少し前に江原道(カンウォンド)の鉄原(チョルウォン)まで行く観光列車「DMZ(非武装地帯)トレイン」に乗った。南北分断の現場を小学生の息子に見せてあげたいと思ったからだ。列車内は50代と思われる団体観光客でぎっしり埋まっていた。彼らはゆったりと何かを食べながら話していた。終点の白馬(ペンマ)高地駅に降りた後、安保観光ツアーが始まると団体観光客の雰囲気ががらりと変わった。目の前に南方限界線の鉄柵が近づく緊張感の中でも、多くの人々が男女単位で手を握ったり腕や肩を組んだりして歩いていた。日本では見られない姿に私は率直に驚き、恥ずかしかった。
韓国人が、日本人について持っている誤解の1つが「日本人は愛情表現が開放的」というものだ。
実際ソウルに住む多くの日本人たちは「韓国こそ愛情表現の先進国」と口をそろえる。日本では、子供が生まると夫婦が子供の前で手を握る姿をほとんど見せない。ところが韓国の若いカップルは公共の場所でも互いに目をぴたっと合わせて感情を色濃く表現する。こうした場面を見るたびに多くの日本人たちは驚く。
もちろん韓国もかつては日本のように他人の前で夫婦でも恋人でも大胆な愛情表現をしなかったと韓国の知人らが説明してくれた。それならば、なぜ韓国にこのような変化が起きたのだろうか。
子供のママである韓国人のシンさん(35)は「60年代以降に生まれて80年代の学生時代に民主化を経験した親たちは、概して子供の前で愛情表現をするのはむしろ子供の情緒発達にも良いと考えているようだ」と解説した。民主化を体験しながら、隠すことなくありのまま行動して見せた方が良いという価値観が生まれたというのが彼女の説明だ。
趙世暎(チョ・セヨン)東西(トンソ)大学日本研究センター長は「日本は1945年の敗戦後、米国軍政当局によって民主化が行われたが、韓国は市民の力で民主化を成し遂げたし韓国人はこれを(日本より)さらに誇らしく思っている」と話した。
ふと東京特派員を過ごした韓国の40代のジャーナリストの言葉を思い出す。「日本人たちには感情を率直に表現することを敬遠する文化がある。それで感情の戦いである恋愛がとても不得意なようだ」。2年前の彼の話が的をえていて閉口した記憶がある。
日本はいつになったら韓国のように「愛情表現先進国」になるのだろうか。その可能性を確かめてみるために日本に住む30~40代の女性たちの考えを尋ねた。ところが彼女たちの返事から大きな変化の可能性を見つけ出すことはできなかった。「結婚したら男女ではなく子供の母親や父親となる」という従来の認識は相変わらずだったし、「子供たちが大きくなれば(夫ではなく)友人たちと旅行でも行きたい」という返事もあった。
このように似ていそうに見えながらも大いに違う現代史を経験した韓国と日本は、夫婦と恋人の愛情表現においても少なくない社会・文化的な差を見せている。
大貫智子・毎日新聞ソウル特派員
韓国人が、日本人について持っている誤解の1つが「日本人は愛情表現が開放的」というものだ。
実際ソウルに住む多くの日本人たちは「韓国こそ愛情表現の先進国」と口をそろえる。日本では、子供が生まると夫婦が子供の前で手を握る姿をほとんど見せない。ところが韓国の若いカップルは公共の場所でも互いに目をぴたっと合わせて感情を色濃く表現する。こうした場面を見るたびに多くの日本人たちは驚く。
もちろん韓国もかつては日本のように他人の前で夫婦でも恋人でも大胆な愛情表現をしなかったと韓国の知人らが説明してくれた。それならば、なぜ韓国にこのような変化が起きたのだろうか。
子供のママである韓国人のシンさん(35)は「60年代以降に生まれて80年代の学生時代に民主化を経験した親たちは、概して子供の前で愛情表現をするのはむしろ子供の情緒発達にも良いと考えているようだ」と解説した。民主化を体験しながら、隠すことなくありのまま行動して見せた方が良いという価値観が生まれたというのが彼女の説明だ。
趙世暎(チョ・セヨン)東西(トンソ)大学日本研究センター長は「日本は1945年の敗戦後、米国軍政当局によって民主化が行われたが、韓国は市民の力で民主化を成し遂げたし韓国人はこれを(日本より)さらに誇らしく思っている」と話した。
ふと東京特派員を過ごした韓国の40代のジャーナリストの言葉を思い出す。「日本人たちには感情を率直に表現することを敬遠する文化がある。それで感情の戦いである恋愛がとても不得意なようだ」。2年前の彼の話が的をえていて閉口した記憶がある。
日本はいつになったら韓国のように「愛情表現先進国」になるのだろうか。その可能性を確かめてみるために日本に住む30~40代の女性たちの考えを尋ねた。ところが彼女たちの返事から大きな変化の可能性を見つけ出すことはできなかった。「結婚したら男女ではなく子供の母親や父親となる」という従来の認識は相変わらずだったし、「子供たちが大きくなれば(夫ではなく)友人たちと旅行でも行きたい」という返事もあった。
このように似ていそうに見えながらも大いに違う現代史を経験した韓国と日本は、夫婦と恋人の愛情表現においても少なくない社会・文化的な差を見せている。
大貫智子・毎日新聞ソウル特派員
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