トランプ大統領の登場を日本企業は懸念の目で眺めている。米国製造業を回復させて雇用を増やすというトランプ大統領の通商政策は中国・メキシコ製品をターゲットにしているが、日本と無関係でないからだ。日本の多くの電子素材部品会社は中国で、自動車主要企業はメキシコで、対米輸出品を生産している。

米国が実際に保護貿易主義に向かう場合、日本の製造業者は摩擦を回避するために米国での現地生産を増やすしか方法がない。トヨタの国内生産費率は約４５％だが、工場が米国に移ることになれば国内の空洞化はさらに進む。また、米国市場と比較すると、中国など新興国市場は日本製造業にとって魅力が落ちる。トランプ大統領の登場で日本の製造業は今、試練の時代を迎えている。

しかしトランプ大統領の登場が日本の製造業、特に自動車産業に逆風というのはあまりにも誇張されているという意見もある。日本自動車工業会の統計によると、日本産自動車製造業者は米国で約３８５万台（２０１５年）を生産している。オートデータの統計によると、日本の主要自動車製造業者が米国で販売する新車は６５７万台。すなわち、すでに日本自動車企業は新車販売台数の６０％を米国で現地生産していて、現地生産を増やすことによる衝撃はそれほど大きくないという分析だ。


また、トヨタは米国内に９カ所、日産は５カ所、ホンダは７カ所の生産拠点を持ち、米国内の雇用創出に十分に寄与している。この点もトランプ大統領の米国を説得するうえで日本企業の強みであり、積極的に活用される可能性がある。にもかかわらず企業はトランプ大統領の米国に適応しようという努力も並行するべきだとみて、米国への生産拠点移転を積極的に考慮している。米国はもともと自給自足の国であり、自動車産業でも自国市場で生産・流通・消費が可能だと信じているため、これを勘案した戦略が必要ということだ。　（中央ＳＵＮＤＡＹ第５２７号）



日本、貿易摩擦を避けようと米国現地生産増加を悩む（２）