韓国の潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長(75)は今年でちょうど外交官生活50年目になる年だと語った。頂点にも上がったが、潘氏はその分大きな挫折も経験した。
1970年2月に外交部に入ってから、金泳三(キム・ヨンサム)政府の青瓦台(チョンワデ、大統領府)外交安保首席(96年)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の大統領外交補佐官・外交通商部長官(2004~06年)を経て国連事務総長(2007~16年)を終えた。2017年初めには、一時大統領候補に出馬という“浮気“はしたものの、途中で意志を引っ込めて民間外交にカムバックした。2017年5月、延世(ヨンセ)大学アッペンツェラー館グローバル社会貢献院の名誉院長に就任して以来、半官半民の活動を行っている。国際オリンピック委員会(IOC)倫理委員長、博鰲(ボアオ)アジアフォーラム(アジア地域経済フォーラム)理事長、グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)議長などを務めている。
今月3日、延世大学事務室で潘氏に会い、韓国外交について尋ねた。潘氏は数回にわたって「大統領の役割」を強調した。強制労役賠償判決以降、危うい韓日関係に関連して「歴史問題を今のように外交関係の前面に置けば、大統領が何もできなくなる」とし「大統領の決断が必要だ」と強調した。外交部内の米国・日本担当者が疎外されているというと、「特定政権の特殊な目標を遂行するために投入された職業外交官に対し、次の政府が責任を問うのは望ましくない」とし「長期的に韓国外交の信義を落とす」と懸念をにじませた。
--新年早々から韓米関係に対する憂慮が大きい。在韓米軍防衛費分担金の交渉局面で、ワシントンではドナルド・トランプ大統領を中心に在韓米軍撤収の話が絶えず出ているということだが。
「防衛費分担金交渉は円満かつ迅速に解決するほどよい。防衛費が在韓米軍の将来と少しでも関連した印象を与える必要はなく、与えてもだめだ。韓米同盟はただの同盟ではない。価値を共有する価値同盟だ。米国は全世界に30万人ほどの海外駐屯軍を置いているが、その中でも韓半島(朝鮮半島)は危険要素が多い」
--与党の一部では防衛費を引き上げるべきではないと強く主張している。
「大統領が確実なガイドラインを与えなければならない。大統領以外には誰も決めることはできない」
--米国からは現在5年単位の防衛費分担金交渉サイクルを1年に縮小しようとの提案があったという。
「一年中、交渉だけしようということだ。防衛費分担金交渉は、私が米州局長(現・北米局長)時代だった1990年代初頭にスタートした。韓国経済が成長すると、米国がその時初めて分担しようと言ってきた。防衛費問題が争点として残るのは多方面から望ましくない。ペースを上げるべきだ。今の交渉局面を見ると、実務陣の思うように交渉できる時は過ぎた。大統領の決断が残った」
◆巧妙な北、昔の手法そのまま
--北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が新年の挨拶で米国にボールを渡した。核査察、核リストの提供など、米国が要求してきた事案はすべて抜けていた。
「金委員長の新年の挨拶を見て真っ先に思ったのが『昔のタクティック(tactic・作戦)』はそのままだということ。90年代から北朝鮮問題を直・間接的に扱ってきたが、北朝鮮は自分たちが必要な時はすべてのものを差し出すかのように話してきた。91年12月、南北が非核化共同宣言をした時、世界が拍手を送ったではないか。だが、当時、北朝鮮は国際的に共産主義が崩れて難しい時期であり、その時期が過ぎ去ると1年で元に戻った。今年の新年の挨拶では『新たな道を模索することができる』という一種の脅迫までした」
--金委員長は先代の交渉スタイルを踏襲する反面、トランプ大統領は今までなかった新しいスタイルの米国大統領だ。2回目の米朝会談の展望は。
「自信を誇示するスタイルのトランプ大統領は2回目の会談をめぐって悩みが多いに違いない。1回目の会談はトランプ本人があちこち自慢をしたが批判的な見解が多かった。それでもそれ自体は歴史的な意味があった。だが、2回目の首脳会談が実質的な結果を出すことができなければ国際社会の批判には耐え難い。トランプ大統領が(国内政治の困難の中で)局面転換のために北朝鮮問題を妥結しようとすることが最も危険だ。われわれにとっても望ましくない。急げば北朝鮮のペースに巻き込まれてしまいかねない。首脳レベルの『トップダウン(top_down)』も重要だが、構成を整えた後は北朝鮮の実務ラインが動くべきだが、いま北朝鮮は時間稼ぎをしている。スティーブン・ビーガン国務省北朝鮮特別代表は崔善姫(チェ・ソンヒ)外務省副相にもう10回は会っているべきだが、一度も会えていない。北朝鮮は巧妙だ」
--突破口は何か。
「今までの北朝鮮の交渉形態を見ると、変わっていない。(金委員長が新年の挨拶で言及した)金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地再開は国連安保理の制裁が解除されなければ難しいが、まるで文在寅(ムン・ジェイン)大統領に恩恵を与えるようにボールを渡した。昨年3月、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領安保室長が北朝鮮特使として〔平壌(ピョンヤン)で〕金委員長に会った時、韓米間の例年的な軍事訓練に対して『理解する』を述べていたが、最近は韓米合同軍事演習の中止や米戦略資産の撤収などの条件を掲げている。懸念すべきことだ」
<危機の韓国外交、元老に問う>潘基文氏「韓日外交、歴史を前面に出せば何もできない」(2)
1970年2月に外交部に入ってから、金泳三(キム・ヨンサム)政府の青瓦台(チョンワデ、大統領府)外交安保首席(96年)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の大統領外交補佐官・外交通商部長官(2004~06年)を経て国連事務総長(2007~16年)を終えた。2017年初めには、一時大統領候補に出馬という“浮気“はしたものの、途中で意志を引っ込めて民間外交にカムバックした。2017年5月、延世(ヨンセ)大学アッペンツェラー館グローバル社会貢献院の名誉院長に就任して以来、半官半民の活動を行っている。国際オリンピック委員会(IOC)倫理委員長、博鰲(ボアオ)アジアフォーラム(アジア地域経済フォーラム)理事長、グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)議長などを務めている。
今月3日、延世大学事務室で潘氏に会い、韓国外交について尋ねた。潘氏は数回にわたって「大統領の役割」を強調した。強制労役賠償判決以降、危うい韓日関係に関連して「歴史問題を今のように外交関係の前面に置けば、大統領が何もできなくなる」とし「大統領の決断が必要だ」と強調した。外交部内の米国・日本担当者が疎外されているというと、「特定政権の特殊な目標を遂行するために投入された職業外交官に対し、次の政府が責任を問うのは望ましくない」とし「長期的に韓国外交の信義を落とす」と懸念をにじませた。
--新年早々から韓米関係に対する憂慮が大きい。在韓米軍防衛費分担金の交渉局面で、ワシントンではドナルド・トランプ大統領を中心に在韓米軍撤収の話が絶えず出ているということだが。
「防衛費分担金交渉は円満かつ迅速に解決するほどよい。防衛費が在韓米軍の将来と少しでも関連した印象を与える必要はなく、与えてもだめだ。韓米同盟はただの同盟ではない。価値を共有する価値同盟だ。米国は全世界に30万人ほどの海外駐屯軍を置いているが、その中でも韓半島(朝鮮半島)は危険要素が多い」
--与党の一部では防衛費を引き上げるべきではないと強く主張している。
「大統領が確実なガイドラインを与えなければならない。大統領以外には誰も決めることはできない」
--米国からは現在5年単位の防衛費分担金交渉サイクルを1年に縮小しようとの提案があったという。
「一年中、交渉だけしようということだ。防衛費分担金交渉は、私が米州局長(現・北米局長)時代だった1990年代初頭にスタートした。韓国経済が成長すると、米国がその時初めて分担しようと言ってきた。防衛費問題が争点として残るのは多方面から望ましくない。ペースを上げるべきだ。今の交渉局面を見ると、実務陣の思うように交渉できる時は過ぎた。大統領の決断が残った」
◆巧妙な北、昔の手法そのまま
--北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が新年の挨拶で米国にボールを渡した。核査察、核リストの提供など、米国が要求してきた事案はすべて抜けていた。
「金委員長の新年の挨拶を見て真っ先に思ったのが『昔のタクティック(tactic・作戦)』はそのままだということ。90年代から北朝鮮問題を直・間接的に扱ってきたが、北朝鮮は自分たちが必要な時はすべてのものを差し出すかのように話してきた。91年12月、南北が非核化共同宣言をした時、世界が拍手を送ったではないか。だが、当時、北朝鮮は国際的に共産主義が崩れて難しい時期であり、その時期が過ぎ去ると1年で元に戻った。今年の新年の挨拶では『新たな道を模索することができる』という一種の脅迫までした」
--金委員長は先代の交渉スタイルを踏襲する反面、トランプ大統領は今までなかった新しいスタイルの米国大統領だ。2回目の米朝会談の展望は。
「自信を誇示するスタイルのトランプ大統領は2回目の会談をめぐって悩みが多いに違いない。1回目の会談はトランプ本人があちこち自慢をしたが批判的な見解が多かった。それでもそれ自体は歴史的な意味があった。だが、2回目の首脳会談が実質的な結果を出すことができなければ国際社会の批判には耐え難い。トランプ大統領が(国内政治の困難の中で)局面転換のために北朝鮮問題を妥結しようとすることが最も危険だ。われわれにとっても望ましくない。急げば北朝鮮のペースに巻き込まれてしまいかねない。首脳レベルの『トップダウン(top_down)』も重要だが、構成を整えた後は北朝鮮の実務ラインが動くべきだが、いま北朝鮮は時間稼ぎをしている。スティーブン・ビーガン国務省北朝鮮特別代表は崔善姫(チェ・ソンヒ)外務省副相にもう10回は会っているべきだが、一度も会えていない。北朝鮮は巧妙だ」
--突破口は何か。
「今までの北朝鮮の交渉形態を見ると、変わっていない。(金委員長が新年の挨拶で言及した)金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地再開は国連安保理の制裁が解除されなければ難しいが、まるで文在寅(ムン・ジェイン)大統領に恩恵を与えるようにボールを渡した。昨年3月、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領安保室長が北朝鮮特使として〔平壌(ピョンヤン)で〕金委員長に会った時、韓米間の例年的な軍事訓練に対して『理解する』を述べていたが、最近は韓米合同軍事演習の中止や米戦略資産の撤収などの条件を掲げている。懸念すべきことだ」
<危機の韓国外交、元老に問う>潘基文氏「韓日外交、歴史を前面に出せば何もできない」(2)
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