3日、鳥取市童館で趙澤元(チョ・テクウォン)氏が振りつけた朝鮮初の舞踊劇『鶴』を76年ぶりに復活させて公演する鞠守鎬(クク・スホ)氏。
1940年、東京初演当時に鶴の扮装をした趙澤元(チョ・テクウォン)氏。
「ああ春なのだな/冬の間に凍った氷が溶けて、小川をちょろちょろ流れる/さあ流れる水でクチバシを洗え…/さあ足をしゃんと伸ばして翼を広げろ/体も心もぱっと開け」。ソプラノ歌手の松田千絵氏の歌に合わせ鞠氏の身振り手振りが空を切る。日帝強制占領期間、朝鮮人の疲れ果てた心身を鶴の飛翔でなぐさめた作曲者の心が厚い。曲の中間に「アリラン」旋律を調和させた配慮にも胸が熱くなる。
『鶴』は舞踊詩と呼ばれた全4幕1時間の大作だった。趙澤元氏は日本の作曲家である高木東六氏(1904~2006)に音楽を依頼して朝鮮風のバレエ組曲を夢見た。伝統舞楽の巨匠韓成俊(ハン・ソンジュン、1874~1941)氏に習った鶴の舞を基に、鶴が四季を過ごす田園風景を東洋哲学というテーマで構成した。今年、韓成俊芸術賞を受けた鞠氏が『鶴』を復活させることによって韓成俊-趙澤元-宋范(ソン・ボム)-鞠守鎬につながる舞踏派閥がつくられた。
この日の公演に先立ち行われた学術発表会では、高木氏の旧自宅から楽譜を発掘した藤井浩基・島根大学音楽教育科教授と、これを寄贈された舞踏資料館「研駱斎(ヨンナクジェ)館長のソン・キスク韓国芸術総合学校教授がそれぞれの観点から『鶴』を評価した。藤井教授は「今日のこの場は鳥取県出身の近代作曲家である高木の10周忌の記念を兼ねておりさらに意味深い」として「フランス留学当時、モーリス・ラヴェルに影響を受けた跡が『ボレロ風』の音調に残っている」と分析した。ソン教授は「近代時期、韓国と日本の芸術界の2人の巨匠が協業してつくり出した公演文化の遺産を今日の見方で再構成し反すうするという点で貴重で価値ある作業」と意味づけした。ピアノの演奏をつとめた松本哲平・駒沢女子大学教授は「日帝強制占領期間に両国の従属関係をこえた芸術魂の交流を通じてその時代を改めて眺めることができるきっかけになった」として喜んだ。
この日の行事を見守った高木作曲家の娘である高木緑さんは「祖先の音楽を素晴らしい舞で表現した鞠守鎬先生の独特の振り付けの創作や足の動きなど深い感銘を受けた」と感謝していた。狭い空間のために130人余りの招待客だけが集まった公演会場には、鳥取市居住の在日同胞が訪れて感動の瞬間をともにした。
『鶴』は来月26日ソウル国立劇場タルオルム劇場で歴史の継承と拡散という新たな境地を披露する。鞠守鎬氏をはじめ現代舞踊のキム・ボクヒ氏、バレエのイ・ウォングク氏が結集してジャンルをこえた再創造を披露する予定だ。
◆趙澤元=近代の新舞踊を切り開いた代表的な振付師兼舞踊家。「踊りというのは、動く思索」と定義した「舞想論」を確立し、韓国舞踊を舞台芸術に昇華させた先駆者だ。日帝強制占領期間から1970年代まで約1500回余りにわたり体系的な海外巡演を行って韓国舞踊のグローバル化を実現した『晩鐘』『ポエム』『袈裟胡蝶』『春香組曲』『鶴』などの新舞踊の名作レパートリーを残した。1974年に金冠文化勲章第1号を受賞した。
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