韓国と中国が危機の際に韓国ウォンと中国人民元を交換する通貨スワップ協定の延長に合意した。THAAD(高高度防衛ミサイル)配備をめぐる葛藤にもかかわらず合意に至ったのだ。これは中国側が通貨スワップを金融協力と貿易増進という目的にだけ焦点を合わせたものと分析される。
金東ヨン(キム・ドンヨン)副首相兼企画財政部長官と李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行(韓銀)総裁は12日(現地時間)、20カ国・地域(G20)財務相業務夕食会の時間にしばらく出てきて記者らと懇談会をし「韓中通貨スワップの満期を延長することにした」と明らかにした。
金副首相は「11日に発効し、形式的には新規だが、延長と変わらない」と述べた。560億ドル規模の韓中通貨スワップは10日に満期を迎えた。従来の契約が終わり新たに契約を締結したが、抜けた期間がないため、実質的には満期延長に成功したのと同じという説明だ。李総裁は「(通貨スワップ)期間と規模は従来と同じ」とし「正確には再契約だが、延長合意と見てもかまわない」と伝えた。
韓中通貨スワップの延長で韓国は強力な為替安全弁を維持することになった。1月に日本との通貨スワップ再開交渉が決裂した後、韓中通貨スワップまでなくなれば、為替管理の負担が大きくなるしかなかった。
人民元の国際化を推進する中国の立場でも、香港(4000億元)に続いて2番目に規模が大きい韓中通貨スワップを維持し、人民元の地位の強化に拍車を加えることになった。中国人民銀行の周小川総裁が最近、中国の経済誌『財経』のインタビューで、自由貿易や為替自由化など各種改革を強化することを注文し、国際金融市場の信頼回復のためにドル建て国債を発行するなど中国政府が国際金融市場で地位を強化するために注力している点も、通貨スワップの延長に影響を与えたと分析される。THAAD問題が続く中、通貨スワップの延長に合意したことで、日本とも異なる路線を歩むことになった。韓中通貨スワップの延長でTHAAD配備に対する中国の立場に変化が生じたと考えられる。
通貨スワップは特定の日や期間(満期)を決め、期間内にあらかじめ約束した為替レートに基づいてそれぞれ異なる通貨を交換する為替取引をいう。もともとは金融市場で取引される派生商品の一つだった。しかし通貨危機と世界金融危機を経て各国中央銀行間の通貨スワップ協定が注目されることになった。外貨準備高がなくなる場合に備えて自国通貨を相手の中央銀行に置き、それに相応する外貨を借りて使えるためだ。外貨準備高が有事の際に備えた「積立金」とすれば、通貨スワップは一種の外貨「マイナス通帳」ということだ。
韓銀によると、韓中通貨スワップ規模は3600億元(約560億ドル)。多者間で締結されたチェンマイイニシアチブ(CMIM)から借りることができる384億ドルを含めた韓国の契約締結総額(1222億ドル)の46%を占める。
一方、韓中通貨スワップ規模は中国の2国間通貨スワップ総額の11.8%だ。中国人民銀行によると、7月末現在の中国の通貨スワップ規模は3兆590億元。韓国を含めた金額だ。中国は人民元の国際化に取り組み、香港(4000億元)、英国(3500億元)、欧州中央銀行(ECB、3500億元)など32カ国の中央銀行と通貨スワップ契約を結んだ。
中央銀行間の通貨スワップが初めて登場したのは2001年の米同時多発テロ当時だ。金融市場の一時的な流動性不足を防ぐために米連邦準備制度理事会(FRB)は英国・カナダ・欧州の中央銀行と900億ドル規模の通貨スワップ協定を締結した。期間は30日と短かった。
世界金融危機を迎え、通貨スワップは国際通貨システムの重要な手段に浮上した。世界金融市場の信用収縮を防ぐためにFRBが通貨スワップラインを通じて為替の安全網を構築したのだ。FRBは2007-08年に欧州中央銀行(ECB)・スイス・韓国など14カ国の中央銀行と2国間通貨スワップ協定を結んだ。締結額は5800億ドルにのぼった。国際通貨基金(IMF)の資金供与額の4倍にのぼる金額だった。
フランス最大のシンクタンク国際経済予測研究センター(CEPII)は「通貨スワップを通じてFRBが全世界の最後の貸し手(Lender of Last Resort)の役割を担うことになった」とし「ブレトンウッズ体制崩壊後に発生した通貨と金融市場の不安定を扱う最新手段として通貨スワップが登場した」と分析した。
CEPIIによると、中央銀行間の通貨スワップは中央銀行の無制限的かつ排他的な通貨創出能力と国際資本の流れの変動性が結合して生まれた産物だ。例外的であり一時的な手段だが、外貨不足で流動性危機を迎えた場合に外貨準備高と同じように取り出して使えるだけに、為替当局には「保険」の性格が強い。外貨準備高の減少も防げる。市場の心理的安定も期待できる。IMF救済金融による政策履行手段(Conditionality)がない点も各国が通貨スワップを好む理由だ。
1997年に通貨危機を経験した韓国政府にとって為替安全網の通貨スワップは絶対に必要だった。2008年の世界金融危機の衝撃から韓国も例外ではなかった。外貨流動性危機説に巻き込まれた。国内金融市場もパニックになった。高まった危機感を一挙に払拭したのは通貨スワップ協定だった。
同年10月30日に米国と300億ドル規模の通貨スワップを締結した。続いて日本・中国ともそれぞれ300億ドルの通貨スワップ協定を結んだ。市場は安定を取り戻した。金融危機の衝撃を防ぐ「安全弁」の役割を果たしたのだ。
韓国が主要国の中央銀行と通貨スワップ協定を結ぶのは容易なことではなかった。米国は協定締結に消極的だった。日本と欧州連合(EU)・スイスなど先進国と協定を結んだ。李明博(イ・ミョンバク)元大統領の自叙伝『大統領の時間』によると、当時の姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官が「韓国が保有する米国国債を売れば通貨スワップなしに危機管理が可能」と圧力を加えると、米国が通貨スワップ締結に同意したという。
当時、日本が冷淡な態度を見せると、中国を先に攻略した。人民元の国際化を進めながら各国政府と攻撃的に通貨スワップ協定を結んでいた中国の門を叩いたのだ。謝旭人中国財政相に「韓中通貨スワップが基軸通貨に進む第一歩になる可能性がある」と説得し、40億ドル規模の通貨スワップを300億ドル(1800億元)に増やした。中国が動き出すと日本も立場を変え、300億ドル規模の通貨スワップを締結した。
韓中通貨スワップは2011年に3600億元に拡大した。2014年に3年延長された。韓日通貨スワップは欧州財政危機拡散の可能性が高まると、2011年10月に700億ドルに拡大した。韓日通貨スワップ規模は2013年7月に100億ドルに減った後、2015年2月に終了した。今年初めに通貨スワップの再開を協議したが、日本が慰安婦少女像の設置を問題視し、一方的に交渉終了を通知した。
THAAD報復の中国が通貨スワップ延長に合意した理由は(2)
金東ヨン(キム・ドンヨン)副首相兼企画財政部長官と李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行(韓銀)総裁は12日(現地時間)、20カ国・地域(G20)財務相業務夕食会の時間にしばらく出てきて記者らと懇談会をし「韓中通貨スワップの満期を延長することにした」と明らかにした。
金副首相は「11日に発効し、形式的には新規だが、延長と変わらない」と述べた。560億ドル規模の韓中通貨スワップは10日に満期を迎えた。従来の契約が終わり新たに契約を締結したが、抜けた期間がないため、実質的には満期延長に成功したのと同じという説明だ。李総裁は「(通貨スワップ)期間と規模は従来と同じ」とし「正確には再契約だが、延長合意と見てもかまわない」と伝えた。
韓中通貨スワップの延長で韓国は強力な為替安全弁を維持することになった。1月に日本との通貨スワップ再開交渉が決裂した後、韓中通貨スワップまでなくなれば、為替管理の負担が大きくなるしかなかった。
人民元の国際化を推進する中国の立場でも、香港(4000億元)に続いて2番目に規模が大きい韓中通貨スワップを維持し、人民元の地位の強化に拍車を加えることになった。中国人民銀行の周小川総裁が最近、中国の経済誌『財経』のインタビューで、自由貿易や為替自由化など各種改革を強化することを注文し、国際金融市場の信頼回復のためにドル建て国債を発行するなど中国政府が国際金融市場で地位を強化するために注力している点も、通貨スワップの延長に影響を与えたと分析される。THAAD問題が続く中、通貨スワップの延長に合意したことで、日本とも異なる路線を歩むことになった。韓中通貨スワップの延長でTHAAD配備に対する中国の立場に変化が生じたと考えられる。
通貨スワップは特定の日や期間(満期)を決め、期間内にあらかじめ約束した為替レートに基づいてそれぞれ異なる通貨を交換する為替取引をいう。もともとは金融市場で取引される派生商品の一つだった。しかし通貨危機と世界金融危機を経て各国中央銀行間の通貨スワップ協定が注目されることになった。外貨準備高がなくなる場合に備えて自国通貨を相手の中央銀行に置き、それに相応する外貨を借りて使えるためだ。外貨準備高が有事の際に備えた「積立金」とすれば、通貨スワップは一種の外貨「マイナス通帳」ということだ。
韓銀によると、韓中通貨スワップ規模は3600億元(約560億ドル)。多者間で締結されたチェンマイイニシアチブ(CMIM)から借りることができる384億ドルを含めた韓国の契約締結総額(1222億ドル)の46%を占める。
一方、韓中通貨スワップ規模は中国の2国間通貨スワップ総額の11.8%だ。中国人民銀行によると、7月末現在の中国の通貨スワップ規模は3兆590億元。韓国を含めた金額だ。中国は人民元の国際化に取り組み、香港(4000億元)、英国(3500億元)、欧州中央銀行(ECB、3500億元)など32カ国の中央銀行と通貨スワップ契約を結んだ。
中央銀行間の通貨スワップが初めて登場したのは2001年の米同時多発テロ当時だ。金融市場の一時的な流動性不足を防ぐために米連邦準備制度理事会(FRB)は英国・カナダ・欧州の中央銀行と900億ドル規模の通貨スワップ協定を締結した。期間は30日と短かった。
世界金融危機を迎え、通貨スワップは国際通貨システムの重要な手段に浮上した。世界金融市場の信用収縮を防ぐためにFRBが通貨スワップラインを通じて為替の安全網を構築したのだ。FRBは2007-08年に欧州中央銀行(ECB)・スイス・韓国など14カ国の中央銀行と2国間通貨スワップ協定を結んだ。締結額は5800億ドルにのぼった。国際通貨基金(IMF)の資金供与額の4倍にのぼる金額だった。
フランス最大のシンクタンク国際経済予測研究センター(CEPII)は「通貨スワップを通じてFRBが全世界の最後の貸し手(Lender of Last Resort)の役割を担うことになった」とし「ブレトンウッズ体制崩壊後に発生した通貨と金融市場の不安定を扱う最新手段として通貨スワップが登場した」と分析した。
CEPIIによると、中央銀行間の通貨スワップは中央銀行の無制限的かつ排他的な通貨創出能力と国際資本の流れの変動性が結合して生まれた産物だ。例外的であり一時的な手段だが、外貨不足で流動性危機を迎えた場合に外貨準備高と同じように取り出して使えるだけに、為替当局には「保険」の性格が強い。外貨準備高の減少も防げる。市場の心理的安定も期待できる。IMF救済金融による政策履行手段(Conditionality)がない点も各国が通貨スワップを好む理由だ。
1997年に通貨危機を経験した韓国政府にとって為替安全網の通貨スワップは絶対に必要だった。2008年の世界金融危機の衝撃から韓国も例外ではなかった。外貨流動性危機説に巻き込まれた。国内金融市場もパニックになった。高まった危機感を一挙に払拭したのは通貨スワップ協定だった。
同年10月30日に米国と300億ドル規模の通貨スワップを締結した。続いて日本・中国ともそれぞれ300億ドルの通貨スワップ協定を結んだ。市場は安定を取り戻した。金融危機の衝撃を防ぐ「安全弁」の役割を果たしたのだ。
韓国が主要国の中央銀行と通貨スワップ協定を結ぶのは容易なことではなかった。米国は協定締結に消極的だった。日本と欧州連合(EU)・スイスなど先進国と協定を結んだ。李明博(イ・ミョンバク)元大統領の自叙伝『大統領の時間』によると、当時の姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官が「韓国が保有する米国国債を売れば通貨スワップなしに危機管理が可能」と圧力を加えると、米国が通貨スワップ締結に同意したという。
当時、日本が冷淡な態度を見せると、中国を先に攻略した。人民元の国際化を進めながら各国政府と攻撃的に通貨スワップ協定を結んでいた中国の門を叩いたのだ。謝旭人中国財政相に「韓中通貨スワップが基軸通貨に進む第一歩になる可能性がある」と説得し、40億ドル規模の通貨スワップを300億ドル(1800億元)に増やした。中国が動き出すと日本も立場を変え、300億ドル規模の通貨スワップを締結した。
韓中通貨スワップは2011年に3600億元に拡大した。2014年に3年延長された。韓日通貨スワップは欧州財政危機拡散の可能性が高まると、2011年10月に700億ドルに拡大した。韓日通貨スワップ規模は2013年7月に100億ドルに減った後、2015年2月に終了した。今年初めに通貨スワップの再開を協議したが、日本が慰安婦少女像の設置を問題視し、一方的に交渉終了を通知した。
THAAD報復の中国が通貨スワップ延長に合意した理由は(2)
この記事を読んで…