「雇用ショックですって? 蔚山(ウルサン)はショックを超えてすでに地獄水準です」。
蔚山市北区蓮岩洞(ヨンアムドン)のある自動車部品メーカーで働くPさん(53)は数日前に失業手当ての相談を受けに地域雇用労働庁を訪問した。現代自動車3次下請け会社で好調な会社だったが経営難に耐えられなくなった事業主が年内廃業を予告したためだ。
この会社の代表は「部品注文量の減少と急激な最低賃金引き上げ負担で年初に従業員の半分を削減した。来年にも最低賃金を2桁引き上げなければならず、これ以上事業を運営するのは難しい状況だ」と話した。
かつて韓国製造業の心臓だった蔚山の雇用状況は最悪だ。7月の蔚山地域の就業者は前年同月比で1万9000人減った。就業者が1万人以上減少したのは通貨危機当時でもなかったことだ。景気低迷にともなう自動車の販売減少が部品メーカーに直撃弾を浴びせた上に2次・3次下請け会社に行くほど最低賃金引き上げの負担が加わったためだ。
蔚山だけではない。自動車と造船会社が集まった全羅北道群山(チョンラブクド・クンサン)、慶尚南道巨済(キョンサンナムド・コジェ)と昌原(チャンウォン)などの状況も大きく変わらない。製造業の沈滞は地域関連産業に連鎖波紋を起こしている。蔚山は上半期の法人事業者廃業率(1年間の開業数比の廃業数)が70%以上に上昇した。零細自営業者で構成される簡易事業者廃業率は80%を上回った。
統計庁が17日に発表した「7月雇用ショック」のまた別の軸は自営業の没落だ。先月は全国で自営業者3万件が廃業した。自営業の悪化はまた別の経路で雇用を減らしている。例えば飲食店の廃業増加は厨房用品会社の業績減少、さらに金型とステンレススチール会社の打撃につながり、雇用減少への影響が2~3倍に大きくなる。
ソウル・汝矣島(ヨイド)で飲食店を運営するLさんは「最低賃金引き上げに労働時間短縮の余波でお客が減り、すぐにでも閉店しなくてはならないが、政策当局者は政府を信じて待ってくれと言うので胸が潰れそうだ」と話した。青瓦台(チョンワデ、大統領府)のチャン・ハソン政策室長は19日に開かれた政府与党との会議で、雇用指標の悪化について「政府を信じてもう少し待ってほしい」と話した。
就業者数増加幅が5000人台に急減した7月の雇用ショックには2種類の大きな要因がある。産業の中枢である製造業の雇用が12万件も減少して衝撃を与え、年初から減り始めた自営業の雇用状況も大きく悪化した。製造業と自営業の沈滞はそれぞれ異なる経路で雇用生態系を悪化させている。
製造業は景気低迷と急激な最低賃金引き上げ、週52時間労働制など複合的要因がかみ合わさり部品メーカーなど企業生態系の下段に行くほど雇用打撃が加重される様相だ。特に雇用減少が最も大きかった自動車部品メーカーの雇用ショックは深刻な水準だ。
◇自動車雇用生態系の崩壊
売り上げ1000億ウォン規模の現代自動車2次下請け会社B社は最近不渡りを出した。この会社は毎年30億ウォン水準の営業利益を出していたが、昨年8億ウォンの赤字を記録した。その後数カ月間社員の賃金支払いが滞り、結局満期を迎えた手形を手当てできなかった。
韓国自動車産業協同組合関係者は「どれだけ多くの2次・3次下請け会社が不渡りの危機に置かれているのか正確に把握すらできない。通貨危機と金融危機の時も健在だった自動車部品業界がまるごと揺らぎ雇用ショックの震源地になっている」と伝えた。
景気低迷の余波で自動車販売が減少して仕事が減った部品メーカーは枯死直前に追い込まれている。規模が大きい1次下請け会社はまだ良い方だ。2次・3次下請け会社に進むほど仕事不足に急激な最低賃金引き上げ負担まで重なり困難はさらに拡大する。
業界では2次・3次下請け会社の危機が1次下請け会社へ、さらに自動車メーカーにつながるかも知れないとの懸念が出ている。ある部品メーカー代表は「自動車販売台数の減少により仕事が減った上に最低賃金引き上げと労働時間短縮など外部要因まで加わりこれ以上持ち堪えるのは難しい」と話した。
◇失業の危機に追いやられた造船下請け会社の労働者
造船業界の下請け会社の事情も似ている。業界関係者は「2次・3次下請け会社が廃業するのはすでにこの数年間続いた現象。残っている会社もどうにか持ち堪えている」と話す。
下請け会社の労働者は直撃弾を受けている。蔚山の現代重工業海洋プラント工場社内下請け会社の労働者2000人は今月末から失業者になる境遇だ。原油とガス生産・ボーリング設備などを生産するこの工場は2014年11月から45カ月にわたり受注実績が皆無で、25日ごろから稼動を中断する計画だ。下請け会社で溶接工として働いてきた労働者のキムさん(35)は先週から退社後3~4時間ずつ運転代行をしている。キムさんは「下請け契約により仕事をもらう下請け会社は工場稼動が中断されれば廃業するほかない」と話した。
現代重工業本社がある蔚山東区の250社の造船下請け会社の4大保険(国民年金、雇用保険、健康保険、労災保険)滞納額は先月基準で311億ウォンに達する。労働者数の減少幅も下請け会社が大きい。
◇自営業悪化の連鎖波紋
急激な最低賃金引き上げの直撃弾を受けた自営業はまた別の経路で雇用衝撃を拡大させている。飲食店やコンビニなど零細自営業であるほど景気低迷と最低賃金など政策的要因の影響を大きく受ける。週52時間労働制が施行された7月からは企業の会食が急速に減り打撃がさらに大きくなった。
九老(クロ)デジタル団地で25年にわたり飲食店を営んでいるPさんは「通貨危機の時もこうではなかった。最低賃金引き上げで大きくなった人件費負担は耐えるにしても週52時間労働制で会食が消えたのが決定的だった」と話す。Pさんは当初近くに飲食店を出そうとしたが取りやめた。
問題はここにとどまらない。飲食店廃業と開業遅延は厨房用品関連企業などに影響を与えている。ある厨房関連会社関係者は「企業は既に注文した社員食堂の工事を遅らせ、一般飲食店では設備注文を急速に減らしている」と伝えた。厨房会社に金型とステンレススチールを納品する会社はほとんどが人材を減らした。自営業の没落が関連製造業に影響を及ぼし始めた格好だ。
ソウルの九老洞(クロドン)、文来洞(ムンレドン)、新道林洞(シンドリムドン)など小企業密集地域では熟練工を除いた従業員を解雇する現象が現れている。見習い工は製造業の雇用生態系の最底辺にいる層のため彼らの打撃はもっと大きいというのが業界関係者らの話だ。
蔚山市北区蓮岩洞(ヨンアムドン)のある自動車部品メーカーで働くPさん(53)は数日前に失業手当ての相談を受けに地域雇用労働庁を訪問した。現代自動車3次下請け会社で好調な会社だったが経営難に耐えられなくなった事業主が年内廃業を予告したためだ。
この会社の代表は「部品注文量の減少と急激な最低賃金引き上げ負担で年初に従業員の半分を削減した。来年にも最低賃金を2桁引き上げなければならず、これ以上事業を運営するのは難しい状況だ」と話した。
かつて韓国製造業の心臓だった蔚山の雇用状況は最悪だ。7月の蔚山地域の就業者は前年同月比で1万9000人減った。就業者が1万人以上減少したのは通貨危機当時でもなかったことだ。景気低迷にともなう自動車の販売減少が部品メーカーに直撃弾を浴びせた上に2次・3次下請け会社に行くほど最低賃金引き上げの負担が加わったためだ。
蔚山だけではない。自動車と造船会社が集まった全羅北道群山(チョンラブクド・クンサン)、慶尚南道巨済(キョンサンナムド・コジェ)と昌原(チャンウォン)などの状況も大きく変わらない。製造業の沈滞は地域関連産業に連鎖波紋を起こしている。蔚山は上半期の法人事業者廃業率(1年間の開業数比の廃業数)が70%以上に上昇した。零細自営業者で構成される簡易事業者廃業率は80%を上回った。
統計庁が17日に発表した「7月雇用ショック」のまた別の軸は自営業の没落だ。先月は全国で自営業者3万件が廃業した。自営業の悪化はまた別の経路で雇用を減らしている。例えば飲食店の廃業増加は厨房用品会社の業績減少、さらに金型とステンレススチール会社の打撃につながり、雇用減少への影響が2~3倍に大きくなる。
ソウル・汝矣島(ヨイド)で飲食店を運営するLさんは「最低賃金引き上げに労働時間短縮の余波でお客が減り、すぐにでも閉店しなくてはならないが、政策当局者は政府を信じて待ってくれと言うので胸が潰れそうだ」と話した。青瓦台(チョンワデ、大統領府)のチャン・ハソン政策室長は19日に開かれた政府与党との会議で、雇用指標の悪化について「政府を信じてもう少し待ってほしい」と話した。
就業者数増加幅が5000人台に急減した7月の雇用ショックには2種類の大きな要因がある。産業の中枢である製造業の雇用が12万件も減少して衝撃を与え、年初から減り始めた自営業の雇用状況も大きく悪化した。製造業と自営業の沈滞はそれぞれ異なる経路で雇用生態系を悪化させている。
製造業は景気低迷と急激な最低賃金引き上げ、週52時間労働制など複合的要因がかみ合わさり部品メーカーなど企業生態系の下段に行くほど雇用打撃が加重される様相だ。特に雇用減少が最も大きかった自動車部品メーカーの雇用ショックは深刻な水準だ。
◇自動車雇用生態系の崩壊
売り上げ1000億ウォン規模の現代自動車2次下請け会社B社は最近不渡りを出した。この会社は毎年30億ウォン水準の営業利益を出していたが、昨年8億ウォンの赤字を記録した。その後数カ月間社員の賃金支払いが滞り、結局満期を迎えた手形を手当てできなかった。
韓国自動車産業協同組合関係者は「どれだけ多くの2次・3次下請け会社が不渡りの危機に置かれているのか正確に把握すらできない。通貨危機と金融危機の時も健在だった自動車部品業界がまるごと揺らぎ雇用ショックの震源地になっている」と伝えた。
景気低迷の余波で自動車販売が減少して仕事が減った部品メーカーは枯死直前に追い込まれている。規模が大きい1次下請け会社はまだ良い方だ。2次・3次下請け会社に進むほど仕事不足に急激な最低賃金引き上げ負担まで重なり困難はさらに拡大する。
業界では2次・3次下請け会社の危機が1次下請け会社へ、さらに自動車メーカーにつながるかも知れないとの懸念が出ている。ある部品メーカー代表は「自動車販売台数の減少により仕事が減った上に最低賃金引き上げと労働時間短縮など外部要因まで加わりこれ以上持ち堪えるのは難しい」と話した。
◇失業の危機に追いやられた造船下請け会社の労働者
造船業界の下請け会社の事情も似ている。業界関係者は「2次・3次下請け会社が廃業するのはすでにこの数年間続いた現象。残っている会社もどうにか持ち堪えている」と話す。
下請け会社の労働者は直撃弾を受けている。蔚山の現代重工業海洋プラント工場社内下請け会社の労働者2000人は今月末から失業者になる境遇だ。原油とガス生産・ボーリング設備などを生産するこの工場は2014年11月から45カ月にわたり受注実績が皆無で、25日ごろから稼動を中断する計画だ。下請け会社で溶接工として働いてきた労働者のキムさん(35)は先週から退社後3~4時間ずつ運転代行をしている。キムさんは「下請け契約により仕事をもらう下請け会社は工場稼動が中断されれば廃業するほかない」と話した。
現代重工業本社がある蔚山東区の250社の造船下請け会社の4大保険(国民年金、雇用保険、健康保険、労災保険)滞納額は先月基準で311億ウォンに達する。労働者数の減少幅も下請け会社が大きい。
◇自営業悪化の連鎖波紋
急激な最低賃金引き上げの直撃弾を受けた自営業はまた別の経路で雇用衝撃を拡大させている。飲食店やコンビニなど零細自営業であるほど景気低迷と最低賃金など政策的要因の影響を大きく受ける。週52時間労働制が施行された7月からは企業の会食が急速に減り打撃がさらに大きくなった。
九老(クロ)デジタル団地で25年にわたり飲食店を営んでいるPさんは「通貨危機の時もこうではなかった。最低賃金引き上げで大きくなった人件費負担は耐えるにしても週52時間労働制で会食が消えたのが決定的だった」と話す。Pさんは当初近くに飲食店を出そうとしたが取りやめた。
問題はここにとどまらない。飲食店廃業と開業遅延は厨房用品関連企業などに影響を与えている。ある厨房関連会社関係者は「企業は既に注文した社員食堂の工事を遅らせ、一般飲食店では設備注文を急速に減らしている」と伝えた。厨房会社に金型とステンレススチールを納品する会社はほとんどが人材を減らした。自営業の没落が関連製造業に影響を及ぼし始めた格好だ。
ソウルの九老洞(クロドン)、文来洞(ムンレドン)、新道林洞(シンドリムドン)など小企業密集地域では熟練工を除いた従業員を解雇する現象が現れている。見習い工は製造業の雇用生態系の最底辺にいる層のため彼らの打撃はもっと大きいというのが業界関係者らの話だ。
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