韓民求（ハン・ミング）国防部長官が１０日、京畿道（キョンギド）坡州（パジュ）第１師団の非武装地帯（ＤＭＺ）最前方監視哨所（ＧＰ）を訪問した。木箱入り地雷爆発事故が発生した地点からわずか７５０メートル離れたところだ。現国防長官が最前方のＧＰを訪れたのは２００５年（尹光雄元国防部長官）以来１０年ぶり。韓長官は将兵を激励し、「敵が挑発してくればＧＰ長の判断のもと躊躇せず自信を持って果敢かつ断固たる対応をしてほしい」と指示した。また「北と戦って我々が不足するものは一つもない」と強調した。

国防部長官が自ら乗り出すほど軍は断固たる対応を見せている。合同参謀本部は１０日、北朝鮮に対する警告声明を出した後、「北が今回の挑発について謝罪し、責任者を処罰することを厳重に求める」とし「数回にわたり警告したように挑発には容赦のない代価を支払わせる」と述べた。

軍の最初の措置は北朝鮮に対する心理戦の再開だった。この日午後５時以降、散発的に中西部軍事境界線一帯２カ所で対北朝鮮拡声器放送（宣伝放送）を始めた。放送期間は決められていない。


対北朝鮮放送用拡声器は２００４年６月、南北将官級会談の合意に基づき撤去された。しかし２０１０年の韓国哨戒艦「天安」事件後、軍事境界線一帯１１カ所に放送施設を再び設置し、移動式施設も２個保有している。ただ、実際の放送は留保した。

対北朝鮮放送は北朝鮮がビラとともに敏感に反応する心理戦だ。外部と遮断された北朝鮮の住民に生きた情報が伝えられ、体制に不満を抱く勢力が出てくる可能性があるからだ。２０１０年の「天安」爆沈事件対応レベルで設置した対北朝鮮拡声器は最新型で、放送内容が休戦ラインから数十キロ離れたところでもはっきりと聞こえるという。当時、北朝鮮軍は「拡声器を照準射撃する」と主張するほど敏感な反応を見せた。国防部の当局者は「北が最も負担に感じるものの一つが我々の対北心理戦」とし「放送は今回の挑発を糾弾し、体制の優位を強調する内容が主な内容になるだろう」と述べた。また「北の軍が放送施設を攻撃する場合、原点打撃方針に基づき報復する」と語った。

軍当局は１７日に始まる韓米乙支（ウルチ）フリーダムガーディアン（ＵＦＧ）演習と今月末の軍の統合火力演習も強化する予定だ。北朝鮮の弱点をつくという趣旨だ。北朝鮮はその間、「韓米連合訓練を中断すれば南北対話の再開が可能」と述べ、軍事訓練を大きな脅威と受け止めてきた。

今回の事件について共同調査を行った国連軍司令部軍事停戦委は北朝鮮に将官級協議の開催を要請することにした。将官級協議を通じて公式的に抗議し、関係者の処罰を要求する手続きを踏むためだ。国連軍司令部は「北朝鮮軍が韓国軍将兵２人に負傷させ、停戦協定６、７、８項を違反したことを強く糾弾する」と明らかにした。政府の対応ではないが、自由北朝鮮運動連合など脱北者団体の対北朝鮮ビラ散布も活発になる可能性がある。

しかし軍当局の断固たる対応意志にもかかわらず、手段が制限されているという点で悩みも少なくない。軍は軍事的報復に対しては慎重だ。戦争につながる可能性があるからだ。

一方、軍は今回の事件をソーシャルネットワークサービス（ＳＮＳ）を通じて前日（９日）に公開した国会国防委員会所属の金光珍（キム・グァンジン）新政治民主連合議員を批判している。匿名を求めた軍関係者は「メディアも国連軍の調査結果などを勘案してエンバーゴ（一時的報道猶予）を受け入れ、報道を自制した状況で、国防委員が敏感な事案をあらかじめ公開したのは国家の利益にならない」と述べた。