『東京ローズ（Ｔｏｋｙｏ　Ｒｏｓｅ）』。第２次世界大戦当時、米軍が駐屯した太平洋一帯に宣伝放送をした日本人アナウンサーだ。

皮肉にも米軍が付けたこの愛称は『東京のバラ』という美しい意味とは異なり、戦争と背信・汚名などの醜悪な陰謀で汚されている。


当時２０人で構成された東京ローズは誘惑的な声で米軍兵士の脱営を策動し、士気を低下させるための宣伝工作に乗り出した。


米軍はこれを娯楽番組程度に見ていた。だが東京ローズは終戦後、戦犯に問われ、険しい人生を生きていった。

東京ローズは果たして敵を心理戦で誘惑した罪人か、それとも戦争の犠牲者か。

ヒストリーチャンネルはバイオグラフィー特集『東京ローズ－アイバ戸栗』編で、メンバーで活動したアイバ戸栗（８６）の一生を追跡した。

アイバ戸栗は裕福な日本人父母の間に生まれた１．５世のアメリカ人。米ロサンゼルスで生まれたアイバはＵＣＬＡに進学し、医者になることを夢見た。

しかし両親が卒業プレゼントとしてくれた日本旅行が彼女の運命を変えてしまった。

１９４１年日本を訪問した彼女は、当時の日本の真珠湾攻撃で日米感情が最悪に達すると、米国に帰れない状況になった。

生活が厳しくなった彼女は生計を立てるため「ラジオ東京」の女性アナウンサーとして活動を始めた。

終戦後４年が過ぎた４９年、戦犯を断罪するという米国世論により、彼女は反逆罪で７年の懲役を宣告された。

服役後、彼女は名誉を回復するため米国政府と２０年間闘った。

ついに７６年、特赦を受けて米国市民権を取り戻した彼女は、現在、シカゴで商店を営みながら生活している。