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誰が金英哲のソウル訪問に花道を用意したのか(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
労働党統一戦線部長の金英哲(キム・ヨンチョル)のソウル滞在は論争を呼んだ。対南挑発の象徴である彼を、金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長は平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック(五輪)閉会式の北側代表団長として送った。46人の将兵の命を奪った韓国哨戒艦「天安」爆沈挑発の核心人物だという国民の批判が続くと、韓国政府は「主犯と断定することはできない」として防弾幕を張った。発言する姿さえも公開されなかったが「朝米対話の用意を明らかにした」という青瓦台(チョンワデ、大統領府)の伝言もあった。突然のように「平和のメッセンジャー」に変身した金英哲。彼の韓国訪問2泊3日間に表れた問題点と論点を探ってみる。

「私も知らないうちに左傾盲動分子によって引き起こされたことであり、朴正熙(パク・ジョンヒ)大統領に申し訳なく思う」。

北朝鮮の金日成(キム・イルソン)内閣首相は1972年5月、平壌(ピョンヤン)を極秘裏に訪問した李厚洛(イ・フラク)中央情報部長に青瓦台襲撃事態について謝罪した。1968年に金新朝(キム・シンジョ)をはじめとする特殊部隊員31人を送り、朴大統領を殺害しようとしたが失敗し、警察と市民を殺傷した1・21挑発に対する遺憾の表示だった。激しく対立していた南北の2人の指導者の競争戦線で金日成は最初で最後となる謝罪をした。金日成の謝罪は北朝鮮の挑発行為に対する韓国国民の公憤と朴大統領の断固たる対応意志が決定的に作用した。


平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック(五輪)の開幕を控えた南北和解ムードの中に、先月の1・21事態50年行事は埋もれてしまった。青瓦台近隣まで侵入した共産軍に対抗して殉職した故チェ・ギュシク警務官らの追悼行事がソウル清雲洞(チョンウンドン)の紫霞門(チャハムン)峠で開かれただけだ。玄松月(ヒョン・ソンウォル)三池淵(サムジヨン)管弦楽団団長の「歌爆弾」と金正恩の妹・金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長の「特使」訪問は五輪舞台の片隅を満たした。そして有終の美を飾った閉会行事には金英哲がいた。

金英哲のオリンピック舞台登場は予想されたカードだった。芸術団を制裁対象の船舶の万景峰(マンギョンボン)92号に乗せて派遣するなど、北朝鮮は空路と海路、陸路をすべて開いて制裁の無力化を図った。開会式出席の高官級代表団に崔輝(チェ・フィ)国家体育指導委員長ら制裁対象人物を含めたのもこうした布石だ。金英哲は北朝鮮が対北朝鮮制裁の韓米協調の無力化と韓国内の葛藤を招くために使用する最後のカードと見なされた。

政府の対応は残念だった。閉幕3日前に名簿を伝えられると、「時間がない」と言い訳をした。十分に予想されていた状況だが、北側の提案をそのまま受け入れる態度を見せた。統一部は説明資料まで出し、「南北関係の改善と非核化問題を協議する責任のある人物」という評価まで出した。2010年3月の北朝鮮による韓国哨戒艦「天安」爆沈挑発の主犯と見なされてきたことにはあえて背を向け、「当時、偵察総局長を務めていたが、具体的な関連者を特定するのには限界がある」とかばった。米国の金英哲制裁も金融取引と米国入国問題にすぎず、「天安」のためではないとの主張も付け加えた。国家情報院と国防部もこれに口を合わせた。

しかし国民の世論は冷ややかだった。「政府も悩んだ。大乗的、未来志向的な次元で理解してほしい」という当局者の泣訴は効果を得られなかった。無理のある主張まで持ち出した。朴槿恵(パク・クネ)政権当時の2014年10月の南北軍事当局会談に当時の金英哲偵察総局長が出てきたという点を挙げ、「当時、金英哲の『天安』爆沈主犯論争はなかった」と強調した。しかし焦点がずれた主張は逆風を受けた。南北間の中立地帯と見なされる板門店(パンムンジョム)で海上衝突問題を議論した軍事会談に出てくるのと、「平和オリンピック」祝賀使節団は明確に違うという指摘だ。

残念なのは「天安」事件の遺族や負傷将兵に対する政府の配慮が不足した点だ。冷たい風が吹く統一大橋で涙を流して訴える遺族を避け、金英哲一行に別の道にう回させた。文在寅(ムン・ジェイン)政権が「セウォル号」の犠牲者と遺族に見せた誠意の10分の1でもあったなら心痛は軽減していたかもしれない。統一部は説明資料で「過去の行跡がどうかに集中するより、実質的な対話が重要だ」と明らかにした。しかしこうした主張はセウォル号と慰安婦被害者に対する政府の態度とは違う。セウォル号の船主・船長など加害勢力を遺族の前に登場させ、新しい旅客船の出港を祝う行事を大々的に開く姿だという批判が出てきたのもこうした側面からだ。



誰が金英哲のソウル訪問に花道を用意したのか(2)


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