韓米FTA(自由貿易協定)の発効から明日でちょうど5年となる。推進から発効まで韓国社会を深刻に混乱させたのが数日前のように記憶されている。当時、大韓民国の経済が滅びて庶民の生活は破綻するという怪談が多かった。米国の無限競争システムが韓国に移植される通路になる、資本家の利益のための屈辱的な交渉という声も広まった。
極限反対闘争は政界が率先した。テレビなどメディアでも「国を売り飛ばす協定」という見方が続いた。都心では各種市民団体と労働者・農民団体が主導する大規模な集会が絶えなかった。この人たちは亡国的なFTAを撤回するべきだと声を高めた。協定締結の主役を売国奴と呼んだりもした。しかしこの5年間のFTAの成果は反対論者の主張とは正反対だ。両国ともに互恵的利益を抱かせた協定だったことを立証している。
◆韓国・米国経済に「ウィン・ウィン」
過去5年間の韓米貿易は年平均1.7%ずつ増えた。世界を相手にした韓国の貿易が年平均3.5%減少したことを考えると大きな成果だ。原油安などで同じ期間、世界の平均貿易も2.0%減少した。
両国の「ウィン・ウィン」も明確だ。韓国商品の米国市場シェアはFTA発効直前の2011年の2.57%から昨年は3.19%に増えた。同じ期間、米国商品の韓国市場シェアも8.50%から10.64%へと2ポイント以上拡大した。米国の農産物によって焦土化すると懸念された農業でも打撃はなかった。米国産農産物の輸入はむしろ平均1.9%減少した。一方、韓国産農産物の輸出は増えた。輸出増加率も年平均14%にのぼる。自由貿易論者はFTAを契機に農業も輸出産業の可能性を打診できると主張したが、その通りになっている。
米国も利益を得た。当初は自動車産業が打撃を受けるとして反対が多かったが、米国自動車の対韓国輸出はこの2年間、それぞれ30%、37%増えた。米国が最も利益を得た産業が自動車という評価も出ている。このような5年間の結果は我々が期待した通りだ。5年前になぜあれほど国が滅びるかのように騒いだのか分からない状況だ。
◆政界と専門家の誤った判断と背信
韓米FTA締結当時、海外は羨望の目で眺めていた。英エコノミストは「日本が韓国の交渉代表に感心している」とし、韓米FTAを前向きに評価した。中国環球時報までが「EU(欧州連合)に続いて米国とのFTA発効で韓国がグローバルFTAハブに浮上する」と伝えた。
韓国国内だけは非難が続いた。政界は深刻だった。当時の孫鶴圭(ソン・ハッキュ)民主党代表は韓米FTA賛否を国民投票で決めようと主張した。朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長も投資家国家訴訟制度(ISD)を歪曲した意見書で混乱を招いた。当時、民主労働党の李正姫(イ・ジョンヒ)議員、民主党の鄭東泳(チョン・ドンヨン)議員、千正培(チョン・ジョンベ)議員、李鍾杰(イ・ジョンゴル)議員、ハン・ホング聖公会(ソンゴンフェ)大教授、イ・ヘヨン韓神(ハンシン)大教授らは「乙巳条約が恥ずかしい」という刺激的なタイトルのインターネット放送に出演した。韓米FTAは乙巳勒約よりひどいと主張した。判事までが反対に加勢した。ある部長判事は韓米FTA批准案が通過した日、「骨の髄まで親米の大統領と通商官僚が庶民と国の暮らしを売り飛ばしたこの日を忘れない」という発言もした。こうした政治判事の中から金バッジを付ける者も出てきた。
◆扇動に加担者は責任ある態度を見せるべき
振り返ってみると怪談と扇動は深刻だった。経済専門家という人たちの無知または曲学阿世がよく表れた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時の柳時敏(ユ・シミン)議員は「効力停止特別法を作ろう」と主張した。経済秘書官を務めたチョン・テイン氏も「FTAがIMFのような危機10個はもたらす」と述べた。いい加減な経済専門家という非難されても返す言葉がなくなった。
メディアも批判から自由でない。国営放送というKBS(韓国放送公社)はメキシコ経済がNAFTA締結後に破綻状況という歪曲報道で反対世論を扇動した。現地を訪ねて制作したシリーズ放送を週末のゴールデンタイムに流した。南米に散在していた反市場主義性向の政治家と学者を選んでインタビューした歪曲だった。大衆の付和雷同は恥ずかしいほどだ。盲腸の手術費が900万ウォン(約90万円)まで上がる、水道料金が暴騰して雨水を使わなければいけないという扇動が乱舞した。そのような扇動に乗せられてFTAをやめていればどうなっていたか考えるだけでもぞっとする。
◆「無知の疾走」と「引き算の経済」から抜け出すべき
韓米FTAが国会で批准された当時、経済学者対象のアンケート調査の結果は82%の圧倒的な賛成だった。貿易・通商国際法に精通した専門家が立ち上がり、FTAの長所と誇張された懸念を繰り返し指摘しても無視された。「新自由主義に捕獲された親米主義者」というフレーム一つですべてが裁断された。世界のどの国で専門家の識見が大衆の常識に退けられるのかと思うほどだった。
反対は米国でもあった。自動車産業が被害を受けるという理由で関連勤労者の反発が特に強かった。韓国と違うところは専門家グループに対する尊重が生きている点だった。オバマ大統領が政治資金の寄付を意識して労働組合中心の反対運動に振り回され、批准案の提出が遅れると、シンクタンクとワシントンポストやウォールストリートジャーナルなど有力メディアがオバマ大統領に圧力を加えた。
韓米FTAは再協議を含めて新たな摸索を控えている。5年前の混乱が繰り返されてはいけない。反対のための反対に断固対処し、与えるものは与えて受けるものは受けるという堂々たる原則が必要だ。広場の民心を眺める態度から抜け出せなければ、過去5年間に築いた塔はあっという間に崩れてしまう。5年前の無知と誤った判断も省みる必要がある。「当時はよく分かっていなかった」と良心宣言をするか、「申し訳なかった」と謝罪をするか、最小限の責務は果たすべきだ。考慮するべきことは、FTAに対する猛烈な反対が今の経済民主化論争と変わらないという点だ。経済民主化の一環である「町内商圏保護」は5年前の反FTA・反グローバル化の情緒と通じる「引き算の経済学」だ。
極限反対闘争は政界が率先した。テレビなどメディアでも「国を売り飛ばす協定」という見方が続いた。都心では各種市民団体と労働者・農民団体が主導する大規模な集会が絶えなかった。この人たちは亡国的なFTAを撤回するべきだと声を高めた。協定締結の主役を売国奴と呼んだりもした。しかしこの5年間のFTAの成果は反対論者の主張とは正反対だ。両国ともに互恵的利益を抱かせた協定だったことを立証している。
◆韓国・米国経済に「ウィン・ウィン」
過去5年間の韓米貿易は年平均1.7%ずつ増えた。世界を相手にした韓国の貿易が年平均3.5%減少したことを考えると大きな成果だ。原油安などで同じ期間、世界の平均貿易も2.0%減少した。
両国の「ウィン・ウィン」も明確だ。韓国商品の米国市場シェアはFTA発効直前の2011年の2.57%から昨年は3.19%に増えた。同じ期間、米国商品の韓国市場シェアも8.50%から10.64%へと2ポイント以上拡大した。米国の農産物によって焦土化すると懸念された農業でも打撃はなかった。米国産農産物の輸入はむしろ平均1.9%減少した。一方、韓国産農産物の輸出は増えた。輸出増加率も年平均14%にのぼる。自由貿易論者はFTAを契機に農業も輸出産業の可能性を打診できると主張したが、その通りになっている。
米国も利益を得た。当初は自動車産業が打撃を受けるとして反対が多かったが、米国自動車の対韓国輸出はこの2年間、それぞれ30%、37%増えた。米国が最も利益を得た産業が自動車という評価も出ている。このような5年間の結果は我々が期待した通りだ。5年前になぜあれほど国が滅びるかのように騒いだのか分からない状況だ。
◆政界と専門家の誤った判断と背信
韓米FTA締結当時、海外は羨望の目で眺めていた。英エコノミストは「日本が韓国の交渉代表に感心している」とし、韓米FTAを前向きに評価した。中国環球時報までが「EU(欧州連合)に続いて米国とのFTA発効で韓国がグローバルFTAハブに浮上する」と伝えた。
韓国国内だけは非難が続いた。政界は深刻だった。当時の孫鶴圭(ソン・ハッキュ)民主党代表は韓米FTA賛否を国民投票で決めようと主張した。朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長も投資家国家訴訟制度(ISD)を歪曲した意見書で混乱を招いた。当時、民主労働党の李正姫(イ・ジョンヒ)議員、民主党の鄭東泳(チョン・ドンヨン)議員、千正培(チョン・ジョンベ)議員、李鍾杰(イ・ジョンゴル)議員、ハン・ホング聖公会(ソンゴンフェ)大教授、イ・ヘヨン韓神(ハンシン)大教授らは「乙巳条約が恥ずかしい」という刺激的なタイトルのインターネット放送に出演した。韓米FTAは乙巳勒約よりひどいと主張した。判事までが反対に加勢した。ある部長判事は韓米FTA批准案が通過した日、「骨の髄まで親米の大統領と通商官僚が庶民と国の暮らしを売り飛ばしたこの日を忘れない」という発言もした。こうした政治判事の中から金バッジを付ける者も出てきた。
◆扇動に加担者は責任ある態度を見せるべき
振り返ってみると怪談と扇動は深刻だった。経済専門家という人たちの無知または曲学阿世がよく表れた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時の柳時敏(ユ・シミン)議員は「効力停止特別法を作ろう」と主張した。経済秘書官を務めたチョン・テイン氏も「FTAがIMFのような危機10個はもたらす」と述べた。いい加減な経済専門家という非難されても返す言葉がなくなった。
メディアも批判から自由でない。国営放送というKBS(韓国放送公社)はメキシコ経済がNAFTA締結後に破綻状況という歪曲報道で反対世論を扇動した。現地を訪ねて制作したシリーズ放送を週末のゴールデンタイムに流した。南米に散在していた反市場主義性向の政治家と学者を選んでインタビューした歪曲だった。大衆の付和雷同は恥ずかしいほどだ。盲腸の手術費が900万ウォン(約90万円)まで上がる、水道料金が暴騰して雨水を使わなければいけないという扇動が乱舞した。そのような扇動に乗せられてFTAをやめていればどうなっていたか考えるだけでもぞっとする。
◆「無知の疾走」と「引き算の経済」から抜け出すべき
韓米FTAが国会で批准された当時、経済学者対象のアンケート調査の結果は82%の圧倒的な賛成だった。貿易・通商国際法に精通した専門家が立ち上がり、FTAの長所と誇張された懸念を繰り返し指摘しても無視された。「新自由主義に捕獲された親米主義者」というフレーム一つですべてが裁断された。世界のどの国で専門家の識見が大衆の常識に退けられるのかと思うほどだった。
反対は米国でもあった。自動車産業が被害を受けるという理由で関連勤労者の反発が特に強かった。韓国と違うところは専門家グループに対する尊重が生きている点だった。オバマ大統領が政治資金の寄付を意識して労働組合中心の反対運動に振り回され、批准案の提出が遅れると、シンクタンクとワシントンポストやウォールストリートジャーナルなど有力メディアがオバマ大統領に圧力を加えた。
韓米FTAは再協議を含めて新たな摸索を控えている。5年前の混乱が繰り返されてはいけない。反対のための反対に断固対処し、与えるものは与えて受けるものは受けるという堂々たる原則が必要だ。広場の民心を眺める態度から抜け出せなければ、過去5年間に築いた塔はあっという間に崩れてしまう。5年前の無知と誤った判断も省みる必要がある。「当時はよく分かっていなかった」と良心宣言をするか、「申し訳なかった」と謝罪をするか、最小限の責務は果たすべきだ。考慮するべきことは、FTAに対する猛烈な反対が今の経済民主化論争と変わらないという点だ。経済民主化の一環である「町内商圏保護」は5年前の反FTA・反グローバル化の情緒と通じる「引き算の経済学」だ。
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