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韓経:【コラム】「質問」を失った大韓民国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
「カクテキ(ダイコンのキムチ)は2センチ角で切るのが正解ですか?」。大韓商工会議所は昨年春、政界にこうした公開質問書を送った。各政党に送った「大統領選候補に差し上げる経済界提言文」は、ある中学校での実際の状況を入れた。2016年の技術家庭科中間考査で「次の調理法のうち間違ったものを選びなさい」という問題が出題された。「わかめスープを作る時、わかめは冷たい水に浸して4センチの長さに切る」「ジャガイモ炒めを作る時、ジャガイモは0.5センチ、ニンジンとタマネギは0.3センチの厚さで切る」「カクテキを漬ける時、ダイコンは3センチ大で角切りにする」のうち、「間違ったもの」は「カクテキのダイコンは3センチ」だった。教科書では2センチになっているためだった。

気になることばかりだ。カクテキがそうだとして、わかめをもう少し長くあるいは短く切ったらなぜだめなのか。ジャガイモとニンジンとタマネギの厚さと配合に変化を与えたら何か問題があるのか。いまの教育・入試制度でこうした質問をすれば間抜け扱いされるだけだ。与えられた答を暗記して最大限多く当ててこそ高い点数を取り良い大学に入れる。このような教育を受けた人材が融合・複合を核心語にする第4次産業革命時代をどのように率いることができるだろうか。

特定の中学校の技術家庭科だけの問題ではないので状況は深刻だ。大学、それも韓国最高学府というソウル大学でも違いはない。イ・ヘジョン元ソウル大学教育学科研究教授が書いた『ソウル大学ではだれがA+を取るのか』には、「高い単位を取る秘訣は教授の講義内容を完璧に(冗談まで)すべて書き取ること」という内容が出てくる。「教育は考えられる人を育てることなのに、韓国の教育は学生の考えを殺す。私たちは『1592年壬辰倭乱』をただ暗記することが知識だと考える。先進国ならば『壬辰倭乱のような戦争はどのような社会変化をもたらしたか』を問う」。


このように教育を受けて成長した人々であふれた国で、ドグマを前面に出した組み分けが横行するのはあまりにも当然だ。だれでももっともらしい甘言とアイデアとスローガンを掘り出しさえできれば支持者をかき集めるのは難しいことではない。複雑に問い詰める必要がない。人々の「感性」に訴えて心をつかめば良い。一皮掘り下げ確かめてみるだけで問題が現れるのにそのまま覆い隠される。最近の韓国社会を分断し混沌の中に追いやる多くの政策と司法問題はほとんどがそうだ。

韓国社会を漂流させているポピュリズムの土壌はこのように怪物のように育ったが、それよりさらに緊迫した問題がこの国の息の根を止めようとしている。その上にこの国を支えてきた企業の足下に火の玉が落ちたのだ。無限の創意と柔軟な思考で新しい事業モデルを見つける企業だけが生存を約束できる第4次産業革命が急速に進行しているが、この国は依然として「カクテキの厚さは2センチでなければならない」学生たちを吐き出しているからだ。

ハリウッドの伝統企業を焦土化させ一気に世界の動画ストリーミングコンテンツ市場の支配者に浮上したネットフリックスの最大の武器は「創意的人材」だ。こうした人材を創意的に活用するネットフリックスに既存方式に慣れた企業は競争相手になれない。この会社は勤務方式と関連した一切のガイドラインをなくした。出勤はしてもよいし、しなくてもよく、休暇もいつでも、好きなだけ取れる。出張をはじめとする業務費用も制約なく使え、年末の人事評価もしない。代わりに「会社に最も利益になる方向で」「大人っぽい(adult-like)」行動方向を自ら質問して決め、それにともなう責任を負わせる。自由に考え最適な経路を見つけ出す訓練がされた人材には最善の力を発揮できる環境だが、「韓国型人材」にはその反対だろう。

世の中はそれほど変わっている。欧州の中世暗黒期を支配した「信頼の時代」を崩し人類社会に文明と科学の花を咲かせ始めたルネッサンス期は「考えの時代」だった。大量生産と大量消費が押し寄せ個人に合わせた消費と生産の時代がきて世の中は再び「考え」を要求している。「ひとつの答だけ強要する詰め込み式の教育を、問題解決過程を重視する創意性・柔軟性教育に変えなければなりません」。大韓商工会議所は「大韓民国の新たな希望公式を望む熱望」を政界にこのように訴えた。最近国が回る姿はその反対だ。本当の危機だ。

イ・ハクヨン/論説室長



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