「継続企業価値は4兆8386億ウォン(約4840億円)、清算価値は2兆5317億ウォン」。
韓進(ハンジン)海運の破産直前の2016年8月、三逸(サムイル)会計法人の会計調査で出てきた企業価値評価の結果だ。会社を清算するより事業を継続する場合の価値が2兆ウォン以上高いというのが、当時の分析の結果だった。しかし政府は韓進海運に破産宣告をした。
匿名を求めた韓進海運の退職者は「政府は大株主の努力が不足しているという理由で清算手続きを進めた。当時、韓進海運の不足資金は1兆ウォンほどだったが、清算後により大きな費用を払う構造調整をしている」と指摘した。
国内トップの韓進海運が破産した2017年2月以降、政府の海運業再建のための支援は現代商船に集中している。現代商船までが破産すれば、韓国は代表的な遠洋海運会社がない国になる。政府が現代商船に対する精密調査をした後、6兆706億ウォンの支援を決めた理由だ。
問題は韓進海運の空席を埋めるための海運業の再建が、6兆ウォン台の血税投入にもかかわらず成功が不透明な「賭け」になっている点だ。特に集中的な支援対象の現代商船は、政府の資金が支援されるほど財務状態がさらに悪化することが明らかになった。
今年7-9月期の負債比率(自己資本で負債が占める比率)が725%にのぼる現代商船に必要なのは「資本金」だが、政府が支援する資金は超大型船舶20隻とコンテナボックス95万個を購入する用途でのみ使用可能な貸出金(政府保証貸出と永久債)だ。三逸会計法人の調査結果によると、現代商船は今年1656億ウォンの利息費用が2022年には倍に近い3175億ウォンに増えると推定される。韓進海運事態以降、世界の荷主が韓国海運会社の財務健全性をチェックする状況で、脆弱な財務構造は営業活動に影響を及ぼす。
匿名を求めた海運業界の関係者は「政府が海運会社に支援した貸出は結局、大宇造船海洋など造船会社から船舶を購入するために使われる」とし「海運業が造船業を生かすための道具になっている」と不満を表した。
超大型船舶拡充戦略もリスクが伴うのは同じだ。現代商船が発注した超大型船舶は2020年から欧州航路に12隻、2021年から米国航路に8隻が投入される。現代商船の積載能力はこうした戦略で現在の42万TEU(1TEUはコンテナ1個の積載能力)から2022年には100万TEUと倍以上に増える。船が増えるだけで貨物を満たすことができなければ空の船が増え、管理負担が加重することもある。客が画期的に増えない状態で食堂の面積だけ40坪台から100坪台に増やす格好となる。
韓国企業評価のソ・ガンミン研究員は海運業分析報告書で「コスト競争力で超大型船の確保は重要だが、短期間に投資規模があまりにも大きい点は負担」とし「超大型船の拡充で貨物確保のための低運賃競争をするしかなく、収益性はさらに悪化することも考えられる」と懸念を表した。
こうした懸念にもかかわらず政府と現代商船が超大型船舶の拡充を決断した理由は、大型化しなければ世界の船会社との競争が難しいと判断しているからだ。マースク、MSC、CMA-CGM、COSCOなど競争海運会社がすべて超大型船舶を確保して運賃を下げる「チキンゲーム」に入った状態で、規模を拡大できない中小型海運会社は競争で淘汰されるしかない。超大型船舶を活用すれば1回の運航でより多くのコンテナを運べるためコストを削減でき、これを通じて運賃を引き下げれば、より安く貨物を輸送しようとする顧客の需要が自然に増えるという観測だ。現代商船のノ・ジファン部長は「超大型船舶はコンテナ1個あたり消耗する油類費も中小型船舶より少ない。環境規制に対応してスクラバー(硫黄酸化物低減装置)まで付けることになれば、他社より良い条件で営業できるだろう」と説明した。
専門家は現代商船の構造調整の成敗は今後拡充される超大型船舶の貨物室をどれほど顧客の貨物で満たせるかにかかっているとみている。三逸会計法人は調査報告書を通じて、2012年の船舶拡充で貨物積載能力(船腹量)が21.4%増えたが、実際の貨物積載量(消席率)はむしろ小幅上昇したこともあると明らかにした。食堂の面積が増え、客もさらに増えたこともあるという意味だ。しかし今後も貨物積載量が増えるとみるのは希望事項に近いというのが専門家らの指摘だ。2020年以降の貨物積載量は現在より240%ほど増える特殊な状況であるからだ。現代商船は特殊な状況に対応する営業戦略が必要な状況だが、欧州独自路線の拡充や国内大型荷主の攻略のほかには特に戦略を出せずにいる。
ハン・ジョンギル聖潔大東アジア物流学部教授は「政府は現代商船を立て直す考えなら確実にしなければいけない」とし「超大型船舶の貨物室の60%以上を満たしてこそ黒字を出す構造だが、これを可能にする営業力強化戦略が政府の正常化対策から抜けているのが問題」と指摘した。
韓国企業評価のキム・ジョンフン研究員も「現代商船は収益性を回復させるために運営費・人件費など追加のコスト削減努力を続ける必要があり、重複航路の調整作業も避けられないだろう」と強調した。
◆「収益よりは物量」…現代商船を危機に追い込んだ営業DNA
現代商船は営業力強化案を準備するため世界的なコンサルティング会社A.T.カーニーに分析を依頼した。9月に報告されたコンサルティング結果によると、現代商船は現場の営業マンに収益を出す意志が不足していることが分かった。物量中心に営業成果を評価するため、赤字を出してでも物量を満たすことに注力しているという指摘だ。また、複数の部署が同じ業務をするなど業務の効率性も落ちるうえ、全体的な顧客管理システムがないため戦略的な顧客対応も難しいという評価も出てきた。今後、超大型船舶20隻を確保する場合、これに合う営業システムを構築する必要があるというのがA.T.カーニーの分析だ。こうしたコンサルティングの結果は、今後の現代商船の経営正常化において必須の実行指針になるべきというのが専門家らの指摘だ。
韓進(ハンジン)海運の破産直前の2016年8月、三逸(サムイル)会計法人の会計調査で出てきた企業価値評価の結果だ。会社を清算するより事業を継続する場合の価値が2兆ウォン以上高いというのが、当時の分析の結果だった。しかし政府は韓進海運に破産宣告をした。
匿名を求めた韓進海運の退職者は「政府は大株主の努力が不足しているという理由で清算手続きを進めた。当時、韓進海運の不足資金は1兆ウォンほどだったが、清算後により大きな費用を払う構造調整をしている」と指摘した。
国内トップの韓進海運が破産した2017年2月以降、政府の海運業再建のための支援は現代商船に集中している。現代商船までが破産すれば、韓国は代表的な遠洋海運会社がない国になる。政府が現代商船に対する精密調査をした後、6兆706億ウォンの支援を決めた理由だ。
問題は韓進海運の空席を埋めるための海運業の再建が、6兆ウォン台の血税投入にもかかわらず成功が不透明な「賭け」になっている点だ。特に集中的な支援対象の現代商船は、政府の資金が支援されるほど財務状態がさらに悪化することが明らかになった。
今年7-9月期の負債比率(自己資本で負債が占める比率)が725%にのぼる現代商船に必要なのは「資本金」だが、政府が支援する資金は超大型船舶20隻とコンテナボックス95万個を購入する用途でのみ使用可能な貸出金(政府保証貸出と永久債)だ。三逸会計法人の調査結果によると、現代商船は今年1656億ウォンの利息費用が2022年には倍に近い3175億ウォンに増えると推定される。韓進海運事態以降、世界の荷主が韓国海運会社の財務健全性をチェックする状況で、脆弱な財務構造は営業活動に影響を及ぼす。
匿名を求めた海運業界の関係者は「政府が海運会社に支援した貸出は結局、大宇造船海洋など造船会社から船舶を購入するために使われる」とし「海運業が造船業を生かすための道具になっている」と不満を表した。
超大型船舶拡充戦略もリスクが伴うのは同じだ。現代商船が発注した超大型船舶は2020年から欧州航路に12隻、2021年から米国航路に8隻が投入される。現代商船の積載能力はこうした戦略で現在の42万TEU(1TEUはコンテナ1個の積載能力)から2022年には100万TEUと倍以上に増える。船が増えるだけで貨物を満たすことができなければ空の船が増え、管理負担が加重することもある。客が画期的に増えない状態で食堂の面積だけ40坪台から100坪台に増やす格好となる。
韓国企業評価のソ・ガンミン研究員は海運業分析報告書で「コスト競争力で超大型船の確保は重要だが、短期間に投資規模があまりにも大きい点は負担」とし「超大型船の拡充で貨物確保のための低運賃競争をするしかなく、収益性はさらに悪化することも考えられる」と懸念を表した。
こうした懸念にもかかわらず政府と現代商船が超大型船舶の拡充を決断した理由は、大型化しなければ世界の船会社との競争が難しいと判断しているからだ。マースク、MSC、CMA-CGM、COSCOなど競争海運会社がすべて超大型船舶を確保して運賃を下げる「チキンゲーム」に入った状態で、規模を拡大できない中小型海運会社は競争で淘汰されるしかない。超大型船舶を活用すれば1回の運航でより多くのコンテナを運べるためコストを削減でき、これを通じて運賃を引き下げれば、より安く貨物を輸送しようとする顧客の需要が自然に増えるという観測だ。現代商船のノ・ジファン部長は「超大型船舶はコンテナ1個あたり消耗する油類費も中小型船舶より少ない。環境規制に対応してスクラバー(硫黄酸化物低減装置)まで付けることになれば、他社より良い条件で営業できるだろう」と説明した。
専門家は現代商船の構造調整の成敗は今後拡充される超大型船舶の貨物室をどれほど顧客の貨物で満たせるかにかかっているとみている。三逸会計法人は調査報告書を通じて、2012年の船舶拡充で貨物積載能力(船腹量)が21.4%増えたが、実際の貨物積載量(消席率)はむしろ小幅上昇したこともあると明らかにした。食堂の面積が増え、客もさらに増えたこともあるという意味だ。しかし今後も貨物積載量が増えるとみるのは希望事項に近いというのが専門家らの指摘だ。2020年以降の貨物積載量は現在より240%ほど増える特殊な状況であるからだ。現代商船は特殊な状況に対応する営業戦略が必要な状況だが、欧州独自路線の拡充や国内大型荷主の攻略のほかには特に戦略を出せずにいる。
ハン・ジョンギル聖潔大東アジア物流学部教授は「政府は現代商船を立て直す考えなら確実にしなければいけない」とし「超大型船舶の貨物室の60%以上を満たしてこそ黒字を出す構造だが、これを可能にする営業力強化戦略が政府の正常化対策から抜けているのが問題」と指摘した。
韓国企業評価のキム・ジョンフン研究員も「現代商船は収益性を回復させるために運営費・人件費など追加のコスト削減努力を続ける必要があり、重複航路の調整作業も避けられないだろう」と強調した。
◆「収益よりは物量」…現代商船を危機に追い込んだ営業DNA
現代商船は営業力強化案を準備するため世界的なコンサルティング会社A.T.カーニーに分析を依頼した。9月に報告されたコンサルティング結果によると、現代商船は現場の営業マンに収益を出す意志が不足していることが分かった。物量中心に営業成果を評価するため、赤字を出してでも物量を満たすことに注力しているという指摘だ。また、複数の部署が同じ業務をするなど業務の効率性も落ちるうえ、全体的な顧客管理システムがないため戦略的な顧客対応も難しいという評価も出てきた。今後、超大型船舶20隻を確保する場合、これに合う営業システムを構築する必要があるというのがA.T.カーニーの分析だ。こうしたコンサルティングの結果は、今後の現代商船の経営正常化において必須の実行指針になるべきというのが専門家らの指摘だ。
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