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【時視各角】「我々が滅びた道に進む」=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
文在寅(ムン・ジェイン)政権を誕生させた一番の貢献者は朴槿恵(パク・クネ)前大統領だ。李明博(イ・ミョンバク)元大統領があれほど避けたかった朴槿恵政権発足を眺めなければならなかったように。米国も違うところはない。ウォーターゲート事件でどん底に陥った共和党は、道徳性を掲げた若手政治家カーターに苦杯をなめた。カーターの純真さに真っ青になった有権者はすぐに老獪なレーガンに変えた。前政権の欠点が政権交代のエネルギーになるのは大統領制民主主義の特徴だ。

注目すべきことは朴槿恵前大統領は保守政権を繋いだという事実だ。李明博元大統領の人気が落ちるにつれて反射利益は野党指導者の文在寅ではなく与党内の野党、朴槿恵に向かったからだ。大きな勢力として、執権者の主要政策にいちいちブレーキをかけながらも被害者イメージを築き、代案として席を固めていった。だが、執権後は違った。親朴は金武星(キム・ムソン)議員ら自分たちと対称点に立った要人を覇権で押さえつけた。

文政権を見つめる韓国党から「我々が滅びたルートをそのまま踏襲している」という言葉が出るのは、与党要人が倒れていく様子が朴政権の親朴“鑑別”に似ていると見ているためだ。主流も、非主流もあるのが政党だ。さまざまな異なる考えがぶつかる場所だ。だが、今の政府与党には親文純血主義が覇権となった様相だ。政治的意図があるのか、でなければ本当に偶然の連続なのかは分からないが、とにかく非文はほとんど淘汰された。


だからといって親文ですっきりと整理されたかといえばそうでもない。論争の本質は、李在明(イ・ジェミョン)京畿(キョンギ)知事夫人の選挙法違反疑惑事件「ヘギョングン金氏」だった。「ヘギョングン金氏」は李知事の支持者だとするツイッターユーザーで、SNS上で李知事を支持する内容とともに李知事の政敵や文大統領、その関係者を誹謗中傷するコメントを投稿していたとされ、警察が調査をしていた。だが、ヘギョングン金氏事件は迷宮に陥り、李知事は支葉問題として扱われた。起訴だけでも厳しく追求していた民主党は尻つぼみになった。文大統領の息子の特典就職疑惑に関連していたという疑いは晴れないままだ。警察も、派を作って争っていた支持者も戸惑った。二重でこんがらがった。

積弊捜査であれば死神のような検察だ。ここを掘ってダメならあっちをひっくり返し、それでも出てこなければさらに過去のことまで掘るというやり方で徹底的に暴く。前政府の国家情報院と国軍機務司令部による世論操作介入政治コメント事件がそうだった。ところがヘギョングン金氏事件はそこまでの熱気が感じられない。明明白白で厳正かつ透明であってこそ疑いは消える。その時その時でものさしが違うように映れば、不可解に思う気持ちだけが大きくなる。しかも警察はスモーキング・ガン(確証)を言っていたではないか。

事実、前政権の没落は親朴論争ではなく、まさにここから始まった。大統領と競ったり、大統領に突っかかっていた人々が次々と失脚していくのは偶然かもしれない。文大統領は野党代表時代、秘密の多い当時与党を向かって「完全に封じられて息が詰まる不通政権」と猛非難した。そう言いながら過去と同じような一方通行が茶飯事だ。最近では青瓦台(チョンワデ、大統領府)特別監査班が全員交代させられたが、大統領からはいいとも悪いとも説明が一言もない。それに大統領は質問する記者に腹を立てた。

すべて「私だけが正しくて相手は間違いだ」という考えのためだ。だからKTX事故で退いたKORAIL(韓国鉄道公社)社長は前政権のせいだとごり押しした。自分の地域、自分の集団、自分の勢力の利益だけを追求しようと互いに絡み合って手足が縛られたのが過去政府の政治だった。セヌリ党は第20代総選挙を控え、「ある瞬間に一瞬で消える」というコピーを掲げて本当に消えると、その後は「百年政党・永久執権」を乾杯の挨拶として叫んだ。反対の方向に進めば拍手を受けるはずなのに、なぜ同じような道を続いて行くのか理解ができない。

米エール大学のエイミー・チュア教授は成功した帝国の共通点に寛容を挙げた。ローマを皮切りに、唐やモンゴル、大英帝国、米国など東洋と西洋の帝国が宗教・文化・人種的寛容をほどこす時に最高の治世を開き、寛容を失うと崩壊の手順を踏んだというものだ。「すべてのことに同意はできなかったが、違ってもいいという事実だけは同意した」というのがブッシュ葬儀の場に立ったクリントンの弔辞だった。国を成功させてこそ、10年、20年と執権できるのではあるまいか。

チェ・サンヨン/論説委員



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