北朝鮮「三池淵管弦楽団」の玄松月団長(写真=共同取材団)
先軍政治のバックコーラスである音楽政治遺伝子に触れたのは金正日(キム・ジョンイル)総書記の義弟、張成沢(チャン・ソンテク)だ。張成沢は音楽の素養がある金日成大学の青年を集めて「テクソン楽団」を設立した。このはつらつとした大胆な音楽バンドが政治犯収容所で慰問公演すると、金正日の怒りが爆発した。張成沢を除いてすべて処刑された。戦術に優れていた金正日は楽団を逆に活用する計画を立てた。才能がある若い美人で芸術団を作り、北朝鮮体制を美化宣伝することだ。旺載山(ワンジェサン)軽音楽団、普天堡(ボチョンボ)電子楽団が設立された。党幹部の宴会で喜び組として活躍し、年ごろになれば音楽政治という名分のもと国家行事に送り出した。2009年には李雪主(イ・ソルジュ)、玄松月(ヒョン・ソンウォル)が属する銀河水管弦楽団が設立された。
革命歌劇『花を売る乙女』の映画主題歌を金正日が作曲した。金星楽団所属の声楽俳優が主題歌「花はいりませんか」を感動的に歌った。北朝鮮の有名な作曲家が黄金芸術の極致だと金正日を称賛した。鼓舞された金正日は北朝鮮音楽界の巨匠であり「党の立派な娘」を作曲したイ・チャンソに評価を問うた。イ・チャンソがぶっきらぼうに話した。「情けない。この歌は米国の童謡『クレメンタイン』の明白な盗作です」。そしてピアノの前に座ってクレメンタインを演奏した。宴会場は静まり返った。数日後、イ・チャンソと家族は平壌(ピョンヤン)から消えた(キム・ビョンファン『豊渓里』)。
【コラム】核を売る乙女、玄松月(2)