乙未年が暮れる。毎年のように年末に一年を振り返ると満足感よりも残念な思いが多い。それでも私個人的には、みんなが一緒に良い暮らしをする同伴成長社会を作ろうと努力したし、また「三一運動の第34人」と呼ばれるフランク・ウィリアム・スコフィールド博士(韓国名ソク・ホピル)の業績と精神を知らせたという充実感はある。
来年が初来韓100周年となるスコフィールド博士は、日帝強占期と独立運動を経験し、自らの運命を決める力を備えていない民族と国家は希望がないと力説した。解放70年を迎えた今、我々は果たして時代的課題を自ら解決する準備をしているのだろうか。時代的な課題は国内外の環境により多様に表れる。ある時代には軍事力の強化が国家的課題となり、ある時代には経済力・外交力または資本主義市場経済、自由民主主義のような体制と制度の実現が最優先課題となる。しかし国家興亡史は時代を問わず、一国が必ず備えるべき基本条件があることを教えている。それは国家共同体構成員の和合だ。
共同体構成員の和合をなす土台は統治者と国民の間の信頼だ。孔子は国家経営の最も重要な要素に「食糧(経済力)」「軍事力」「信頼」の3つを挙げ、特に「民が指導者を信頼すること」を何よりも重視した。民が信頼しなければ国は存立できないからだ。指導者に対する国民の信頼は指導者の正直さから生じる。ところが最近、朴槿恵(パク・クネ)大統領をはじめとする政府と与党は、国民の信頼を破る矛盾した話をしている。崔ギョン煥(チェ・ギョンファン)経済副首相は10日、「経済が厳しいといっても、国民が体感する景気はそれほど悪くない。危機の可能性はない」と断定した。ところが大統領と与党セヌリ党は来年の韓国経済を「危機状況」と診断し、「非常対策」を準備するべきだと主張している。少なくとも一方は嘘をついているか、世の中を見間違っているということだ。韓国経済は崔ギョン煥長官の発言とは違い、危機要素を抱えている。しかし国家非常事態を云々するほどではない。三権分立を無視して国会議長に圧力を加え、大統領が関心を持つ経済法案を職権上程しなければいけないほどの危機状況というのはもっと違う。党利党略のために国民を欺けば、政権に対する信頼が崩れるだけでなく、長期的には国に大きな危険を招く。指導者は国民に正直でなければいけない。
正直さとともに指導者に対する国民の信頼を築くもう一つの要素は、指導者の責任感だ。指導者の責任感に関連する象徴は、トルーマン米大統領の執務室の札に書かれた言葉が代表的だ。「The Buck Stops Here」(責任は私が取る)。トルーマンは大統領の責務を避けたり転嫁しないことで有名だ。その結果、米国の歴代大統領評判で常に上位に入る。このように最高指導者の責任感は国民から信頼、尊敬、そして支持を得る基本条件だ。しかし韓国の政治では与野党を問わず責任を取ろうとする人はあまり見られない。非常に残念なことだ。
指導者の正直さと責任感が信頼をもたらし、信頼が社会的弱者を助ける善良な心と一緒になる時、共同体構成員間の真の和合に到達することができる。善良な心は、不幸な人を憐れみいたむ孟子の惻隠之心、利己的自我を統制するアダム・スミスの公平な観察者(impartial spectator)のようなものだ。善良な心が必要なのは不平等解消のためだ。構成員間の行き過ぎた不平等は社会の正義を毀損し、共同体に対する所属感を剥奪し、共同体の安定を害する。2013年基準で上位1%の資産は全体資産の26.0%を占めるのに対し、下位50%の資産比率は1.9%にすぎないほど、韓国社会は深刻な不平等にある。構造的な不平等解消は法と制度によって推進するべきだが、その出発は不幸な人を助け、その人たちの痛みに共感する善良な心だ。社会構成員の善良な心は指導層の率先垂範から始まる。指導層の社会的弱者に対する温かい配慮と共感が国民を導くからだ。スコフィールド博士は1960年代の経済成長過程に表れた貧富の差を見て、韓国では貧しい人々に対する富裕層の配慮がないと嘆いた。状況は悪化し、今日は弱者に対する強者の配慮がないことをさらに残念に思う。同伴成長文化の醸成と拡散が速度を上げなければならない理由だ。
韓国は105年前の庚戌国恥(日韓併合)、経済政策の自律性が制限された97年の国際通貨基金(IMF)救済金融などの事態が再発しないよう、我々の力で国の未来を決定できる準備をしなければいけない。新年の丙申年には信頼、正直、責任感、善良な心が我々の社会を満たすことを祈る。
鄭雲燦(チョン・ウンチャン)同伴成長研究所理事長/元首相
来年が初来韓100周年となるスコフィールド博士は、日帝強占期と独立運動を経験し、自らの運命を決める力を備えていない民族と国家は希望がないと力説した。解放70年を迎えた今、我々は果たして時代的課題を自ら解決する準備をしているのだろうか。時代的な課題は国内外の環境により多様に表れる。ある時代には軍事力の強化が国家的課題となり、ある時代には経済力・外交力または資本主義市場経済、自由民主主義のような体制と制度の実現が最優先課題となる。しかし国家興亡史は時代を問わず、一国が必ず備えるべき基本条件があることを教えている。それは国家共同体構成員の和合だ。
共同体構成員の和合をなす土台は統治者と国民の間の信頼だ。孔子は国家経営の最も重要な要素に「食糧(経済力)」「軍事力」「信頼」の3つを挙げ、特に「民が指導者を信頼すること」を何よりも重視した。民が信頼しなければ国は存立できないからだ。指導者に対する国民の信頼は指導者の正直さから生じる。ところが最近、朴槿恵(パク・クネ)大統領をはじめとする政府と与党は、国民の信頼を破る矛盾した話をしている。崔ギョン煥(チェ・ギョンファン)経済副首相は10日、「経済が厳しいといっても、国民が体感する景気はそれほど悪くない。危機の可能性はない」と断定した。ところが大統領と与党セヌリ党は来年の韓国経済を「危機状況」と診断し、「非常対策」を準備するべきだと主張している。少なくとも一方は嘘をついているか、世の中を見間違っているということだ。韓国経済は崔ギョン煥長官の発言とは違い、危機要素を抱えている。しかし国家非常事態を云々するほどではない。三権分立を無視して国会議長に圧力を加え、大統領が関心を持つ経済法案を職権上程しなければいけないほどの危機状況というのはもっと違う。党利党略のために国民を欺けば、政権に対する信頼が崩れるだけでなく、長期的には国に大きな危険を招く。指導者は国民に正直でなければいけない。
正直さとともに指導者に対する国民の信頼を築くもう一つの要素は、指導者の責任感だ。指導者の責任感に関連する象徴は、トルーマン米大統領の執務室の札に書かれた言葉が代表的だ。「The Buck Stops Here」(責任は私が取る)。トルーマンは大統領の責務を避けたり転嫁しないことで有名だ。その結果、米国の歴代大統領評判で常に上位に入る。このように最高指導者の責任感は国民から信頼、尊敬、そして支持を得る基本条件だ。しかし韓国の政治では与野党を問わず責任を取ろうとする人はあまり見られない。非常に残念なことだ。
指導者の正直さと責任感が信頼をもたらし、信頼が社会的弱者を助ける善良な心と一緒になる時、共同体構成員間の真の和合に到達することができる。善良な心は、不幸な人を憐れみいたむ孟子の惻隠之心、利己的自我を統制するアダム・スミスの公平な観察者(impartial spectator)のようなものだ。善良な心が必要なのは不平等解消のためだ。構成員間の行き過ぎた不平等は社会の正義を毀損し、共同体に対する所属感を剥奪し、共同体の安定を害する。2013年基準で上位1%の資産は全体資産の26.0%を占めるのに対し、下位50%の資産比率は1.9%にすぎないほど、韓国社会は深刻な不平等にある。構造的な不平等解消は法と制度によって推進するべきだが、その出発は不幸な人を助け、その人たちの痛みに共感する善良な心だ。社会構成員の善良な心は指導層の率先垂範から始まる。指導層の社会的弱者に対する温かい配慮と共感が国民を導くからだ。スコフィールド博士は1960年代の経済成長過程に表れた貧富の差を見て、韓国では貧しい人々に対する富裕層の配慮がないと嘆いた。状況は悪化し、今日は弱者に対する強者の配慮がないことをさらに残念に思う。同伴成長文化の醸成と拡散が速度を上げなければならない理由だ。
韓国は105年前の庚戌国恥(日韓併合)、経済政策の自律性が制限された97年の国際通貨基金(IMF)救済金融などの事態が再発しないよう、我々の力で国の未来を決定できる準備をしなければいけない。新年の丙申年には信頼、正直、責任感、善良な心が我々の社会を満たすことを祈る。
鄭雲燦(チョン・ウンチャン)同伴成長研究所理事長/元首相
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