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【コラム】不幸の兆候、そして呪われた国=韓国

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
英国のロマン主義の詩人ウィリアム・ブレイクは産業革命が残して行った荒廃した現実を苦痛の中で過ごした。ブレイクは幼児労働に動員された幼い煙突清掃夫の涙が堕落した教会に恐ろしい事態をもたらすのを見たし、若い売春婦の呪いが結婚式の馬車を霊柩車にするのを見た。「会う人ごとに」「悲嘆の痕跡」を見たブレイクは誰より「兆候」をよく読み取る詩人だった。人々はそれを「予言」と呼んだが、兆候は予言ではなく「前兆」だ。ブレイクは「純粋の前兆」という詩で「飼い主の家の門の前で餓死した犬がその国の滅亡を予告する」と書いた。最近フランスで行われている黄色いチョッキのデモは深刻な貧富格差と不平等がどのように一国家の亀裂をもたらすようになるのかをよく見せている兆候だ。南欧州と北アフリカの多くの国家が新たな「チョッキ」の出現を恐れているのは、自分たちの内部にすでに出ている不幸の兆しを見ているためだ。

最近泰安(テアン)火力発電所でコンベヤーベルトに挟まって体が分離して亡くなったある非正規職の青年労働者の恐ろしい事故はそれ自体が韓国社会の深刻で不安な兆候だ。この事件には韓国社会が持つ多様な矛盾が重層的に重なっている。非正規職の問題は言うまでもなく、経済大国の覆いの下に隠された獣のような労働現場、費用削減を目的に成り立つ数多くの違法行為、人間よりも利潤を重視する浅はかな資本、ただ生計のためだけに死の恐怖に自身の体をさらさなければならない数多くの労働者の現実がこの事故の中にそのまま溶け込んでいる。

問題は、兆候がもうすぐやって来る現実の不吉な予告という自覚の不在だ。報道によると2010年以降、西部発電所ではすでに12人が事故で命を失っているという。だから今回の事態は「前兆」や「兆候」を越えて、すでに繰り返されている「現実」であり、これまで韓国社会が悲劇の多様な兆候を完全に無視してきたことを見せている事件だ。それではこれから私たちの前にはどれほどさらにぞっとする現実が繰り広げられるのだろうか。「(ヨンギュンが)同僚に話した。はやく辞めろと。君たちもここで働いて死ぬのを見たくないと。本当に見たくない。本当に見たくない。(死ぬのは)うちの息子1人で十分だ。息子のようなあの子たちの死を見たくない。我が国を変えたい。私は我が国を呪う」という事故にあった労働者の母親の絶叫は今後もいくらでも起き得る数多くの死に対する最も悲しい弔の鐘の音だ。


2018年12月13日付の「イーデイリー」は次の通り報じている。「泰安火力発電所は政府から『無災害事業場』認証を受け、元請けである西部発電は無災害事業場だと政府から5年間産業災害保険料22億ウォン(約2億2000万円)余りを減免された。職員にも無災害報奨金として4770万ウォンを支給した」。これが事実ならば私たちは兆候の中からやって来る悲劇を読み取りあらかじめ備える国家ではなく、偽の安全、偽りの幸福の消しゴムで恐ろしいことこの上ない兆候をむやみに消し、不幸を量産する国家を所有しているのだ。

「飼い主の家の門の前で餓死した犬がその国の滅亡を予告する」というブレイクの宣言は詩人の虚辞ではない。世界のすべてのパーツはつながり合っていて、個体の不幸はほとんどが関係の産物だ。飼い主はよく世話したのに、その家の門前で犬が餓死することはない。動物の命を軽視する飼い主の態度が実に「国の滅亡を予告」する兆候である理由こそがそれだ。関係が存在に先行する。英国の詩人ジョン・ダンの言葉通り「誰しもそれ自体で完全に立っているのではない」。誰かの死は「私」という存在の「減少」を意味する。他者の死はすなわち自分の一部の死である。「誰が為に鐘は鳴る/其は汝の為に鳴る」。

オ・ミンソク/文学評論家・檀国(タングク)大学教授(英文学)



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