北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）労働党委員長の異母兄・金正男（キム・ジョンナム）氏が殺害された事件は、ＶＸ神経作用剤によるテロであることが確認された。マレーシア警察は昨日、「殺害された金正男氏の目と顔からＶＸが検出された」と明らかにした。金正男氏殺害にはマレーシアの北朝鮮大使館に所属する外交官が関与し、逃げた容疑者４人は北朝鮮に入国したことも明らかになった。結果的に今回の事件は、北朝鮮当局の指示で戦争時に使用されるＶＸ神経作用剤で金正男氏を殺害したというのが骨格だ。衝撃的であり金正恩政権の残酷性を世界的に浮き彫りにした。

ＶＸ神経作用剤は筋肉を動かす神経伝達物質の分解を阻止することで中枢神経と人体をまひさせる恐ろしい物質だ。１９９５年にオウム真理教の信者が東京の地下鉄にまいて約５５００人の死傷者を出したサリンガスより毒性が１００倍も強い。薄茶色でにおいがないＶＸは１０ミリグラムでも皮膚に触れれば数分以内に死亡する。揮発性が低く、寒い冬に使われる場合、数カ月も効果が続く。１９５２年に英国で開発された。問題は北朝鮮が化学兵器用のＶＸを特定人物を殺害するテロに利用したという事実だ。北朝鮮が戦争用の化学兵器をテロに使う新しいテロの類型を見せたのだ。イスラム国（ＩＳ）などのテロ集団が北朝鮮の行動を模倣するおそれもある。しかも北朝鮮はこうした化学兵器を３０００－５０００トンも保有し、戦時には韓国の国民と軍に向かって散布する計画もある。このように莫大な量の化学兵器を保有する北朝鮮が窮地に追い込まれたり外貨が必要な時にＩＳなどに売れば、深刻な国際問題に増幅する。北朝鮮は化学兵器禁止条約（ＣＷＣ）にも加盟せず、統制が難しい。

国際社会はその間、北朝鮮の核・ミサイルを深く懸念してきた。トランプ米大統領も北朝鮮を「非常に危険な状況」と述べた。国連をはじめとする国際社会は新種犯罪行為をした北朝鮮の化学兵器テロにも強く対応し、警告しなければいけない。韓国政府も北朝鮮の化学兵器テロの可能性を徹底的に点検し、対応策を確保する必要がある。