知韓派の米国議員からなる「コリアコーカス」の共同議長を務める民主党のジェリー・コノリー下院議員は４月のインタビューで、ヒラリー・クリントン氏と韓国の関係を電話での対話を例に挙げて表した。「外交は人間の間のケミ（ｃｈｅｍｉｓｔｒｙ）にかかっている。（顔を突き合わせず）電話だけでも相手が眉を上げたのか笑ったのかすべて分かる。クリントン氏は（韓国の指導者を）知っているため声だけを聞いても分かる」。その通りだ。盧武鉉（ノ・ムヒョン）政権当時に外交安保を担当した人も私見を前提に「お互い慣れているという側面だけで見ると、クリントン氏側が関係を結ぶのに容易だろう。進入費用が比較的に少ないのでは」と慎重に話した。

クリントン氏陣営には隠れた韓国通も多い。クリントン氏の副大統領候補群に挙がっているティム・ケイン上院議員の補佐官が「クリントン氏が執権すれば韓国と東アジアを取りまとめる人」と語ったローラ・ローゼンバーガー外交担当者は、韓国当局者と２００８年に平壌（ピョンヤン）でも会っている。寧辺（ヨンビョン）冷却塔解体当時に国務省所属で北朝鮮を訪問した。

一方、共和党のドナルド・トランプ氏は韓米同盟を全体でない純益の観点だけで眺めるため、論議を呼ぶ。世界最強の米軍情報・機甲・空軍戦力が韓国に駐留するため韓国を守るという効果は明らかだ。しかし同時に米国の軍事力を東アジアに投射する前哨基地として韓国が米国に提供する利益も確実にある。簡単に言えば、在韓米軍が抜ければ高高度ミサイル防衛（ＴＨＡＡＤ）体系を韓国に配備する名分も消える。また、米国大統領として金正恩（キム・ジョンウン）国務委員長との対話は極度に鋭敏なイシューであるため、、北朝鮮をよく知るほど簡単には取り出しにくい戦略的カードだが、トランプ氏はあまりにも簡単に言及し、その誠意が半減する。


しかしクリントン氏は韓国をより知り、トランプ氏はあまりにも知らないため、韓国にはどちらがよいという期待は短見だ。トランプ氏が通商問題を大統領選の前面に持ち出したが、振り返ってみると韓国は米民主党政権当時の通商圧力で試練を経験している。ビル・クリントン政権は金泳三（キム・ヨンサム）政権に対し、農産物市場開放のためのウルグアイラウンド（ＵＲ）協力を強く要求し、コメ問題が生じた。オバマ大統領は就任後、すでに署名した韓米自由貿易協定（ＦＴＡ）の調整を要求し、結局、李明博（イ・ミョンバク）政権は追加交渉をしなければならなかった。韓日関係でもクリントン氏は旧日本軍慰安婦被害者を「性奴隷」と呼んで韓国民の情緒と一致したが、同時にクリントン氏の周辺には韓日米軍事協力を強調する参謀が並んでいる。

トランプ氏の外交安保を担当するパレス氏は「すべての米国大統領が『アメリカファースト』だったが、他の人は口にせず、トランプ氏は話したという差にすぎない」と主張した。１１月に誰が当選しようと、米国の国益を取りまとめる「米国大統領」という点でその言葉には一理ある。トランプ氏を擁護するわけではなく、クリントン氏であれトランプ氏であれ我々は油断してはいけないという常識を再確認しようということだ。

チェ・ビョンゴン・ワシントン特派員