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【中央時評】あきらめの罠にはまった韓国社会

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
私が幼い頃、よく聞いた言葉がある。韓国ではできることもなくできないこともないと。「バック」があればできないこともでき、「バック」がなければできることもできないということだ。一言で韓国社会はぼんやりとした腐敗社会ということだった。それでもその時は「これではだめだ。変えてみよう」という意欲があったし、その集団的な意欲が民主主義と経済発展をもたらした。

しかし最近は新たにぼんやりとした現象が表れている。諦めてしまうことだ。あたかも麻酔をうった患者のように。現在の韓国社会にはあらゆる分野にわたり深刻な危機要因が隠れている。劉承ミン(ユ・スンミン)事態で赤裸々に表れた政治の不在、低成長と二極化という経済危機、まだ解決策が見えない地域的・理念的葛藤、柔らかい言葉が求められる国家の低い品格などが我々を締めつけている。本当に深刻な危機は、こうした問題を真摯に悩んで解決方法を探そうとする努力が見えない点だ。

少なくとも短期的には大きく上向くこともなくそれでも一日で滅びることもない経済に寄り掛かりながら、特別な考えもなく一日一日を延命している。政治的、社会的に毎日漂流を繰り返しながら、目標は喪失し、深刻なアイデンティティー危機で不安感は高まっているにもかかわらずだ。


なぜそうなのか。なぜダイナミックコリアがあきらめの奈落に沈んで抜けられないのだろうか。韓国社会の躍動性を摩耗させた罠は非常に多いが、今日は民主主義の罠、財閥の罠について話してみよう。この2つは過去に韓国社会が成し遂げた「誇らしい」成果だったが、いつからか我々を締めつける罠になったのだから、逆説的といわざるをえない。しかもこの罠を抜け出すためには、美しく包装された過去の記憶の多くを忘れて未知の新しい道を探す努力が必要だ。しかしそれは言葉でいうように簡単なことではない。

韓国社会が政治民主化を成し遂げてからほぼ30年が経過した。民主主義に対する熱望と期待が大きかった1980年代末が過ぎ、韓国社会は平和的な政権交代を成し遂げ、国内外的に前向きな評価を受けてきた。しかし民主主義の基本形式を備えたこと以外に、我々の政治は韓国社会が進むべき方向と目標、これに対する国民の合意、さまざまな葛藤構造の解決など、どれ一つとしてきちんとできなかった。それで毎回失望するが、それでも次の政権はこうした問題をすべて解決してくれると期待し、また失望する。うんざりする悪循環を抜け出せずにいる。もう、政界に対する漠然とした期待や時間が過ぎれば良くなるという考えは捨てる時になった。政治問題を政治家だけに任せることができない段階に達した。民主主義を数年に一回ずつ行う選挙問題だけに限定する「民主主義の罠」から抜け出さなければいけないということだ。

経済分野の核心的な課題は「財閥の罠」から抜け出すことだ。我々の社会には財閥はもうどうすることもできないというあきらめが蔓延している。国家経済の財閥依存度があまりにも高いからだという。このため、一方では財閥の成長過程で国が与えた各種恩恵と特権に嫌悪しながらも、別の一方では財閥の経済的成果が中小企業と庶民にも落ちてくるのを待つ両面性を見せてきた。短期的な生存のために財閥に依存しながらも、長期的な発展のためには財閥以外の新しい成長動力を探さなければならないという、ためらいの態度で時間を過ごしてきたのだ。しかしこれからは財閥も中国など海外からの競争圧力により絶えず生存を脅かされる可能性がある。また、革新と創造のエネルギーが財閥のブラックホールに吸い込まれていき、新しい世代はもちろん上の世代の一人立ちも難しくし、国際競争力も弱化させている。我々にとって財閥とは何か、考え直す必要がある。

民主主義の罠と財閥の罠を克服するのは非常に難しい課題になるしかない。新たな覚悟が必要だ。何よりも、政治の問題は政治家に任せ、経済問題は財閥に依存するようなあきらめの意識構造を捨てなければいけない。未来に対する期待や判断を停止させたまま一日一日を意識なく過ごしたり、時間が過ぎれば良くなるという根拠のない楽観主義や変化に対する意欲なく無気力に諦める、このすべてのものから抜け出さなければいけない。

そのためには国民的な協議体を構成しなければいけないと考える。傍観するのではなく良心のある人たちが集まり、我々の未来について虚心坦壊な対話の場を用意しよう。そしてすべての国民が我々の社会全体を感じ、考えられるように道を開こう。

鄭雲燦(チョン・ウンチャン)同伴成長研究所理事長/元首相



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