ＭＥＲＳは恐怖だ。恐怖は感染する。恐れの拡散は迅速だ。その速度はウイルスの伝播より速い。恐怖は隔離されない。隣に移そうとする。自分一人の不安から抜け出すためだ。恐れは共有される。集団に広まる。

ＭＥＲＳは過剰恐怖だ。完治した患者が登場した。その人たちの証言は誇張された不安感を暴露する。「インフルエンザより弱い症状だった」。医師の彼は「漠然とした恐れは持たないでほしい」と語った。７０代後半の女性も退院した。「怖がる必要はない」と言った。こうした経験談は破壊力を持つ。ＭＥＲＳ恐怖に怯える悲観論者を落ち着かせる。

ＭＥＲＳの風景は奇異だ。２次震源地のサムスンソウル病院の前はタクシーが少ない。葬儀場は埋まっていない。会合や行事が中止になった。野球場の観客も少ない。９日、科学ジャーナリスト世界会議（ＷＣＳＪ）が江南（カンナム）ＣＯＥＸで開かれた。大会の進行は順調だ。外国記者（約４００人）はほとんど韓国に来た。外国記者はソウルのＭＥＲＳ風景を一蹴する。


恐怖の拡散は政府の力不足のためだ。新種の疾患は恐怖を伴う。その対応武器は透明性だ。事態の初期、政府はＭＥＲＳの情報を握っていた。官僚の惰性は独占と閉鎖だ。国民はＭＥＲＳに鋭敏だった。保健当局者は事実の供給を徹底しなかった。大衆の情報への渇望は消えない。怪談があふれた。あやしい評論家が横行した。不安は恐怖に再構成された。ＭＥＲＳと関係がある病院リストが一歩遅れて発表された。政府は情報流通市場で敗北した。

幼稚園と小学校は休園・休校が続く。その最初はソウル大峙洞（テチドン）の母親たちの作品だ。それは官僚的情報統制に対する抵抗だ。大峙洞の母親たちは情報戦に慣れている。子供の入試問題で鍛えられた。母親たちのカカオトークは熱くなった。その中に事実と噂、真実と怪談が混在した。不安心理は喚きになった。圧力として作動した。学校は教室を閉鎖した。

感染専門家らの見方はほぼ同じだ。授業中断を過敏な対処と規定する。ＭＥＲＳの特性は病院内部の感染だ。病院の外の町内で広がる可能性は低い。しかし政府の対応は信頼を失った。大峙洞は与党が強い地域だ。カカオトークの決起は政権不信だ。朴槿恵（パク・クネ）政権には痛恨の現象だ。

公職者は破格を嫌う。先制的措置は官僚の好みと合わない。セウォル号の教訓は適用されない。古いマニュアルに固執する。公職者は信じるものがあってこそ変わる。政策の失敗に責任を取る上部の機構がなければならない。それが攻勢的な瞬発力を発揮する条件だ。青瓦台（チョンワデ、大統領府）参謀は官僚の体質を知っている。しかし政府全体レベルの対策機構を作るのを怠けた。



【コラム】権力の恐怖制圧実力…韓国ＭＥＲＳ事態（２）