文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足から6カ月を迎えた。最初は崩れた国家機能を回復するのも難しいと考えたが、期待以上だった。一方で懸念も多い。検証過程のない政策実行、コード人事、不安定な外交戦略などがそうだ。韓国を訪問したトランプ大統領は韓米自由貿易協定(FTA)問題に焦点を置いた。トランプ大統領は米国の攻撃的な戦略に逆らう韓国を信頼していない。それでも日常は戻ってきた。国家が正常機能を回復している。少なくとも非常識と反則が現実生活を支配するおそれは消えた。国家と権力を閉じ込めた閉回路を共に取り払ったという共有体験の贈り物だ。主権回復の自信と大衆心理の安定をもたらしたという点で文在寅政権はひとまず平均以上の点数を受けた。
◆統治哲学の転換
保守が分裂するほど文在寅政権の歩みは目立ってくる。健全な牽制と協治が消滅するからだ。支持率を独占した与党の改革動力は相当なものだ。執権から6カ月間に現政権は「韓国号」の航路変更に成功したとみられる。ろうそく広場の念願に合わせて統治哲学を整え、保守一辺倒の国家運営基調と政策理念を中道側に引き寄せた。どれほど左側に進むかは依然として懸念される。特定領域では速い推進力を見せた。二極化と不平等の震央に進入し、いくつか重要な雷管を除去した。最低賃金、正規職約束、福祉拡大、成果年俸制と解雇条項の廃止など。抵抗勢力が弱い時に強行した一種の速度戦だった。急速な決断が招く副作用が政策目的自体を覆すという懸念を問いただす状況ではなかった。15年前に4大改革を掲げた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が保守勢力の集中砲火でつまずいた悪夢が反面教師になったのだろう。
文在寅政権の初期政策は3つにまとめられる。(1)国家機能の正常化(2)疎通政治の活性化(3)二極化と不平等の解消。30年の民主化努力にもかかわらず発生した崔順実(チェ・スンシル)国政壟断事態こそ、政・官・財不正協業の終局だった。不正縁故網を摘発して権力乱用を審判に付した。公共機関を狙った全方向的な是正措置が崩れた公機能をどれほど更新するかは未知数だが、市民的な信頼回復には効果的だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は単独の官邸を捨てて広場に戻るところだが、国会は旧態から抜け出せず「協治」は行方が不透明だ。執権初期、最も注力した領域が二極化と不平等の解消だ。大統領行政命令で執行可能な政策を電光石火のように処理した。財閥大企業に対する攻勢が強まり、労働者寄りの政策が推進された。
ろうそく広場が望んだのは「国らしい国」「新しい国家」だった。国政100大課題がそのような集合的希望を分散的に盛り込んでいるが、統治哲学の転換を実現するには2つの中心軸をさらに整える必要があるという点を取り上げたい。(1)公正性概念(2)成長動力の社会的生産論。政治民主化を越えて社会民主化に進む関門に該当する。
◆公正性概念
マイケル・サンデル著の『正義とは何か』は韓国で100万部以上売れた。「社会正義」に飢えていた。過去10年間の経済成長率は3-5%で推移し、現在は下降している。それでも所得は増えたが、不平等は減らなかった。ジニ係数は0.34線に上昇し、所得5分位倍率は悪化した。金融・土地所有を合わせればジニ係数は0.4を超えるだろう。
賃金生活者のうち月200万ウォン(約20万円)以下が半分を占め、都心を走る宅配・代理運転手・運送運転手が200万人に達する。深夜作業をする労働者は経済活動人口の15%(約200万人)、週52時間働く長時間労働者は30%(約400万人)にのぼる。
4年前の姿だが、今日どれほど変わっているだろうか。階級論が広まり青年世代の夢をつぶした。公正性はどこにあるのか。
広場の叫び声に文在寅政権は「正義の大韓民国」で応えた。正義とは、すなわち公正性(fairness)だ。先進国で「公正性闘争」は1人あたりの国民所得1万-2万ドル水準で起こる。「公正性闘争の経済地帯」をすでに通過した韓国はいかなる画期的な結実もなくぐずついた。ジョン・ロールズの「一元的社会正義」にも到達できなかった。「これが国か」を問わなければならない。
文在寅政権の歩みはロールズの社会正義概念に近い。「公正性の再確立」だ。新しいことではない。ロールズは所得で「機会均等の原理」、富の分配で「差等の原理」を提案した。社会的・経済的価値を獲得する機会の均等分配を実行すること、下層に最大の恩恵が行きわたるように富を差等分配することがそれだ。
そのためには税金引き上げとともにすべての国民が所得を出す皆税主義が必要となる。福祉受恵者は公益に献身するという約束をしなければいけない。納税者と受恵者の信頼はこのように生じる。「絶望と諦念の社会化」が固着するのを防ぐ至急の社会改革がこれだ。
筆者は所得主導成長論の趣旨を公正性観点で理解する。ここで2つの点に注意しなければいけない。一つは、機会均等と差等分配の程度を調節することだが、誰もが納得する「応分の分配」がどの程度かについて社会的な合意が必要だ。例えば、日本は下請け企業の賃金が元請けの70%程度なら概して納得する。
もう一つは、度が過ぎれば現政権が意欲を見せる成長・雇用・福祉の「黄金三角形」が崩れることだ。分配は必要だが、実力を超える過剰福祉、過度な労働硬直性は3つの目標のうちどれか一つを捨てなければいけない困難な状況(トリレンマ、Trilemma)を招く。現政権が乱発する労働硬直性をあおる措置がそうだ。雇用創出を毀損する戦略だ。
◆成長動力の社会的生産
世界市場への依存度が高い韓国経済で経済成長は社会制度の関数になった。グローバル化は国内経済で二極化と分配悪化を招く。政府がこの衝撃を緩和する政策手段を開発してこそ成長を持続可能にする。所得・雇用不安定、失業、分配闘争など各種不安定が成長動力を破壊する。成長動力の社会的生産論、韓国はこの国家的な課題を避けた。
経済成長模範国に選ばれた韓国は1人あたりの国民所得1万ドルから2万ドルに到達する時間が経済協力開発機構(OECD)国のうち豪州・カナダに次いで長かった。1994年から2006年まで12年もかかった。豪州とカナダは「公正性闘争の経済地帯」で分配・福祉制度を積極的に導入し、労働市場制度を整備した。政権が左派・右派に何度も分かれた韓国は理念闘争が激しくなり、分配改革を逃した。経済活力を促進する制度的インセンティブが歪んだ状況で潜在成長率は急激に低下した。韓国は社会制度が経済の足を引っ張る「格差社会(gap society)」だ。
すべての政権が「福祉と成長の好循環」を語ったが、韓国的方程式を確立するのには失敗した。分配に重心を移すことが急がれるが、「どんな方式か」「どの程度か」という問題は簡単なことではない。現政権の労働者・分配寄りの政策はパラダイムの転換に合うという点で歓迎できる。ところがむやみに、どんな領域にも、「傾いた運動場」論をを突きつけるのは冒険的だ。現政権の政策能力は精巧で卓越しているとは感じられない。
「韓国号」の前途は統治の精巧さにかかる…文�寅政権の半年を診断(2)
◆統治哲学の転換
保守が分裂するほど文在寅政権の歩みは目立ってくる。健全な牽制と協治が消滅するからだ。支持率を独占した与党の改革動力は相当なものだ。執権から6カ月間に現政権は「韓国号」の航路変更に成功したとみられる。ろうそく広場の念願に合わせて統治哲学を整え、保守一辺倒の国家運営基調と政策理念を中道側に引き寄せた。どれほど左側に進むかは依然として懸念される。特定領域では速い推進力を見せた。二極化と不平等の震央に進入し、いくつか重要な雷管を除去した。最低賃金、正規職約束、福祉拡大、成果年俸制と解雇条項の廃止など。抵抗勢力が弱い時に強行した一種の速度戦だった。急速な決断が招く副作用が政策目的自体を覆すという懸念を問いただす状況ではなかった。15年前に4大改革を掲げた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が保守勢力の集中砲火でつまずいた悪夢が反面教師になったのだろう。
文在寅政権の初期政策は3つにまとめられる。(1)国家機能の正常化(2)疎通政治の活性化(3)二極化と不平等の解消。30年の民主化努力にもかかわらず発生した崔順実(チェ・スンシル)国政壟断事態こそ、政・官・財不正協業の終局だった。不正縁故網を摘発して権力乱用を審判に付した。公共機関を狙った全方向的な是正措置が崩れた公機能をどれほど更新するかは未知数だが、市民的な信頼回復には効果的だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は単独の官邸を捨てて広場に戻るところだが、国会は旧態から抜け出せず「協治」は行方が不透明だ。執権初期、最も注力した領域が二極化と不平等の解消だ。大統領行政命令で執行可能な政策を電光石火のように処理した。財閥大企業に対する攻勢が強まり、労働者寄りの政策が推進された。
ろうそく広場が望んだのは「国らしい国」「新しい国家」だった。国政100大課題がそのような集合的希望を分散的に盛り込んでいるが、統治哲学の転換を実現するには2つの中心軸をさらに整える必要があるという点を取り上げたい。(1)公正性概念(2)成長動力の社会的生産論。政治民主化を越えて社会民主化に進む関門に該当する。
◆公正性概念
マイケル・サンデル著の『正義とは何か』は韓国で100万部以上売れた。「社会正義」に飢えていた。過去10年間の経済成長率は3-5%で推移し、現在は下降している。それでも所得は増えたが、不平等は減らなかった。ジニ係数は0.34線に上昇し、所得5分位倍率は悪化した。金融・土地所有を合わせればジニ係数は0.4を超えるだろう。
賃金生活者のうち月200万ウォン(約20万円)以下が半分を占め、都心を走る宅配・代理運転手・運送運転手が200万人に達する。深夜作業をする労働者は経済活動人口の15%(約200万人)、週52時間働く長時間労働者は30%(約400万人)にのぼる。
4年前の姿だが、今日どれほど変わっているだろうか。階級論が広まり青年世代の夢をつぶした。公正性はどこにあるのか。
広場の叫び声に文在寅政権は「正義の大韓民国」で応えた。正義とは、すなわち公正性(fairness)だ。先進国で「公正性闘争」は1人あたりの国民所得1万-2万ドル水準で起こる。「公正性闘争の経済地帯」をすでに通過した韓国はいかなる画期的な結実もなくぐずついた。ジョン・ロールズの「一元的社会正義」にも到達できなかった。「これが国か」を問わなければならない。
文在寅政権の歩みはロールズの社会正義概念に近い。「公正性の再確立」だ。新しいことではない。ロールズは所得で「機会均等の原理」、富の分配で「差等の原理」を提案した。社会的・経済的価値を獲得する機会の均等分配を実行すること、下層に最大の恩恵が行きわたるように富を差等分配することがそれだ。
そのためには税金引き上げとともにすべての国民が所得を出す皆税主義が必要となる。福祉受恵者は公益に献身するという約束をしなければいけない。納税者と受恵者の信頼はこのように生じる。「絶望と諦念の社会化」が固着するのを防ぐ至急の社会改革がこれだ。
筆者は所得主導成長論の趣旨を公正性観点で理解する。ここで2つの点に注意しなければいけない。一つは、機会均等と差等分配の程度を調節することだが、誰もが納得する「応分の分配」がどの程度かについて社会的な合意が必要だ。例えば、日本は下請け企業の賃金が元請けの70%程度なら概して納得する。
もう一つは、度が過ぎれば現政権が意欲を見せる成長・雇用・福祉の「黄金三角形」が崩れることだ。分配は必要だが、実力を超える過剰福祉、過度な労働硬直性は3つの目標のうちどれか一つを捨てなければいけない困難な状況(トリレンマ、Trilemma)を招く。現政権が乱発する労働硬直性をあおる措置がそうだ。雇用創出を毀損する戦略だ。
◆成長動力の社会的生産
世界市場への依存度が高い韓国経済で経済成長は社会制度の関数になった。グローバル化は国内経済で二極化と分配悪化を招く。政府がこの衝撃を緩和する政策手段を開発してこそ成長を持続可能にする。所得・雇用不安定、失業、分配闘争など各種不安定が成長動力を破壊する。成長動力の社会的生産論、韓国はこの国家的な課題を避けた。
経済成長模範国に選ばれた韓国は1人あたりの国民所得1万ドルから2万ドルに到達する時間が経済協力開発機構(OECD)国のうち豪州・カナダに次いで長かった。1994年から2006年まで12年もかかった。豪州とカナダは「公正性闘争の経済地帯」で分配・福祉制度を積極的に導入し、労働市場制度を整備した。政権が左派・右派に何度も分かれた韓国は理念闘争が激しくなり、分配改革を逃した。経済活力を促進する制度的インセンティブが歪んだ状況で潜在成長率は急激に低下した。韓国は社会制度が経済の足を引っ張る「格差社会(gap society)」だ。
すべての政権が「福祉と成長の好循環」を語ったが、韓国的方程式を確立するのには失敗した。分配に重心を移すことが急がれるが、「どんな方式か」「どの程度か」という問題は簡単なことではない。現政権の労働者・分配寄りの政策はパラダイムの転換に合うという点で歓迎できる。ところがむやみに、どんな領域にも、「傾いた運動場」論をを突きつけるのは冒険的だ。現政権の政策能力は精巧で卓越しているとは感じられない。
「韓国号」の前途は統治の精巧さにかかる…文�寅政権の半年を診断(2)
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