米戦略国際問題研究所(CSIS)がことし8月に公開した南シナ海、南沙諸島スビ礁の衛星写真。写真の中の航空機イメージはCSISが各格納庫に収容されている軍用機の大きさを推定して原本写真に追加したものだ。(写真提供=CSIS)
前述した常設仲裁裁判所の判決に対し、台湾は受け入れ拒否の立場を表明しただけでなく中国と協力しない方針を打ち出したが、これもまた中国の立場からは多面的に問題になる。まず、南沙諸島最大の島「太平島(英名Itu Aba Island)」は台湾が実効支配しているが、同島の面積は0.51平方平方キロメートル(500メートル×500メートル)だ。判決によると、南沙諸島には島(island)がなく岩石(rocks)だけが存在するためどの国家も200カイリ排他的経済水域を主張することはできず、12カイリ(18キロメートル)の領海だけが認められている。すなわち、南沙諸島は公海で排他的経済水域を主張するほどの地形物(島)はないということだ。
この他にも中国が主張している九段線は、もともと国民党(中華民国)政府が1947年に画定・発表した十一段線(U型線)に基づいているため、当時の十一段線がその内部にある島に対してのみ領有権を主張しており、周辺海域は排除した場合、これは中国の主張とそのアプローチ法に大きな影響を及ぼしかねない。そのカギを握っている台湾は外部からのさまざまな問いにも答えを出さないでいる。
日本もまた米国との同盟強化や自国の防衛力増強に腐心しているが、中国の軍事的脅威はこのような現状に対する理由になっている。ことし7月に行われた参議院選挙で圧勝した自民党と安倍首相はいわゆる「安全保障関連法案(安保法案)」11項目の本格的な協議と実行を進めている。韓国は最近、日本のこの動向を「普通の国化」と見なす傾向があるが、中国はこれを「再武装の道」あるいは「軍国主義化」だと主張している。中国の安保環境を説明する時に最悪のケースは周辺国、特に強大国による連合と包囲だが、中国は日本の動向がこの道に突き進んでいると見ている。
事実、中国と日本は各面で非常に違いのある国だが、特に軍事的側面ではその違いが鮮明だ。日本は他のどの国と比べても軍事的透明性が高い国家だ。今年度の『防衛白書』の場合、北朝鮮を核・ミサイルなど軍事脅威の筆頭に挙げているが、中国の漸増する軍事脅威(例えば透明性や国防費、その態勢)と東シナ海を重く見ている。白書には日本周辺の空域における中国海空軍の活動増加・拡大傾向、南東シナ海での中国軍の活動などが記述されているが、これによる日本海上・航空自衛隊の対応も増加していることも記されている。例を挙げると、中国空軍機に対する昨年度の日本航空自衛隊の緊急発進回数は約450回に上るという。
【コラム】中国をめぐる海洋紛争で 日本、年間450回の緊急出撃(2)
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