業を受け、今年は6000人程度が参加するものと予想される。
この日午前にはS小学校5年生44人が参加した。児童はライフジャケットを着て入水すること、数人がライフジャケット来て浮かんだ状態で丸い円を作ること(救助隊の目につきやすくするため)等の生存術を学んだ。緊急状況を迎えたときに役立つ教育内容だった。だが、ライフジャケットを着なかった状態での教育はただの1秒も実施されなかった。「チョ・ヒヨン教育長の公約によって導入された、実際の状況に備えた教育」というソウル市教育庁の説明は「半分」だけが正しいものだった。その上、ソウル市の児童がプールではない、川や海で正式な授業として生存方法を学べる場所はここが唯一だ。6000人はソウル市全体の小・中学生の1%にも満たない。
44人の児童のうち7人はこの日の授業に参加しなかった。水に入るのが怖い(ライフジャケットを着ていた)、体の調子が良くないなどが不参加の理由だった。ある児童は「そのまま沈みそう」と話した。これら児童は教育長の隣に座って他の児童が教育を受ける様子を見学した。
◆でたらめ教育プログラム
教育部が市・道教育庁に提供した「水泳教育マニュアル」に生存水泳教育内容も記載されている。小学校3・4年生の標準プログラムは計6段階で構成されている。これによれば、仰向けになって浮くことができ、5メートルを移動して、構造物をつかむことができたら教育目標が達成する。ライフジャケットを着た状況とそうでない状況は区分されていない。ふだん着姿で水に落ちた時、どのように対処すべきかも教育内容に含まれていない。明知(ミョンジ)大学のユ・ドンギュン教授(スポーツレジャー教育専攻)は「韓国の生存水泳教育は何をどのように教えるべきかに対する研究や準備が全く整っていない状態で始まった。そのため授業を行う講師によって内容と方法がまちまちだ。専門家の意見を集約して具体的な教育内容と方法を提供する標準プログラムを作ろうと教育当局者に何回も掛け合ったが耳を傾けてくれない」と話した。韓国海洋安全協会教育委員長であるユ教授は「海外ではこのようにはしない。私たちはそのまま表面をまねするだけ」と指摘した。
◆外国ではどのように行っているか
3年前、韓国EBS(韓国教育放送公社)が作った映像「生存水泳をご存知ですか?」は「オランダ・ドイツ・フランス・日本など多くの国々の子どもたちは普段着ている服と靴を履いて水泳を学ぶ」と説明する。この映像はYouTube(ユーチューブ)でも閲覧できる。ユ・ドンギュン教授は「日本では生存水泳という用語の代わりに着衣泳(普段着を着たまま泳ぐ)という単語を使う。突然の災難・災害状況に備えるためだ。遭難時に靴と衣服は浮力を得る道具として使うことができる」と説明した。
最近、韓国でも生存水泳授業の時に服を着た状態で水に入るようにする場合が増えている。ところが学校では普段着ではなく撥水力に優れた「ラッシュガード」を準備するように指導する。
授業時間にも大きな違いがある。英国・ドイツ・日本などでは小学校の時に2年以上毎週または隔週で水泳教育を受けている。韓国では小学校3・4年生の時に年に10時間(そのうち4時間は生存水泳)が教育過程で決まった授業時間だ。ソウル市教育庁の担当奨学士(教育専門公務員)は「韓国の水泳教育がまともに行われているとは言い難い。水泳施設や予算不足などの環境が整っていないため仕方ない面がある」と説明した。趙慶泰(チョ・ギョンテ)議員(自由韓国党)は昨年の国政監査の時に「我が国の小学校プール普及率は1%台だが、日本は90%を超える。国民に生存水泳を学ばせるためにはまずプールを増やさなければならない」と主張した。
社会的問題が発生する→他の国ではどのようにするのか調べてみる→同じような制度を作る→準備もせずに施行してみたところ表面は似ているが中身が違う→「まねだけしている」という批判が提起されれば「環境のせい」にする→国民は「ないよりはましではないか」と言い訳をする。おなじみのパターンではないか。
セウォル号惨事の後、水難で人命が犠牲になれば全国が「パニック」状態になる。外交部長官が外国の現場に飛んで行って、大統領が救助隊の急派を指示する。ところがもともと私たちがやろうと誓った「安全を守る」ことは十分に行われていない。韓国の悲しい現実だ。
イ・サンオン/論説委員
【コラム】韓国は今も「生存のための水泳」を教えていない(1)
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