東西古今を問わずオーナー（ｏｗｎｅｒ）の共通点は気まぐれだ。しかしオーナー本人は自分が気まぐれだということを知らない場合が多い。周辺状況が随時変化し、多くのことを決めなければならないため、過去の決定を忘れることが少なくないからだ。オーナーは随時変わる自分たちの決定を気まぐれではなく賢明な選択と考える。

最近、米国の第４５代大統領に当選したトランプ氏の気まぐれが話題だ。大統領選挙期間に述べた公約の一部を覆している。その事例を見ると、トランプ氏は２２日（現地時間）、大統領選挙期間に「トランプたたき」に率先していたニューヨークタイムズ（ＮＹＴ）を異例にも訪問した。遊説中は終始「ＮＹＴの記者は世の中で最もだめで不正直な人たち」と非難していたところだ。しかしこの日は状況が違った。トランプ氏は「ＮＹＴに強い敬意を抱いている。ＮＹＴは偉大な米国の、世界の宝石」と称賛した。

トランプ氏の気まぐれ事例は他にもある。トランプ氏はヒラリー・クリントン氏に対するメール捜査を中断すると述べた。トランプ氏は「クリントン氏を起訴するのは米国を分裂させることだ」と理由を説明した。大統領選挙期間にクリントン氏のメールスキャンダルを取り上げながら「彼女を監獄に（Ｌｏｃｋ　ｈｅｒ　ｕｐ」という言葉を連発した以前のトランプ氏ではなかった。


こうしたトランプ氏の気まぐれは彼が商売人だから可能なのだ。専門家はトランプ氏のこうした姿を「予測不可能」「紛らわしい」と規定している。しかしこれは下手な分析にすぎない。トランプ氏は政治家でもなく学者でもない。利益を重視する経済至上主義者らしく自分と周辺の変化によって柔軟に変えるだけだ。トランプ氏は米国を巨大な企業として見ている。したがってお金をうまく稼ぐ国に作ることを望んでいる。そのために過去の決定を変えることは日常茶飯事となるだろう。

そのトランプ氏が韓半島（朝鮮半島）政策をどのように構想するのかに関心が集まっている。トランプ氏は理念ではなく利害計算に基づいて決める人だ。北朝鮮を従来と違う次元、別の視点で見ようとする。トランプ氏は金正恩（キム・ジョンウン）労働党委員長を「狂人」と表現していたが、「ハンバーガーを食べながら核交渉をする」と急変したりもした。またトランプ氏は何度か「北朝鮮と絶対に対話をしないというのは愚かなことだ」と強調した。米国にとって利益になるならトランプ氏は金正恩委員長と手を握ることができる人間だ。北朝鮮の豊富な地下資源と原油を考えれば、トランプ氏にとって北朝鮮は興味の対象だ。

千英宇（チョン・ヨンウ）韓半島未来フォーラム理事長は「北が５回の核実験を通じて核能力をすでに誇示しただけ平和攻勢に転換する可能性が高い」と予想した。北朝鮮が核凍結をカードに交渉する場合、非核化に言及しなかったトランプ氏が前向きに対応する可能性がある。

我々はトランプ氏の気まぐれを心配するばかりでなく、むしろ機会として活用しなければいけない。まだトランプ氏には対北・北核に関する具体的な政策がなく、我々が努力するだけ我々の空間を広げることができる。しかし惜しくも「崔順実（チェ・スンシル）ゲート」に陥った韓国に相応の人物がいないというのが残念だ。

コ・スソク統一文化研究所研究委員／北朝鮮学博士