韓国と朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）両国市民の野球に対する思いには、かなりの差がある。

プレーオフが行われている韓国のプロ野球が爆発的な人気を呼んでいる一方、北朝鮮で野球は特別な関心を集めていない。


ある北朝鮮脱出者は「野球が行われているのは知っているが、試合を見たことはない」と話す。それだけ大衆化していないわけだ。


こうした現状の最大の原因として、北朝鮮脱出者は施設の不備をあげている。北朝鮮の代表的な野球場は、平壌（ピョンヤン）野球場と南浦（ナムポ）野球場ぐらい。１９９０年代初めに建設された平壌野球場は、３５００席規模で、人工芝を敷いており、平壌の総合体育村の青春街に位置している。９８００平方メートル規模の南浦野球場は、１９７０年代初めに建設された南浦体育村内にある。

このように一部の都市にしか野球場がないため、野球の試合が行われるのは、いくつかの大都市に限られている。

北朝鮮で野球が「全国人民体育大会」の正式種目として採択されたのは８８年１０月。以後、万景台（マンギョンデ）賞体育競技大会、共和国選手権大会など、北朝鮮の権威ある総合競技大会で野球の試合が行われた。

しかし、ほかの人気ある球技種目に比べ、参加チームはそれほど多くなかった。８８年、全国人民体育大会に参加した野球チームは、在日本朝鮮人総連合会（朝鮮総連）チームを含め、５チームにすぎなかった。

にもかかわれず北朝鮮は、９０年８月平壌で「全国野球競技大会」を開催した。北朝鮮は同年６月と８月、アジア野球連盟と国際野球連盟に加入した。北朝鮮は、９１年新潟で開かれた第１回５カ国国際大会に参加、１勝３敗という低調な成績を記録したが、「適応力があり、パワーもある」という評価を受けた。