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「頼りにならない韓国政府…最後の砦は市民意識」

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
1994年9月21日、インド北部の都市スーラト。肺炎症状で市立病院に入院した7人のうち2人が翌日亡くなった。ある町内だけで50人が入院したといううわさがすぐに出回った。数時間後には市民の買い占めで薬局の抗生剤が品切れになった。飲料水の水源地が汚染されたという話まで出てくると1週間で市民30万人が街を脱出した。

現地に急派された世界保健機関(WHO))調査チームは事件発生から1カ月後に「伝染病拡散リスク終了」を宣言した。ネズミを媒介にしたペスト菌が原因だった。WHOは人間の接触による感染跡はないと発表した。関連死亡者は計52人と集計された。都市のマヒを招くほどではなかった。しかし周辺諸国には大規模伝染病事態と映ってインドの農産物輸出の道がしばらく行き詰まった。キム・チュンベク慶煕(キョンヒ)大学社会学科教授はこの事件について「政府、医療当局に対する不信と市民意識の失踪が引き起こした大混乱だった」と話した。

中東呼吸器症候群(MERS)拡散の主な原因は政府の初期対応不足だ。その上「私ぐらいは」という考えで自身の都合だけを考える利己的行動、不安感を助長する社会的病理現象が増している。感染疑いのある状態で中国への出張に行った男性、自家隔離中にゴルフ旅行に行った女性も出てきた。ある大型病院の医師は「MERS患者と接触した事実を隠し後になって確認される人々が出ている。診療で差別を受けるかと思ってそうするようだが、これは病院マヒにつながりかねない」と指摘した。


各地域の保健所は自家隔離者の管理に困惑している。公衆保健医のK氏は「電話するなと大声を張り上げる人も多い。電話をしっかり受けてくれるだけでも有難い状況」と話した。

キム・ムンジョ高麗(コリョ)大学社会学科名誉教授は「自身が病気なのは個人の問題だと考える傾向があるが、病気は公共の事にも属するという認識が必要だ」と話した。

「各自図生(それぞれが生きていく方法を講じる)」というような姿勢があらわれているのは政府と医療当局に対する不信の影響が大きい。だが1人で問題を解決することはできない。チョン・ビョンニュル延世(ヨンセ)大学保健大学院教授は「政府が頼りにならなくても国民は自らのために互いに助け合って協力しなければならない。結局、最後の砦は市民意識」と話した。

キム・チュンベク教授は「政府と医療機関の信頼回復が重要だ。そして政府と市民が共に難局を解決しなければならない」と話した。パク・ジェチャン韓国外国語大学LD学部客員教授は「国家と市民は緊張関係になる場合が多いが、今のような状況では国家に協力するのが成熟した市民の姿勢」と語った。

模範的な市民もいる。会社の同僚が確診判定を受けて自家隔離中のA氏(39、女)もその1人だ。疑いのある症状は出ていないが「誰にも被害を与えたくない」という理由で家でもマスクを使い、いつも体温を測っている。担当保健医は「毎回繰り返される質問に一度も不機嫌にならず応じている」と話した。

高熱・せき症状を見せたら外出を自制してマスクを使うのが市民エチケットだ。他人のためであることは、すなわち自分のためでもある。イ・グァン東国(トングク)大学予防医学科教授は「隔離対象者は共同体の安全のために不便を甘受しなければならない」と話した。



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