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【コラム】亡命と亡霊の間=韓国(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
幽霊が街中を徘徊している。路地裏でもぞもぞしているかと思ったら堂々と大通りに出てきた。今月に入り、MERSが停滞する隙間に素早く食い込んできた。新聞やテレビに登場しては声を高める。夏の川水の緑藻のように拡散する一途だ。この頃盛んに名をはせている「脱北亡命」という幽霊だ。

その姿を見ると華麗なことこの上ない。北朝鮮労働党の高位級幹部とほのめかしていたら階級がぐっと上がった。金正恩(キム・ジョンウン)の秘密資金を管理する党39号室の核心という話に軍需工場を掌握する第2経済委責任者級という主張まで増した。南北国防長官会談の時に来た「パク・スンウォン」というスリースター(三ツ星)の将軍(北朝鮮軍の上将)まで実名でキャスティングされた。海外に外貨稼ぎのために出ていた200人余りは、戻ることを拒否しているという話も出てきた。北朝鮮イシューを20年以上取材してきた筆者が見ても、この程度になれば脱北亡命説の最高潮であり、はやり言葉で言えば「歴代級」だ。

このまま行けば平壌(ピョンヤン)版「エクソダス」が差し迫っているような雰囲気だ。金正恩体制が執権4年で大きな亀裂が入ったという観測も可能なぐらいだ。だがその姿の服の下の肌を見てみると戸惑う。最低限の構成要件もそろっていなかったからだ。金正日(キム・ジョンイル)政権の時の軍部最側近の1人パク・ジェキョン隊長の亡命説も同じだ。事実であれば「北朝鮮軍の将軍亡命工作」を念願事業と考えてきた韓国軍の情報当局にとっては快挙だ。だが実体がない。いつ、どこで脱北をし、どこへ向かったのかも五里霧中だ。


事情がこうだと笑えないことも起きている。ある放送番組では「一体この脱北者はどこにいるのですか」というアンカーの問いに「大韓民国内にいるのは確実だ」という記者の返事が続く。表情のないアンカーの鋭い質問が続くと、苦しい返事が空を切る。「対北朝鮮の消息筋」を前面に出したそのほかのメディアの伝言は、信頼度に決定打を飛ばし続ける。

このあたりで黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ)の亡命を反すうしてみる必要がある。1997年2月、北京在韓国公館に彼が入ってくるとすぐに政府は報道機関の編集・報道責任者を呼んだ。詳しい経緯説明と報道協力の要請が続いた。黄秘書は綱引き外交の末、67日ぶりにフィリピンを経てソウルに到着できた。金正日総書記の妻のおい李韓永(イ・ハンヨン、本名 李一男)氏も82年9月にスイスの韓国公館亡命時に6カ国をまたぐ鬼ごっこをした。高官の脱北というのは「ちまたの噂」説レベルで扱われる問題ではないという話だ。



【コラム】亡命と亡霊の間=韓国(2)

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