「もう7年しか残っていません」。
1993年2月にサムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長はロサンゼルスで絶叫に近い叱責を吐き出した。ロサンゼルスは彼が数百人の重役を率いて6カ月間にわたり世界の先進企業の視察に出た最初の訪問地だった。偶然訪れた大型マートで彼は衝撃を受けた。陳列台の前列は日本のソニーとNECの製品が占めた。サムスン製品は白くほこりをかぶったまま隈に押し込まれていた。世紀末の大転換期にサムスンが変われなければおしまいだ。絶体絶命の危機感は「妻と子どもを除いてすべて変えよ」というフランクフルト宣言を生んだ。これを契機にサムスンは韓国のガキ大将から、ソニーだけでなくアップルやインテルも超えたグローバル製造企業に生まれ変わった。
「宇宙船も打ち上げる中国がまだボールペンの芯も作れないのか」。
2015年12月に中国の李克強首相は嘆いた。中国は1年に400億本のボールペンを生産し世界市場の80%を席巻した。しかしボールペンの芯のボールは作れなかった。クロームやステンレス鋼でできたボールの製造は日本やスイスなどだけが持つ先端技術だったためだ。ボールペンの芯は図体だけが大きく核心技術はない「見かけ倒し」の中国製造業を象徴した。
ボールペンの芯の危機感は同年「中国製造2025」を生んだ。今後30年間に3段階にわたり中国の製造業を量から質に換骨奪胎させるという遠大な構想だ。1段階として2025年までに製造「大国」である中国を、韓国だけでなく米国、ドイツ、日本と肩を並べる製造「強国」の隊列に上げるということだ。中国建国100周年となる2049年には米国も追い越すというのが習近平主席の野心だ。
米国にとって中国製造2025は悪夢になるほかない。米国はいまでも中国との貿易で年間4000億ドル近い赤字を出している。中国の製造業が米国と並ぶならば経済戦争はしてもしなくても一緒だ。米国優先主義をモットーに掲げたトランプ政権では北朝鮮の核兵器に次ぐ脅威になるほかない。340億ドル規模の中国の輸入品にトランプ政権が飛ばした関税爆弾が中国製造2025を正照準した理由だ。米国と中国が行っている乱打戦は単純な貿易戦争ではなく未来製造業の死活をかけた覇権争いという話だ。
中国製造2025は中国に中間財を売って暮らす韓国の製造業にも災難だ。中国が製造強国になるならば韓国製造業の立ち位置はほとんどなくなる。さらに中国は共産党一党独裁国だ。政府が決めれば手段を選ばない。
1~5月に世界の電気自動車バッテリー市場で中国のCATLは日本のパナソニックを抜いて1位に上った。前年同期にCATLの出荷量はパナソニックの4分の1にすぎなかった。ところがわずか1年で出荷量が4倍以上に増え世界1位を奪取した。その裏には中国政府がある。中国政府は2016年から韓国製バッテリーを搭載した電気自動車には補助金を出さずにいる。補助金が自動車価格の半分を占めており、いくら韓国製バッテリーの品質が良いといっても中国製との競争で押されるほかない。中国が半導体で韓国に追いつくのも時間の問題だ。
韓国の製造業としては進退両難だ。米国が関税爆弾で中国製造2025を遅延させるならば未来寿命は延びるかもしれない。しかし当面の貿易戦争による輸出への打撃は避けられない。反対に米中が劇的に交渉を妥結させるならば一息つける。だが未来は不確実になる。韓国製造業が米中という2つの大国の争いに運命を任せなければならない境遇になった。
とばっちりを受けるのを避ける道はひとつだけだ。現在の半導体に続く未来の製造業の収益源を作り出すことだ。中国が思いもよらず米国もうらやむ絶対的競争力を持つことができなければ中国製造2025という津波に巻きこまれるほかない。93年に李健熙会長がロサンゼルスで叫んだように、2025年まで韓国製造業に残された時間はもう7年だけだ。
チョン・ギョンミン/デジタル事業局長
1993年2月にサムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長はロサンゼルスで絶叫に近い叱責を吐き出した。ロサンゼルスは彼が数百人の重役を率いて6カ月間にわたり世界の先進企業の視察に出た最初の訪問地だった。偶然訪れた大型マートで彼は衝撃を受けた。陳列台の前列は日本のソニーとNECの製品が占めた。サムスン製品は白くほこりをかぶったまま隈に押し込まれていた。世紀末の大転換期にサムスンが変われなければおしまいだ。絶体絶命の危機感は「妻と子どもを除いてすべて変えよ」というフランクフルト宣言を生んだ。これを契機にサムスンは韓国のガキ大将から、ソニーだけでなくアップルやインテルも超えたグローバル製造企業に生まれ変わった。
「宇宙船も打ち上げる中国がまだボールペンの芯も作れないのか」。
2015年12月に中国の李克強首相は嘆いた。中国は1年に400億本のボールペンを生産し世界市場の80%を席巻した。しかしボールペンの芯のボールは作れなかった。クロームやステンレス鋼でできたボールの製造は日本やスイスなどだけが持つ先端技術だったためだ。ボールペンの芯は図体だけが大きく核心技術はない「見かけ倒し」の中国製造業を象徴した。
ボールペンの芯の危機感は同年「中国製造2025」を生んだ。今後30年間に3段階にわたり中国の製造業を量から質に換骨奪胎させるという遠大な構想だ。1段階として2025年までに製造「大国」である中国を、韓国だけでなく米国、ドイツ、日本と肩を並べる製造「強国」の隊列に上げるということだ。中国建国100周年となる2049年には米国も追い越すというのが習近平主席の野心だ。
米国にとって中国製造2025は悪夢になるほかない。米国はいまでも中国との貿易で年間4000億ドル近い赤字を出している。中国の製造業が米国と並ぶならば経済戦争はしてもしなくても一緒だ。米国優先主義をモットーに掲げたトランプ政権では北朝鮮の核兵器に次ぐ脅威になるほかない。340億ドル規模の中国の輸入品にトランプ政権が飛ばした関税爆弾が中国製造2025を正照準した理由だ。米国と中国が行っている乱打戦は単純な貿易戦争ではなく未来製造業の死活をかけた覇権争いという話だ。
中国製造2025は中国に中間財を売って暮らす韓国の製造業にも災難だ。中国が製造強国になるならば韓国製造業の立ち位置はほとんどなくなる。さらに中国は共産党一党独裁国だ。政府が決めれば手段を選ばない。
1~5月に世界の電気自動車バッテリー市場で中国のCATLは日本のパナソニックを抜いて1位に上った。前年同期にCATLの出荷量はパナソニックの4分の1にすぎなかった。ところがわずか1年で出荷量が4倍以上に増え世界1位を奪取した。その裏には中国政府がある。中国政府は2016年から韓国製バッテリーを搭載した電気自動車には補助金を出さずにいる。補助金が自動車価格の半分を占めており、いくら韓国製バッテリーの品質が良いといっても中国製との競争で押されるほかない。中国が半導体で韓国に追いつくのも時間の問題だ。
韓国の製造業としては進退両難だ。米国が関税爆弾で中国製造2025を遅延させるならば未来寿命は延びるかもしれない。しかし当面の貿易戦争による輸出への打撃は避けられない。反対に米中が劇的に交渉を妥結させるならば一息つける。だが未来は不確実になる。韓国製造業が米中という2つの大国の争いに運命を任せなければならない境遇になった。
とばっちりを受けるのを避ける道はひとつだけだ。現在の半導体に続く未来の製造業の収益源を作り出すことだ。中国が思いもよらず米国もうらやむ絶対的競争力を持つことができなければ中国製造2025という津波に巻きこまれるほかない。93年に李健熙会長がロサンゼルスで叫んだように、2025年まで韓国製造業に残された時間はもう7年だけだ。
チョン・ギョンミン/デジタル事業局長
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