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【コラム】金正恩の核、平壌のアルファ碁(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版

イラスト=キム・フェリョン

世の中になかったことが起きた。平壌(ピョンヤン)の最高指導者が核弾頭の前に立ったのだ。一昨日の朝、北朝鮮の官営宣伝メディアは写真数枚とともにこの姿を公開した。地下収蔵庫に徹底的に隠すべき秘密戦略兵器を天下に公開するという初めての事態だった。金正恩の計算はこうであるはずだ。「水素弾実験成功」という発表にもびくともしない南朝鮮と国際社会に実物の核弾頭を投じてみよう。過去最大規模の合同軍事演習で圧力を加えてきた韓米が少しは動き出すだろう。ソウルの人民は核戦争の恐怖の中でざわつき、対北朝鮮圧力を緩めようという世論が力を得るだろう。このように32歳の最高指導者は算盤を弾いたのかもしれない。

しかし予想は外れた。核弾頭だといって公開した銀色の球面体は直径20ミリの碁石に押し出された。人間の李世ドル(イ・セドル)九段とグーグル傘下ディープマインドの囲碁プログラム「アルファ碁」による世紀の対決に埋もれてしまったのだ。金正恩(キム・ジョンウン)のニュースで韓国メディアのトップを飾るという労働党宣伝扇動部の構想(これを韓国情報当局は「北版ヘッドライン戦略」と呼ぶ)が今度は失敗した。

この数日間、世間の関心はすべて人工知能が開く人類の未来に注がれている。平壌指導部だけが核を握りしめてじたばたする局面だ。歴史的な対局を一行も扱えずにいるのは地球上で北朝鮮の報道機関だけだ。労働新聞1面全体を満たした金正恩と核弾頭の写真が哀れに感じられるのはこうした理由からだ。


4年前、金正恩の登場に関心と期待が向かったのは事実だ。10代でスイス・ベルンの国際学校を経験した海外留学経験者は何かが違うだろうという側面だった。アップルのコンピューターを執務室の机に置いた若い指導者は先代の首領の金日成(キム・イルソン)・金正日(キム・ジョンイル)とは違うのではという考えも関係していた。

執権直後の2012年4月の最初の公開演説で「二度と我が人民が苦しむことなく、社会主義の富貴栄華を享受するようにしよう」と約束した時までは雰囲気も良かった。3カ月後の牡丹峰(モランボン)楽団創立公演に米資本主義の象徴であるミッキーマウスのキャラクターが登場したのも同じだ。20余りの経済開放特区を宣言したのも関心を引くのに十分だった。

しかしそれだけだった。若い最高指導者は速いペースで絶対権力に握っていき、ある瞬間から統制不能になった。彼が権力の座につくと、称賛と崇拝の狂風が北朝鮮全域を渦巻いた。いわゆる「白頭(ペクドゥ)血統」という彼の家系の偶像化はすでにピークとなっている。金日成・金正日当時に決して劣らない水準だ。遠からず生母の高英姫(コ・ヨンヒ、2004年死去)を「敬愛なる母」として崇める作業が始まるというのが韓国情報当局の判断だ。



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