文在寅(ムン・ジェイン)大統領は運が良かった。執権初期は国内外の経済が良かった。輸出は順調で税金もよく集まった。不動産景気も上向きで内需も安定していた。おかげで3%台の成長を達成し、所得主導成長や脱原発、福祉拡大などの政策を負担なく推進することができた。だが、快晴だった空のかなたに濃厚な暗雲が立ち込めている。今年下半期から景気が急速に減退するとの懸念が出ている。文政府のJノミクスは重大な岐路に立った。
眼の前の対外経済環境の変化が尋常でない。米国が政策金利を2%に引き上げた。年内に2度目の追加利上げを予告している。欧州も通貨緊縮モードに転じた。先進国が金脈の引き締めに入ると、基盤の弱い新興国市場が動揺している。米国と中国は相互報復関税で乱打戦を行う貿易戦争に突入した。外圧に弱い韓国経済としては大きな悪材料にぶつかったといえる。輸出に急ブレーキがかかった。昨年2桁を回復していた輸出増加率は今年4~5月には5.5%と大きく落ち込んだ。
さらに大きな問題は、輸出主力製造業の競争力がただむなしく落ちるばかりだという事実だ。輸出の景気はいつかまた回復するだろうが、海外市場に持っていって売る製品自体がなくなってしまえば意味がない。中国の攻撃の前にびくともしないのは半導体くらいのものだ。造船業が沈没したことに続き、自動車産業が後退しつつある。ディスプレイは追いつかれ、携帯電話は薄氷の優位だ。中国は国と企業が一丸となって団結した「産業崛起」で、半導体や電気自動車、原子力などに無限の投資をしている。2020年代初期までに、すべての製造業で韓国を追い越すという目標だ。
韓国政府は天下泰平だ。主務部署である産業通商資源部は、産業別競争力の点検やその対応策づくりは二の次にして、脱原発にオールインしている。今、韓国産業は構造的大転換期に直面しているのは明らかだ。中国に譲るものは譲るとして、守るべきものを選別してしっかり守り、新産業を生み出す革新にまい進する時だ。このためには政府と企業、労組が固く手を取り合うべきところだが、現実は不信と反目の連続だ。
弱り目にたたり目で、主要財閥グループは3~4世への経営権継承過程にある。財界リーダーシップの不安と経験不足は意志決定の遅延と冒険回避につながっている。財閥系列会社が溜め込んだ現金はスケールの大きな投資に回すことができず、自社株償却や配当など、外国人投資家の歓心を買うためにその多くが投入されている。
下半期からは内需も冷え込んでいくものとみられる。不動産ローンおよび再建築規制、保有税の実質引き上げなどで建設景気が地方から急冷する可能性がある。来年、最低賃金が再び10%台に引き上げられて労働時間短縮が本格的に施行されるようになれば、多くの自営業者と中小企業が限界状況に追い込まれることが予想される。これは低所得層の雇用および所得を圧迫するだろう。
最近、中小企業人の間での最大の話題は「ベトナム」だ。新規投資はもちろん、工場の移転のためにベトナムを足繁く訪れる企業人が絶えない。若者は節約して貯めたお金を海外旅行に果敢に使う。投資と消費に国境がない「開かれた経済」では所得主導成長が通用しにくい理由だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の張夏成(チャン・ハソン)政策室長は「所得主導成長のせいで雇用が減ったという証拠がまだない」と強弁する。「それは絶対に統計で確認しないと分からないものなのか」と聞きたい。何十の扉で閉ざされている青瓦台を飛び出し、企業と自営業の現場を訪ね歩いてみればすぐに分かることだ。
南北経済協力が突破口になりえるかもしれない。だが、北朝鮮の非核化と経済制裁の解除には長い時間が必要だ。北朝鮮経済の開発利益が米国や中国により大きく傾く可能性もある。
経済環境が良かった過去1年、文在寅(ムン・ジェイン)政府が革新成長に成果なく虚しく時間を過ごしてしまったことは骨身にしみる。革新成長は結局、企業家の創造的破壊努力から出る。今からでも対内外経済環境の悪化を直視して、規制改革とバランスの取れた実用的政策、企業および市場と疎通する経済政策を駆使してほしい。
キム・クァンギ/経済研究所長・論説委員
眼の前の対外経済環境の変化が尋常でない。米国が政策金利を2%に引き上げた。年内に2度目の追加利上げを予告している。欧州も通貨緊縮モードに転じた。先進国が金脈の引き締めに入ると、基盤の弱い新興国市場が動揺している。米国と中国は相互報復関税で乱打戦を行う貿易戦争に突入した。外圧に弱い韓国経済としては大きな悪材料にぶつかったといえる。輸出に急ブレーキがかかった。昨年2桁を回復していた輸出増加率は今年4~5月には5.5%と大きく落ち込んだ。
さらに大きな問題は、輸出主力製造業の競争力がただむなしく落ちるばかりだという事実だ。輸出の景気はいつかまた回復するだろうが、海外市場に持っていって売る製品自体がなくなってしまえば意味がない。中国の攻撃の前にびくともしないのは半導体くらいのものだ。造船業が沈没したことに続き、自動車産業が後退しつつある。ディスプレイは追いつかれ、携帯電話は薄氷の優位だ。中国は国と企業が一丸となって団結した「産業崛起」で、半導体や電気自動車、原子力などに無限の投資をしている。2020年代初期までに、すべての製造業で韓国を追い越すという目標だ。
韓国政府は天下泰平だ。主務部署である産業通商資源部は、産業別競争力の点検やその対応策づくりは二の次にして、脱原発にオールインしている。今、韓国産業は構造的大転換期に直面しているのは明らかだ。中国に譲るものは譲るとして、守るべきものを選別してしっかり守り、新産業を生み出す革新にまい進する時だ。このためには政府と企業、労組が固く手を取り合うべきところだが、現実は不信と反目の連続だ。
弱り目にたたり目で、主要財閥グループは3~4世への経営権継承過程にある。財界リーダーシップの不安と経験不足は意志決定の遅延と冒険回避につながっている。財閥系列会社が溜め込んだ現金はスケールの大きな投資に回すことができず、自社株償却や配当など、外国人投資家の歓心を買うためにその多くが投入されている。
下半期からは内需も冷え込んでいくものとみられる。不動産ローンおよび再建築規制、保有税の実質引き上げなどで建設景気が地方から急冷する可能性がある。来年、最低賃金が再び10%台に引き上げられて労働時間短縮が本格的に施行されるようになれば、多くの自営業者と中小企業が限界状況に追い込まれることが予想される。これは低所得層の雇用および所得を圧迫するだろう。
最近、中小企業人の間での最大の話題は「ベトナム」だ。新規投資はもちろん、工場の移転のためにベトナムを足繁く訪れる企業人が絶えない。若者は節約して貯めたお金を海外旅行に果敢に使う。投資と消費に国境がない「開かれた経済」では所得主導成長が通用しにくい理由だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の張夏成(チャン・ハソン)政策室長は「所得主導成長のせいで雇用が減ったという証拠がまだない」と強弁する。「それは絶対に統計で確認しないと分からないものなのか」と聞きたい。何十の扉で閉ざされている青瓦台を飛び出し、企業と自営業の現場を訪ね歩いてみればすぐに分かることだ。
南北経済協力が突破口になりえるかもしれない。だが、北朝鮮の非核化と経済制裁の解除には長い時間が必要だ。北朝鮮経済の開発利益が米国や中国により大きく傾く可能性もある。
経済環境が良かった過去1年、文在寅(ムン・ジェイン)政府が革新成長に成果なく虚しく時間を過ごしてしまったことは骨身にしみる。革新成長は結局、企業家の創造的破壊努力から出る。今からでも対内外経済環境の悪化を直視して、規制改革とバランスの取れた実用的政策、企業および市場と疎通する経済政策を駆使してほしい。
キム・クァンギ/経済研究所長・論説委員
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