SNSに掲載された「トゥンカロン」の写真。クラストの間にフィリングをたっぷり入れてつくる。(写真=インスタグラム)
韓国では最近、「トゥンカロン」(中身が充実したマカロン、韓国語で太っているという意味の「トゥントゥンハダ」が語源)が人気だ。フランスから渡ってきた正統派マカロンは丸いクラスト2枚と、その間にはさむフィリングの比率は1:1:1だ。横から見ると同じ厚さの三層構造になっていることが確認できる。だが、最近韓国で流行っている「トゥンカロン」はクラストサンドの間のフィリングの厚さが3~4倍にもなる。SNSでよく見かける写真も親指と人差し指を最大限広げてトゥンカロンの途方もない分厚さを確認させる種類のものが多い。現在、イメージ中心で疎通するインスタグラムで、ハッシュタグについた#トゥンカロンで検索すると、24万件の掲示物を確認することができる。
このため、一方ではトゥンカロンについて「インスタグラマブル」アイテムを追う国籍不明のスイーツという批判もある。元祖フランスも驚くほど変形したデザインの上に、食べる用途ではなく写真撮影用スイーツで人気ということだ。
本来マカロンは卵白と砂糖を混ぜた生地で作った小さくて丸い菓子であるクラストの間にジャムやガナッシュ、バタークリームなどのフィリングをはさみ、サンドイッチのようにして食べる。サクサクしたクラスト、口当たりがよくしっとりした多種多様な甘いフィリングなどが一体化して、一口でいろいろな食感を楽しむことができるのが特徴だ。言ってみれば、マカロンの独特の三層構造を一つ一つ吟味するのが本来の食べ方だが、フィリングを3~4倍の分量で入れたトゥンカロンは元祖マカロンのエレガントな味を失ってしまったということだ。一口で口に放り込むことができる1:1:1の比率を守らなかった巨大な図体も、正統マカロンを愛する人々が気に食わない部分だ。ツイッタリアンの@naegai****は「こんなに分厚いものどうやって食べるの? かじったら中身が全部飛び出してしまうのでは」と、トゥンカロンを口にしたときにフィリングが飛び出すイラストを描いて添えたりもした。
だがトゥンカロンを歓迎する人々の意見も侮れない。会社員のイ・ウンミさんは「もともとスイーツは目でも食べるというほどビジュアルが重要だが、トゥンカロンはその点を最大化しているので十分に目を楽しませてくれる」と話した。特別なビジュアルとその味のため、創意的なフィリングを作り出すという点を高く評価する人々もいる。韓国の餅によく使われるきな粉をたっぷりとまぶした「インジョルミ(韓国風きなこ餅)トゥンカロン」が代表的だ。一般のマカロンと同じ価格〔1個およそ2000ウォン(約196円)台〕でいろいろなフィリングを楽しめる場合があるので、むしろコストパフォマンスが高く、数個食べれば一食の食事として充分だという意見も一般的だ。
『小さいパン屋がおいしい』の著者であり、「パン妖精」というペンネームで有名なキム・へジュン氏は「韓国のインスタトレンドが生んだ新しいアイテム」としながら「事実、製菓は『1グラムの美学』と呼ばれるほど精巧な味が重要だが、トゥンカロンは甘すぎるため味をうんぬんするスイーツではない」と話した。また「スイーツ文化を楽しむようになった韓国の若者層の欲求とSNSトレンドがひとつになり、もう少し特別なものを求めるようになった結果」とし「流行を楽しみつくしたら、人々は再び正統クラシックを求めるようになるだろう」と付け加えた。
韓国の食の流行は流れが非常にスピーディーで正統と変形の間にいつも雑音が多い。ただし、多様性を楽しむようになったという点では喜ばしいことだ。
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