不法滞留者らはいつ発覚して追い出されるかもしれないとハラハラしながら暮らしている。国民健康保険に入ることができず、子供が大きな病気にでもかかれば数カ月分の稼ぎを注ぎ込まなければならない。それにもかかわらず、彼らは韓国にずっと留まることを望む。理由は何か。

韓国に来た最初の目的はお金を稼ぐためだ。故国よりも賃金水準がはるかに高い韓国で金を稼いで帰国するのが夢だ。だが、それが全てではない。５歳の無国籍少女クルジャリナの母親（４３、キルギスタン）は話す。「いろいろやって幼稚園に入れました。教育内容が故国とは途方もない違いがあります。クルジャリナの知識レベルは故国の同じ年頃よりもはるかに高いのです。どうにかして子供がここで自由に勉強できるといいのですが。ところで２年後に小学校に入れるかどうか…」。

教育システムがしっかり整った国は韓国でなくとも多い。不法滞在者たちは韓国にはほかにも何かあるという。まず西欧諸国はアジア人を見下す印象が強いと言った。


日本に対しては、すっきりしない記憶を持った人がいる。レポン（３）の母親（３４、ベトナム）は話した。「韓国にくる前は日本にいました。合法的な身分でした。当初は工場の社長が１カ月１５０万ウォンをくれると言っていたのに、実際には６０万～７０万ウォンしかくれなかったのです」。

韓国に対する彼の評価はこうだ。「不法滞留者には、さらに大変な仕事をさせます。私たちを平等に接することはないけれども、日本のように約束を守らないことはありません。麻薬・泥棒も少ないし…。かなりの国より子供たちが安全でここで育てたいのです」。

また別の韓国の魅力もある。行き交う「情」だ。子供を見た近所の大人たちが、かわいいといいながら頭をなでて、子供や孫が着ていた服を持ってきてくれるのは、自分たちの国で見られないことだと言った。国民健康保険に入っていないという理由で病院から入院保証金を要求され地団駄を踏んでいたときは社会・宗教団体が支援の手を差し出してくれた。レポンの父親は「子供が育ったら、助けてくれた韓国の役に立てたら良いと思う」と話した。