中国人団体観光客の減少が現実化し免税店業界の危機感も大きくなっている。昨年市場は約34%成長したが、一部企業だけ売り上げが上がっただけで新規事業者は数百億ウォンの赤字を出すなど二極化が激しくなっている。写真はソウル市内のある免税店。(写真=中央フォト)
31日に韓国初の市内免税店である東和免税店が経営権売却を推進中というニュースに免税店業界関係者はこのように反応した。彼は「中国人観光客に頼って過熱競争を行った時に遠からず暗雲が押し寄せるだろうと予想した人は多かった。東和がその始まりのようで不安だ」と話した。
東和免税店は先月19日までホテル新羅(シンラ)に支払わなければならない715億ウォン(約69億円)を返済できなかった。東和免税店の親会社であるロッテ観光開発は竜山(ヨンサン)駅周辺開発事業が清算され大きな損失を出し、これを穴埋めするためにホテル新羅に株式を譲渡した。ホテル新羅は3年後に株式を売り戻して投資金を回収できるプットオプション(売る権利)を付けた。これに伴いホテル新羅が請求権を行使したが、東和免税店は資金を用意できなかった。
23日までに代金を返済できなければ担保株式(30.2%)まで出すことになる。事実上経営権を差し出すことになる。だがホテル新羅は「投資金回収が優先」として買収に難色を示している。新たな売却先が見つからなければ最悪の場合、免税店特許を返却し清算手続きに入ることにもなりかねない。1973年に初めてオープンした市内免税店が歴史の中に姿を消すことになるのだ。
東和免税店の危機は無理な経営と資金難が1次的理由だが、韓国の免税店事業の根本的問題にも原因がある。現在免税店業界売り上げの70%が中国人観光客から出ている。中国人観光客をどれだけ呼び込めるかが収益と直結する。出血競争が起きる理由だ。業界では売り上げの10%だったガイド手数料が、免税店業者が増え30%以上に高騰したとみている。
免税店業者が増えたのは右往左往する政策が一役買った。事業権を特許としたことでまるで免税店が黄金の卵を産むガチョウのように認識された。ここに流通企業間のプライドをかけた競争が加わり免税店は最近大きく増えた。韓国政府は2015年7月と11月の2度にわたり5カ所に事業権を出し、昨年12月にも4カ所を追加で選定した。2015年には6カ所にすぎなかったソウルの市内免税店は2年間で13カ所と2以上増えたのだ。
このため免税市場の二極化も目に付く。昨年韓国の免税店市場規模は12兆2757億ウォンで、前年の9兆1984億ウォンより33.5%成長した。ロッテとホテル新羅など大企業は昨年それぞれ5兆9700億ウォン、3兆3258億ウォンの売り上げを記録し、2015年の4兆7390億ウォンと2兆9311億ウォンより30%前後成長した。これに対し2015年に事業権を取得した5カ所の新規事業者は昨年数百億ウォンの赤字を出した。ここに高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題で中国人観光客の増加傾向が鈍化し免税店の二極化は深刻化した。法務部によると昨年7月に93万5000人に達した中国人訪問客数は8月に89万5000人、9月に74万7000人、10月に69万8000人、11月に53万1000人と減少しており、12月は54万8000人で小幅の増加にとどまった。
中国国営メディアの環球時報は31日、「昨年韓国を訪れた中国人観光客は過去最大だったがTHAAD問題以降は減少傾向に転じた。韓国がTHAADを配置するならば韓国の観光産業の萎縮は避けられないだろう」と報道した。
中国政府の露骨な観光客減らしの兆候もあちこちに現れている。1月に韓国系航空会社のチャーター便就航を認めなかったのに続き、最近ではクルーズ船会社が韓国への寄港を減らす代わりに日本に変更したりもした。
現場では団体観光客の減少を実感している。ソウル市内のあるビジネスホテル関係者は「この数カ月間で前年より20~30%ほど予約が減少したようだ。事態が長期化すればホテル業界でも事業をたたむ所が出てくるかもしれない」と予想した。
専門家らはこの契機に中国政府の報復を恨むばかりではなく、観光産業の体質を変えなければならないと助言する。
慶熙(キョンヒ)大学ホテル観光学科のキム・チョルウォン教授は「中国人観光客は依然として最も重要な顧客であることに間違いない」としながらも、「ただ中国人観光客にだけ頼るのではなく、多様な国の観光客を誘致して市場を多角化しようとする努力が必要だ」と指摘した。
結局東和免税店の危機は免税店業界だけでなく観光業界全般に大きな課題を投げかけた格好だ。
ロッテ観光開発関係者は「免税店事業環境は容易でなく、主力事業(リゾート造成)に集中することにした。ホテル新羅とさまざまな案を議論中であり、だれが経営をしようが東和免税店が閉店することはないだろう」と話している。
この記事を読んで…