黒田東彦日銀総裁
先週には取引時間中に一時ではあるが106円台を割り込んだりもした。16日には105.5円にタッチした。2016年11月以降で最高値だ。5日の世界の証券市場が暴落した「ブラックマンデー」後に円が上がった。金とともに安全資産に挙げられる円を投資家が再び求め始めた。日本の景気回復傾向も円の価値を引き上げた。
日本の中央銀行である日本銀行は緊張に包まれた。日本政府は黒田東彦日銀総裁再任案を16日に議会に提出した。4月には終わる任期をさらに5年延長する案だ。1961年から57年ぶりの総裁再任だ。安倍晋三首相が黒田総裁に下した特命は円安維持だ。これまで黒田総裁は忠実にこの任務を遂行したという評価を受けている。前例が珍しい総裁再任決定を安倍首相が下した理由だ。だが再任案が提出されるや黒田総裁は円高の帰還という山場を迎えた。
これまで日本経済は円安特需をきっちりと享受した。この日日本の財務省は1月の輸出額が1年前と比較して12.2%増加したと発表した。しかし円高が続けば日本の輸出にも問題が生じる。ブルームバーグは「円急騰は(日本経済に)リスク要素。輸入単価を引き下げて物価に影響を及ぼし、輸出にともなう利益を減らす」と指摘した。市場では日本銀行が円高防衛のために通貨政策正常化(解いた円を再びかき集める政策)を遅らせるものと予想する。伊藤忠経済研究所の武田淳主席研究員はブルームバーグとのインタビューで、「急速な円高により長期金利目標の引き上げ時期が後ずれする可能性が高まった」と指摘した。その上で、100円を割り込むほど円高が進んだ場合には「追加緩和の可能性もあるだろう」と予想した。
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