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【コラム】目の前に近づいた「人口の崖」=韓国(1)

ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
数日前にふとトルストイの『人はなんで生きるか』という小説を思い出した。「児童親和都市」「子育てしやすい都市」を考えている中で大文豪の言葉が何度も私の頭の中を過ぎ去っていった。この小説の主人公の天使は神の命令を断った罪で裸のまま人間社会に追い出されたが、貧しい靴屋のおかげで凍死せず生き返る。靴屋は寒さに震える天使に何の条件も迷いもなく大切なコートを脱いで与え一緒に暮らしていく。人間の心には根源的に他人に対する「関心」と「愛」があるということだ。

子どもの立場から見れば果たして世の中は幸せだろうか? 大人たちが条件のない関心と愛で子どもを包んでいるのか?

大韓民国は大人が大変だという理由で妊娠と出産を忌避し、子どもが生まれるのも大変だ。どうにか母胎を抜け出し世の中に出てくれば途轍もない保育費と私教育費、高い授業料、殺人的な青年失業など、苦痛と試練の連続だ。大人にとって子どもは憂いと心配事で、負担になりわずらわしい存在だ。


この前ある政治家が少子化対策として「朝鮮族を大挙受け入れなければならない」と話して議論を呼んだ。出生率低下の原因と対策はとても複雑で難解だが、出し抜けに口にしたことが非難を自ら招いたのだ。

大韓民国は世界で最も子育てが大変なところだ。妊娠と出産に対する支援は多少増えたが保育園から大学まで私教育費の負担は大きい。予備校と課外勉強に毎月数十万ウォンから数百万ウォンまで私教育費を注ぎ込む。大学授業料は米国に次いで高い。子ども1人当たり平均教育費は3億ウォンだ。

韓国の出生率は1.19人で経済協力開発機構(OECD)平均の1.74人に大きく及ばない世界最低水準だ。人口は2030年の5216万人をピークに減り続け2091年には3000万人以下に落ちるという。超高齢化社会になり消費も減り、働く人もなく、投資もされない「人口の崖」の無気力な世界が目の前に近づいた。

(中央SUNDAY第469号)



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