この報告書は日本列島に衝撃を与えた。2カ月後の7月、全国知事会は「少子化非常事態宣言」をした。宣言は悲壮だった。「日本全体の衰退に向けた壮大なシナリオができあがりつつある」と表現した。「東京が人口減少の蟻地獄」という発言も出てきた。安倍首相は同年9月、内閣府にまち・ひと・しごと創生本部を設置した。職場が人を呼び、人がまた仕事を引き込む町をつくるという意味の組織だ。本部長は安倍首相が務め、全閣僚が参加した。人口と地方を最優先課題にするという決意だった。安倍首相は同月、内閣改造で内閣府特命担当大臣(地方創生担当)を新設し、政敵の石破茂元自民党幹事長を任命した。石破氏は地方創生の伝導師になった。全国を回って国民運動を行った。キャッチフレーズは「地方創生が日本創生」だった。11月には地方創生法を制定し、年末には地方創生長期ビジョンと5カ年総合戦略(2015-19年)を出した。類例のない速度戦だった。
長期ビジョンと総合戦略は明確だった。長期ビジョンは出生率(現在1.43)1.8への向上と2060年の人口(現在1億2633万人)1億人確保を掲げた。総合戦略は民間の重要評価指標(KPI)を導入した。年間10万人の東京転入解消、若者向け地方雇用30万人創出などを提示した。地方創生の具体的な内容は網羅された。外国人観光客消費増大案から子どもの農山漁村体験強化にいたるまで。観光は地方創生の核心だ。2015年には地方自治体が長期ビジョンと総合戦略を出した。義務ではないが99%が参加した。中央は総論を、地方は各論を担当した。
長期ビジョンと総合戦略は明確だった。長期ビジョンは出生率(現在1.43)1.8への向上と2060年の人口(現在1億2633万人)1億人確保を掲げた。総合戦略は民間の重要評価指標(KPI)を導入した。年間10万人の東京転入解消、若者向け地方雇用30万人創出などを提示した。地方創生の具体的な内容は網羅された。外国人観光客消費増大案から子どもの農山漁村体験強化にいたるまで。観光は地方創生の核心だ。2015年には地方自治体が長期ビジョンと総合戦略を出した。義務ではないが99%が参加した。中央は総論を、地方は各論を担当した。
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