昨年から「１９２３年に世田谷で起きた出来事」という名前の現場学習プログラムを始めたのもその一環だった。関東大震災が発生した翌日の９月２日夜、世田谷区大橋という橋の前で、自警団によって少なくとも１人が死んで３名がケガを負った事件を通じて「朝鮮人虐殺事件」を振り返るプログラムだ。

参加者から「東京の真ん中、しかも私が暮らしている地域で起きた悲劇の歴史を知った」という反響を呼んだ。

２０１１年東日本大震災からわずか２カ月余り前、西日本地域の集中豪雨の時もデマが流れた。角取氏は「『朝鮮人虐殺事件』は９５年前のことだが、現在ともつながっている。弱者に対する差別は今でも続いている」と話した。


画家でもある角取氏は「朝鮮人虐殺」をテーマに数多くの版画を製作している。角取氏は不利な歴史を消そうとする「歴史修正主義」の動きに対して大きな懸念をにじませた。角取氏は「歴史修正主義者などは『自虐史観』と非難するが、恥ずかしい歴史も認めて歴史を正面から見つめるのが尊厳であり知性だと考える」と話した。

日本政府は関東大震災発生日の１日を「防災の日」に指定している。安倍晋三首相は訓練服を着てヘリコプターに乗っている写真をインスタグラムに掲載した。小池百合子東京都知事も、この日東京都慰霊協会主催の秋季大法要に送った追悼文で、防災対策を強調するだけにとどまった。

◆関東大震災朝鮮人虐殺事件＝１９２３年９月１日、東京や神奈川など関東地方にマグニチュード（Ｍ）７．９の大型地震が発生した後、当時軍や警察などによって「朝鮮人が放火、暴動を起こした」、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマが広がった。約６０００人が朝鮮人という理由で虐殺されたとされている。日本内閣府は、報告書を通じて「関東大震災の死亡・行方不明者１０万５０００人のうち、１％～数％が殺害されたと推定。（中略）対象になったのは朝鮮人が最も多かった」と明らかにしたが、昨年右翼が反発すると報告書をホームページから削除した。



＜インタビュー＞「関東大震災の朝鮮人虐殺、私が住んでいるあそこでも…」（１）