知人から近頃入試シーズンにソウルで出回っているという笑い話を聞いた。質問は「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の勉強法は?」。答えは「ブックばかり見る」だ。しかし、本を熱心に読みふけるという意味ではないという。『「北」にばかり熱心に取り組む』という意味だという(韓国語では「ブック」と「北」が同音)。経済や青瓦台(チョンワデ、大統領府)の規律が崩れつつあっても、ひたすら北朝鮮に没頭しているという、皮肉を込めた風刺だろう。もっとも米国の官民からは「韓国は北朝鮮の弁護士や広報会社のようにふるまっている」(ヘリテージ財団ブルース・クリングナー専任研究員、15日VOA対談)という言葉が何気なく出ているのだから冗談だと聞き流してばかりもいられない。
ことしの年末、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は「熱い胸」でソウル答礼訪問を訴えた文大統領のラブコールを「冷たい頭」で一蹴してしまった。大きく得るものがなかったためだろう。もし金正恩委員長がソウルを答礼訪問していたら今頃韓国社会は再び浮足立ち分裂していただろう。雇用の絶壁や規制改革などの「南」の真のイシューは埋もれていただろう。文大統領が17日に就任から19カ月で開いたという「初めて」の拡大経済長官会議もなかったかもしれない。金正恩委員長に感謝の気持ちを抱いたのは私だけではないだろう。
実際、本当に首を長くして北朝鮮を眺めているのは米国のビーガン対北朝鮮政策特別代表だろう。任命されて4カ月経ったが北朝鮮のカウンターパートの崔善姫(チェ・ソンヒ)北朝鮮外務省副相の影も見られずにいるという話だ。会いに行っても、「手紙」を送り電話をかけても、まったく便りがない。そのようなビーガン代表が本日(19日)ソウルを訪問する。韓国のカウンターパートである李度勲(イ・ドフン)外交部韓半島平和交渉本部長とは実に18回目の会談だ。0対18。誰か見ても正常ではない。対北朝鮮交渉代表なのか、対韓国交渉代表なのか混乱するほどだ。
原因提供者は他でもないトランプ大統領だ。トランプ大統領はシンガポール朝米首脳会談で韓米同盟の根幹になってきた韓米連合軍事演習を「挑発的な戦争ゲーム」と話した。また「いつか駐韓米軍を撤収させるだろう」と語った。過去数十年間、北朝鮮が録音機を再生したかのように繰り返した話だ。それを米国の大統領が話した。韓米政府が収拾に出たが金正恩委員長の頭の中には「私たちを理解している(あるいはだましやすい)交渉パートナーはトランプ大統領しかいない」という信頼が刻みこまれた。第2次首脳会談の前にわずらわしくビーガン代表のような「原則主義者」らと代表級会談をしたところで文句ばかり言われるのは明らかだと見ている。「直談判主義者」のトランプとの直接交渉を望む理由だ。ノーベル平和賞を狙うトランプ大統領も内心直談判を望んでいる。「偉大な交渉家」は自分1人で充分だと信じているためだ。ビーガン代表が疎外されるしかない理由だ。
だが、大統領1人の考えのために「正しくない」方向に流れはしないのが米国の本当の力だ。大統領が急ぐからといって、相手(北朝鮮)が拒否したからといって、「非核化の前の制裁緩和禁止」「FFVD(最終的かつ完全に検証された非核化)」という原則を曲げたり慌てたりしない。「北」ばかり見ているという韓国とは違い米国は「原則」を見ている。18対0の非常事態に耐え抜く力だ。北朝鮮が勝てないゲームである理由だ。おそらく北朝鮮はこれを読めずに機会を逃したのかもしれない。
1980年代にソ連との交渉当時、レーガン大統領が「信じよ。だが検証せよ(Trust but verify)」と言った。だが、北朝鮮問題を扱う米国の今の気流は違う。「信じるな。ゆえに検証せよ(Don‘t trust therefore verify)」(ガルーチ元特使)だ。厳然たる違いがある。この流れは当分の間韓国もどうにかして変えることはできないだろう。2019年、韓国の対米・対朝政策に新たに反映しなければならない大前提だ。
キム・ヒョンギ/ワシントン総局長
ことしの年末、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は「熱い胸」でソウル答礼訪問を訴えた文大統領のラブコールを「冷たい頭」で一蹴してしまった。大きく得るものがなかったためだろう。もし金正恩委員長がソウルを答礼訪問していたら今頃韓国社会は再び浮足立ち分裂していただろう。雇用の絶壁や規制改革などの「南」の真のイシューは埋もれていただろう。文大統領が17日に就任から19カ月で開いたという「初めて」の拡大経済長官会議もなかったかもしれない。金正恩委員長に感謝の気持ちを抱いたのは私だけではないだろう。
実際、本当に首を長くして北朝鮮を眺めているのは米国のビーガン対北朝鮮政策特別代表だろう。任命されて4カ月経ったが北朝鮮のカウンターパートの崔善姫(チェ・ソンヒ)北朝鮮外務省副相の影も見られずにいるという話だ。会いに行っても、「手紙」を送り電話をかけても、まったく便りがない。そのようなビーガン代表が本日(19日)ソウルを訪問する。韓国のカウンターパートである李度勲(イ・ドフン)外交部韓半島平和交渉本部長とは実に18回目の会談だ。0対18。誰か見ても正常ではない。対北朝鮮交渉代表なのか、対韓国交渉代表なのか混乱するほどだ。
原因提供者は他でもないトランプ大統領だ。トランプ大統領はシンガポール朝米首脳会談で韓米同盟の根幹になってきた韓米連合軍事演習を「挑発的な戦争ゲーム」と話した。また「いつか駐韓米軍を撤収させるだろう」と語った。過去数十年間、北朝鮮が録音機を再生したかのように繰り返した話だ。それを米国の大統領が話した。韓米政府が収拾に出たが金正恩委員長の頭の中には「私たちを理解している(あるいはだましやすい)交渉パートナーはトランプ大統領しかいない」という信頼が刻みこまれた。第2次首脳会談の前にわずらわしくビーガン代表のような「原則主義者」らと代表級会談をしたところで文句ばかり言われるのは明らかだと見ている。「直談判主義者」のトランプとの直接交渉を望む理由だ。ノーベル平和賞を狙うトランプ大統領も内心直談判を望んでいる。「偉大な交渉家」は自分1人で充分だと信じているためだ。ビーガン代表が疎外されるしかない理由だ。
だが、大統領1人の考えのために「正しくない」方向に流れはしないのが米国の本当の力だ。大統領が急ぐからといって、相手(北朝鮮)が拒否したからといって、「非核化の前の制裁緩和禁止」「FFVD(最終的かつ完全に検証された非核化)」という原則を曲げたり慌てたりしない。「北」ばかり見ているという韓国とは違い米国は「原則」を見ている。18対0の非常事態に耐え抜く力だ。北朝鮮が勝てないゲームである理由だ。おそらく北朝鮮はこれを読めずに機会を逃したのかもしれない。
1980年代にソ連との交渉当時、レーガン大統領が「信じよ。だが検証せよ(Trust but verify)」と言った。だが、北朝鮮問題を扱う米国の今の気流は違う。「信じるな。ゆえに検証せよ(Don‘t trust therefore verify)」(ガルーチ元特使)だ。厳然たる違いがある。この流れは当分の間韓国もどうにかして変えることはできないだろう。2019年、韓国の対米・対朝政策に新たに反映しなければならない大前提だ。
キム・ヒョンギ/ワシントン総局長
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