「私は会談場を蹴とばして出てきたのではない。会談は外交的に終わった」。トランプ米大統領は先月28日、ベトナム・ハノイで開催された2回目の米朝首脳会談で合意文署名に失敗したのは、決して会談の決裂を意味するわけではないということをこのような言葉で表した。そして会談再開の扉を開いておいた。「今後もずっと解決を図っていく。会談の再開は早い時期になるかもしれず、そうでないかもしれない」。
しかしトランプ大統領のいかなる釈明も、世界の人々の期待と関心が集中したハノイ会談が決裂した事実を隠すことはできない。厳しく言えば、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とトランプ大統領のハノイ会談は「外交的惨事」で終わった。会談決裂の原因は複合的だが、整理すれば(1)準備不足(2)米国国内政治の作用--と要約できる。
トランプ大統領とポンペオ国務長官は会談が決裂した後、米国が要求する寧辺(ヨンビョン)プラスアルファは出さずに対北朝鮮制裁の全面的解除を要求したため受け入れられなかったと述べた。しかし北朝鮮の李容浩(イ・ヨンホ)外相の言葉は違った。「我々は専門家の立ち会いの下で寧辺核施設を解体することに対する相応の措置として、制裁の全面的解除でなく民生関連部門の解除を要求した」。金英哲(キム・ヨンチョル)-ポンペオ、キム・ヒョクチョル-ビーガンのラインがこのような核心的争点の調整をあいまいにして最終決定を両首脳の談判に任せたのが禍根ということだ。
ちょうどこの時点に米国の国内政治が流れ込んだ。両首脳が向き合って座った先月27日、1万3400キロ離れた米下院監督改革委員会は、トランプ大統領の元顧問弁護士だったコーエン被告を証人に呼んで「「トランプ公聴会」を開いた。コーエン被告はトランプ大統領を人種主義者、嘘つき、詐欺師、犯罪者として非難した。米メディアと世論の関心はハノイより公聴会に向かった。トランプ大統領の体はハノイにあったが、心はワシントンに向いていた。公聴会の波紋は金正恩委員長と向き合ったトランプ大統領の行動を制約するしかなかった。トランプ大統領の反対者(naysayers)はハノイ会談を撃沈する(torpedo)のに成功した。外交は国内政治の延長という言葉の典型的な事例だ。
起きたしまったことはどうしようもない。問題はこれからだ。幸い、金正恩委員長もトランプ大統領も平昌(ピョンチャン)以前の戦争危機状況に戻るにはあまりにも前に進んだ。トランプ大統領も韓米連合軍事訓練を再開する考えがなく、戦略資産の韓半島(朝鮮半島)展開もないという言葉で交渉再開の余地を残した。帰国する専用機からは文在寅(ムン・ジェイン)大統領に電話をかけて仲裁を要請した。
北朝鮮も米国を刺激する言動を自制している。労働新聞は1日、決裂したハノイ会談を「新たな対面を継続する生産的な対話だった」と論評した。しかしハノイ会談が北朝鮮を経済強国にする画期的なステップとして宣伝してきた金正恩政権が会談決裂について説得力のある釈明をするのは容易でないだろう。会談再開のための対話が始まるとしても、今度は米朝ともに慎重な態度をとるため長い時間と多くの努力が必要になるはずだ。
危機は機会という言葉があるが、ここで文大統領が登場する舞台が開かれる。ハノイ惨事の最も大きな流れ弾を受けたのが南北関係、特に文大統領の「新韓半島体制」だ。ハノイ合意→文在寅・トランプ会談→金正恩のソウル答礼訪問→終戦宣言・平和協定→米朝関係正常化へと好循環する大きな構図の最初からつまずいた。文大統領の強靭な仲裁努力が求められる時だ。トランプ大統領によると、金正恩委員長は米国が寧辺以外の北朝鮮核施設を詳細に把握している事実に驚いたという。その一つが寧辺の3倍規模にのぼる平安南道カンソンのウラン濃縮施設だと、ポンペオ長官は話した。仲裁をする文大統領や交渉再開を向かう北朝鮮代表は「寧辺以外」を議論の対象に含めなければいけない。
韓米首脳会談と南北首脳会談は必須だ。前者は時期をよく考える必要がある。ワシントンがトランプ大統領を攻撃する砲煙に包まれ、トランプ反対勢力がハノイの勝利で勢いづく今の時期ではない。後者の場合は金正恩委員長がソウルを訪れる順序だが、必要なら文大統領がまた平壌(ピョンヤン)に行くことも考慮すべきだろう。トランプ大統領に反対する勢力の成功が国内保守陣営を鼓舞する可能性を念頭に置いて、疎通にもよりいっそう多くの努力を傾けなければいけない。この時点で最も必要なのは「ゆっくり急げ(Festina Lente)」の知恵だ。これがハノイの貴重な教訓だ。
金永熙(キム・ヨンヒ)/元中央日報論説委員
しかしトランプ大統領のいかなる釈明も、世界の人々の期待と関心が集中したハノイ会談が決裂した事実を隠すことはできない。厳しく言えば、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とトランプ大統領のハノイ会談は「外交的惨事」で終わった。会談決裂の原因は複合的だが、整理すれば(1)準備不足(2)米国国内政治の作用--と要約できる。
トランプ大統領とポンペオ国務長官は会談が決裂した後、米国が要求する寧辺(ヨンビョン)プラスアルファは出さずに対北朝鮮制裁の全面的解除を要求したため受け入れられなかったと述べた。しかし北朝鮮の李容浩(イ・ヨンホ)外相の言葉は違った。「我々は専門家の立ち会いの下で寧辺核施設を解体することに対する相応の措置として、制裁の全面的解除でなく民生関連部門の解除を要求した」。金英哲(キム・ヨンチョル)-ポンペオ、キム・ヒョクチョル-ビーガンのラインがこのような核心的争点の調整をあいまいにして最終決定を両首脳の談判に任せたのが禍根ということだ。
ちょうどこの時点に米国の国内政治が流れ込んだ。両首脳が向き合って座った先月27日、1万3400キロ離れた米下院監督改革委員会は、トランプ大統領の元顧問弁護士だったコーエン被告を証人に呼んで「「トランプ公聴会」を開いた。コーエン被告はトランプ大統領を人種主義者、嘘つき、詐欺師、犯罪者として非難した。米メディアと世論の関心はハノイより公聴会に向かった。トランプ大統領の体はハノイにあったが、心はワシントンに向いていた。公聴会の波紋は金正恩委員長と向き合ったトランプ大統領の行動を制約するしかなかった。トランプ大統領の反対者(naysayers)はハノイ会談を撃沈する(torpedo)のに成功した。外交は国内政治の延長という言葉の典型的な事例だ。
起きたしまったことはどうしようもない。問題はこれからだ。幸い、金正恩委員長もトランプ大統領も平昌(ピョンチャン)以前の戦争危機状況に戻るにはあまりにも前に進んだ。トランプ大統領も韓米連合軍事訓練を再開する考えがなく、戦略資産の韓半島(朝鮮半島)展開もないという言葉で交渉再開の余地を残した。帰国する専用機からは文在寅(ムン・ジェイン)大統領に電話をかけて仲裁を要請した。
北朝鮮も米国を刺激する言動を自制している。労働新聞は1日、決裂したハノイ会談を「新たな対面を継続する生産的な対話だった」と論評した。しかしハノイ会談が北朝鮮を経済強国にする画期的なステップとして宣伝してきた金正恩政権が会談決裂について説得力のある釈明をするのは容易でないだろう。会談再開のための対話が始まるとしても、今度は米朝ともに慎重な態度をとるため長い時間と多くの努力が必要になるはずだ。
危機は機会という言葉があるが、ここで文大統領が登場する舞台が開かれる。ハノイ惨事の最も大きな流れ弾を受けたのが南北関係、特に文大統領の「新韓半島体制」だ。ハノイ合意→文在寅・トランプ会談→金正恩のソウル答礼訪問→終戦宣言・平和協定→米朝関係正常化へと好循環する大きな構図の最初からつまずいた。文大統領の強靭な仲裁努力が求められる時だ。トランプ大統領によると、金正恩委員長は米国が寧辺以外の北朝鮮核施設を詳細に把握している事実に驚いたという。その一つが寧辺の3倍規模にのぼる平安南道カンソンのウラン濃縮施設だと、ポンペオ長官は話した。仲裁をする文大統領や交渉再開を向かう北朝鮮代表は「寧辺以外」を議論の対象に含めなければいけない。
韓米首脳会談と南北首脳会談は必須だ。前者は時期をよく考える必要がある。ワシントンがトランプ大統領を攻撃する砲煙に包まれ、トランプ反対勢力がハノイの勝利で勢いづく今の時期ではない。後者の場合は金正恩委員長がソウルを訪れる順序だが、必要なら文大統領がまた平壌(ピョンヤン)に行くことも考慮すべきだろう。トランプ大統領に反対する勢力の成功が国内保守陣営を鼓舞する可能性を念頭に置いて、疎通にもよりいっそう多くの努力を傾けなければいけない。この時点で最も必要なのは「ゆっくり急げ(Festina Lente)」の知恵だ。これがハノイの貴重な教訓だ。
金永熙(キム・ヨンヒ)/元中央日報論説委員
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