M5.8の地震で天井が破損して閉鎖された蔚山の老人ホーム。
夜になるとチェ事務官にはもう一つの心配が生じた。市民にひとまず帰宅するようメッセージを送りたかったが、安全処からはいかなる措置もなかった。蔚山市にはメッセージを送る権限や手段がない。
結局、チェ事務官は翌日0時過ぎ、安全処とつながっている緊急災難文字放送サービス(CBS)サーバーに「ひとまず帰宅して災害放送を聴取してほしい」という内容の文字メッセージ発送を依頼し、0時9分に「蔚山市災害安全対策本部」名義で文字メッセージが届いた。
安全処が余震の震央である慶州に当日午後8時38分と8時41分に発送した文字メーセージも慶州市の要請によるものだ。災難状況を最も速かに国民に知らせるべき安全処が、注文してこそ届く出前のように処理したのだ。
国民があきれる行政が堂々と繰り返される理由は何か。現行法によると、文字メッセージ発送権限は安全処にのみあり、地方自治体をはじめ約380カ所の機関は安全処に文字メッセージ発送を要請することしかできない。20日に記者が会った金起ヒョン(キム・ギヒョン)蔚山市長は「現場の状況を最もよく知る地方自治体に発送権限を与えてほしいと言ったが、安全処が個人情報保護法などを理由に拒否した」と述べた。
安全処の説明なら、選出職の団体長が住民の電話番号を選挙に悪用する場合、個人情報が流出するおそれがあるという意味と聞こえる。しかし緊急災難文字メッセージは一般の文字メッセージとは違い、安全処が指定した通信会社の基地局周辺の携帯電話使用者に自動で発送されるため、地方自治体が電話番号を管理する理由はないという。金市長は「人の生命より重要なものがあるのか」と声を高めた。
安全処はあちこちからメッセージが送られればむしろ混乱すると言って従来の姿勢を維持している。しかし一線の現場をよく知らない安全処の公務員が現在のように状況把握にもたつけば、国民の生命と財産に被害が生じる。中央から地方に災難文字メッセージ発送権限の果敢な委譲が必要だ。
チェ・ウンギョン・ナショナル部記者
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